図書資料を調べたり読んだりすることは、自分の知りたいことを発見するだけでなく、さらに知識を深めたり広げたりすることに結びつく。学校図書館を活用することで、子供たちの情報活用能力を育み、教科での学びを深めている都内の小学校と中学校の実践を取材した。
世田谷区立桜小学校(西田香校長)は児童数704人。2人の司書教諭は各担任と学校司書との連絡・調整などを行う。学校図書館司書は3人(うち他校兼務が1人)で、常時1人は学校図書館内に在室する。
毎年4月に、学校図書館のオリエンテーションを実施。各学年の発達段階に応じた内容になっており、5、6年生はNDCも理解できるようになっている。今回紹介する実践も含め、普段から学校図書館を活用した実践を数多く積み重ねていることが、児童の情報活用能力に結びついている。
図書資料から、適切な情報を自分で見つけ出す。その力をつけるために楽しみながら取り組めるのが、同校の「図書クイズ」と「虫クイズ」だ。
小学校3年生「総合的な学習の時間」(虫はかせになろう)、理科「チョウをそだてよう」、国語「図かんで調べよう」を関連させた実践で、国語2時間で図書クイズに、総合3時間で虫クイズに取り組む。9~10月に、国語の「図かんで調べよう」、理科の「昆虫の体のつくり」も相互に進めた。
きっかけは、同校の近隣にある東京農業大学の研究室を児童が見学したこと。「虫への疑問について自分の力で解決する手立てを、子供たちに持って欲しいと考えた」と大西亜里紗司書教諭は話す。「これまでの調べ学習では、本を見てはいるが自分の知りたい情報を抜き出せないことが多かった。その一歩先に進んで知りたい情報を抜き出し、さらに情報発信する必要性を感じた」。
「図書クイズ」で情報を抜き出す経験をし、次に児童が自分たちで「虫クイズ」を作成する。最後にみんなで「虫クイズ大会」を行う。本で調べるだけでなく、自らの課題から発見したことを、他の人に発信するのだ。
まずは「図書クイズ」を準備する。1冊の本から答えを見つけられるクイズを作成(※記事下参照)。現在、全部で53問用意されている。1学級40人弱なので、全員が一斉に1冊ずつ手に取ることができ、早く終わった児童は次の問題に取り組める数だ。
「クイズは世田谷区の学校図書館部の小学校の先生方に協力して頂き、分担して作成することができた」(大西教諭)。多様な本に当たれるよう、また発達段階に合わせられるよう、色々な種類の図書資料から出題する。授業での既習事項に合わせた資料や、目次などから答えを探せる図鑑、じっくり読みこまないとわからない本もある。
クイズをレベル別に色分けした紙に印刷し、ラミネート加工して「しおり」にして本に挟み、棚の上に並べておく。
授業では、児童が興味のあるものを手に取り、自分の席でクイズに取り組む。答えの見つけ方がわからない時は、教員や学校図書館司書に相談しても良い。見つけ方のこつは、索引や目次を使う、本をよく読むことだ。答えはワークシートに記入し、教員と答え合わせをする。1時間に平均3冊、多い児童は5冊程度取り組む。授業の最後に、児童が答えの見つけ方のこつを発表する。
図書クイズで調べ方を身につけた児童たち。次の段階として「虫クイズ」に取り組む。自分の疑問を図鑑や虫の本で調べ、収集した情報をどのようなクイズにしたら分かりやすいか考え、まとめる。収集した情報を分析・整理する力を育む活動だ。
みんなで楽しむ「虫クイズ大会」では、友達の作ったクイズの答えを、元になった図鑑や本から探して共有する。
同校では、3年生の「図書クイズ」の実践を平成27年から毎年行っており、児童の調べ学習の基礎的な力が定着してきたという。児童は図鑑だけではなく、読みものなど、他の本からも調べられるようになった。
「本の形式によって情報がどのようにまとめられているか、図書クイズで様々な“載せられ方”に触れることができる」と大西教諭。載せられ方を知ることで、図鑑は目次で分からなければ巻末の索引を見る、読み物なら、目次を見てどこを重点的に読めばよいのかも判断できる。「調べたいことを発見した喜びがあるような取組にしたい」。
「図書クイズ」は、図書資料の更新に合わせて、常に刷新する必要がある。そうしたきめ細かな業務に学校図書館司書が対応し、毎年の授業実践がスムーズに行われている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年4月22日号掲載