4つの視点を大切に
校内の健康教育をより一層充実させるためにはどうすればよいか。拙い校長経験から「管理職の理解」、「自己研鑽と変化への対応」、「教育活動とのリンク」、「組織的運営と情報発信」の4つの視点が大切だと感じている。
1つ目の管理職の理解や支援については、前号「管理職と健康教育(上)」で詳しく述べた。養護教諭の職務の特質を校長が十分理解しその取り組みを評価することで、担当者のモチベーションが高まり、機能する保健室につながる。
2つ目は、養護教諭のたゆみない自己研鑽だ。職務の特質から専門的な知識・理解の習得は当然として、健康教育全般に関する実践能力やカウンセリングマインドの向上が求められる。保健室経営を進めるに当たってはPDCAサイクルを導入するなど、時代の変化に応じた組織的運営も必要である。
特筆すべきは保健室での対応メリットとして、子どもたちの経年的な発達段階が把握でき、身体症状として現れた心の問題が発見しやすい立場でもあることだ。そのことからも、学年や担任との連携の中で児童・生徒の変化を素早く感じ取り対応することが重要となる。とりわけ、夏休み以後の変化については注視が望まれる。
保健委員会の活動を 日常の教育にリンク
3つ目の教育活動への反映は、特に重視したい。学校には児童会や生徒会があり、担当教諭の指導の下、自主性や主体性の伸長を目的として自治活動を展開している。その中の保健委員会の取り組みが、全校児童生徒を対象とした教育活動となる。
保健委員会は、日々の保健活動に加え、直面する課題や折々の健康問題に対応し、その解決や予防について子ども目線も織り込みながらユニークな活動を行っているケースが多い。そして、その取り組み状況を、保健委員会だよりや壁新聞、保健室前の掲示板などでアピールし、全校集会などで活動報告等を行っている例が多い。
これまで見聞した活動は多彩で、日常的なテーマから、全校児童生徒を対象に、保護者啓発も含めた教育活動を行っていた。健康教育を推進する上で日常の教育活動とリンクさせることは非常に大切な視点で、筆者が提唱する「積極的な生徒指導」の典型例といえる。
主体性を応援しつつ 外部などの評価も
これらの教育実践について管理職や養護教諭は、子どもたちの主体的な取り組みを応援するとともに、校内の健康教育の方向性を管理する分掌会議や学校保健安全委員会等で話題にするなどして、教職員や外部委員の評価も求めたい。
最後に、組織的運営と情報発信の重要性であるが、養護教諭が一人で苦悩することなく、校内組織を活用しカンファレンスの質を高めることが、機能する保健室と実効性のある健康教育の第一歩である。同時に、保健室便りの発行や全校集会での効果的なプレゼンなど、教職員や生徒・保護者への情報発信の工夫と努力が重要である。
前田 勉
前:大阪府高槻市校長会会長
現:大阪青凌中学校・高等学校入試広報部
【2013年9月16日号】
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