7月5日、東京都内で教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を開催。守谷市教育委員会、杉並区教育委員会、鴻巣市教育委員がGIGA端末配備後の活用推進や研修、体制整備のポイントを報告。1人1台端末を8年間活用している川崎市立川崎高等学校附属中学校が成果を報告した。
2014年4月の開校から8年目を迎えた川崎市立川崎高等学校附属中学校。母体校の教育理念を継承し、当初より探究活動や総合的な学習の時間(LEAD学習)を柱にグローバル人材育成に取り組んでいる。中学校技術・家庭科を担当している藤澤泰行教諭は同校の8年間にわたる1人1台端末活用の経緯と成果を報告した。
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開校当初より生徒はBYODにより端末(WindowsOS)を所持して日常的に活用している。川崎市ではGIGA端末としてChromebookを導入したが、本校ではこれまでの蓄積もあり、WindowsPCの活用を継続する。
端末選定の基準は「7時間授業に耐えるバッテリー」「キーボード付属」「堅牢」「3年間同一条件での保守対応」だ。
PC代と保守料金は保護者負担で月4000円前後。年度により若干異なる。今年度より、技術・家庭科で、学習者用デジタル教科書を保護者負担で導入した。
生徒は端末を毎日持ち帰り、自宅で充電。故障時や充電忘れ等には予備の端末で対応する。予備端末は毎年、10台程度購入している。夏休み前には充電し忘れる生徒もいるが、それ以降忘れる生徒はほぼいなくなる。
教室には電子黒板機能付きプロジェクターと可動式スクリーンを配備。Wi―Fiは普通教室、体育館や講堂と校内中に配備。問題なく接続できている。
「校内では学習用端末として活用する」、充電など「自宅でできることは自宅で行う」ことを徹底。授業中に使用するか否かは教員が示すこととしている。また、授業支援ツールにより、自宅で何をしているのかも確認できる。
タイピング練習については、1年生は週2回、朝の10分間で取り組む。また、担当している技術・家庭科の技術、家庭両分野で、授業開始前から開始後の5分間で取り組んでいる。
意欲向上と効果測定を兼ねて「毎日パソコン入力コンクール」に年3回参加。本校の1年生は平均61・7文字、3年生は85・5文字入力できる(2019年度)。校内トップは171・6文字で、この生徒は1年次、47・4文字であった。
総合的な学習の時間「LEADタイム」では、年2回、端末を使ったプレゼンテーション制作・発表の機会がある。
1年次はテキスト中心の発表資料が次第に整理され、画像を効果的に配置するなど、年々、洗練されていく。各教科でも端末を使った発表機会が多く、その成果がLEADタイムの成果につながっているようだ。
個別学習にも端末を活用。全学年で朝のe―Learningに取り組んでいる。
各教科では、例えば美術では点描画を拡大して鑑賞する、数学ではシミュレーションツールで関数を学ぶ、英語では1分間スピーチの練習、体育では創作ダンスの振り返りや評価、音楽でリコーダー演奏の振り返りや評価、道徳で意見交換、プログラミングでは実験データの共有をするなど、様々だ。
家庭科では、トートバッグの作り方のビデオクリップを作成。視聴を宿題とし、説明を最小限にしたところ、授業時間内に完成できる生徒の割合が増え、課題に取り組む意欲の向上が見られた。
生徒総会も、議案書を端末で閲覧。ペーパーレスで行った。3密回避もあり、2・3年生は講堂で、1年生は各教室からZoomで参加した。
教員は、授業用と校務用2台の端末を使用。GoogleWorkspaceを使った校務も求められている。生徒のレポートを写真撮影することで、作品返却後も評価に活用できるようになった。
様々な事例を通して「1人1台端末の活用効果とは、時間の自由度が上がること」であると感じている。
一斉指導による全体説明の時間や評価にかかる時間が短くなれば、生徒の活動や交流する時間が増える。大変重要なことである。
主体的な活動も見られるようになってきているが、生徒の活用能力の充実が今後の課題である。【講師】川崎市立川崎高等学校附属中学校教諭・藤澤泰行氏
【第78回教育委員会対象セミナー・東京:2021年7月5日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年8月2日号掲載