学校・保護者間の連絡手段のデジタル化が急速に進んでいる。文部科学省は教員の働き方改革の一環で2020年10月、全国の教育委員会等学校設置者に向けて学校・保護者等間の連絡手段のデジタル化を推奨する通知を発出した。2021年12月に公表した「教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査」結果では、学校と保護者等間における連絡手段のデジタル化を図っている教育委員会は都道府県で87・2%、政令市等で80・0%であった。連絡手段のデジタル化についてはいくつかの方法があるが、万が一のために複数の手段を確保しておくことも重要だ。理想科学工業では、保護者連絡ツール「スクリレ」を提供。サービス開始後約1年で700校以上、10万人以上の保護者が利用しているという。現在利用中である荒川区立第一日暮里小学校とつくば市立学園の森義務教育学校に導入の理由と活用の様子を聞いた(取材は2021年度。肩書は当時)。
写真右から図書館司書酒井さん、原広子教頭とスクリレ文庫
つくば市立学園の森義務教育学校(石黒正美校長・茨城県)の学園生は2000人を超えており、現在も増え続けている。同校では、実証を経て2021年10月から「スクリレ」を導入している。スクリレによる学校配布物のデジタル化により、印刷物作成や配布の手間、紙の消費量を大幅に削減することができたという。さらに12月にはスクリレポイントを学校備品に交換した。
原広子教頭は「学校連絡が効率化した点に加え、特に『スクリレポイント』は、保護者に好評です。広告を閲覧することで蓄積したポイントを使って児童図書に交換しており、実証実験時からの蓄積により現在は73冊まで増え『スクリレ文庫』として学校図書館で運用しています」と話す。
当初、広告閲覧による広告費の一部が学校に還元される仕組みに躊躇する保護者もいたという。しかし短期間の運用によるポイントが、何十冊もの児童図書になり「スクリレ文庫」ができたことで、保護者もそのメリットを実感。理解が急速に広がった。
スクリレポイントは、学校予算やPTA会費とは別財源として物品の購入に充てることができる。広告は毎月更新され、1広告につき月1回の閲覧でスクリレポイントが蓄積される。「スクリレポイントにより学校環境の向上に貢献できる、という理解が進み、保護者からはさらに積極的な協力を得ています。交換品を選定する際は、児童生徒が使えるもの、より身近なものを選定基準としており、交換した物品については学校便りや学校ホームページを通して報告しています」
これまでは公費支出で割合が低くなりがちな絵本を中心として交換していたが、次回のポイント交換は、保護者代表であるPTA役員や学園生に選定してもらうことを考えている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年5月2日号掲載
