7月5日、東京都内で教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を開催。守谷市教育委員会、杉並区教育委員会、鴻巣市教育委員がGIGA端末配備後の活用推進や研修、体制整備のポイントを報告。1人1台端末を8年間活用している川崎市立川崎高等学校附属中学校が成果を報告した。
守谷市教育委員会(小学校9校・中学校4校)は、全教室に70インチの電子黒板を整備。高速通信ネットワークとして校内LAN環境も再構築し、体育館にも無線環境を整備。オンライン授業のため児童生徒全員にアカウントを配備し、オンラインクラスで課題や宿題の提示、保護者への連絡を行っている。嶋田知成指導主事は守谷型GIGAスクール構想について説明した。
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大きな変革を推進するためには、設置者が各学校に対して明確な指針を出す必要がある。守谷市では、「子育て王国もりや」実現に向けた学校教育改革プランの中に「守谷型GIGAスクール構想」を位置づけ、ICT活用と授業改善による学力向上、学校と家庭のデジタル連携、児童生徒と向き合う時間を確保するための支援体制の構築を盛り込み、周知に努めている。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、デジタル化を一気に進めた。臨時休校時には、学校の在り方が問われた。本市でも昨年3~5月のオンライン授業はできなかった。そこでクラウドを活用できる仕組みを構築して休校に備えることを目的に1年間取り組んだ。
6月にはGoogleアカウントを全児童生徒約6500人に配備。Googleサイトで専用サイトを構築してGoogleWorkspace(GoogleClassroom・当時)の説明動画を掲載し、9月末には全員がログイン。休校を想定し、各中学校でオンライン登校も実施。Zoomのブレイクアウトセッションで少人数グループの話し合い活動や、GoogleClassroomで課題を配布する、Googleフォームで学習状況を把握してから授業の課題つくりに役立てる等の活動を行った。
守谷型オンデマンドライブ授業は12月に実施。画面を切り替えながらすべての教室で授業を共有。YouTubeLiveで限定配信を行うとともに、アーカイブ化。事後に視聴できるようにした。
教育DXには、保護者の理解や協力が欠かせない。
そこで学校と家庭がつながることを重視。GIGA端末としてiPadを選択したのも、保護者のスマートフォンはiPhoneが多く、かつGメールユーザが多いためだ。それと同様の環境を学校でも構築すべきであると考え、iPadとGoogleWorkspaceを導入した。
保護者限定のポータルサイトとWeb掲示板を立ち上げ、欠席連絡報告シートや欠席連絡フォームを用意。保護者も教員も朝の時間に縛られることなく連絡ができるようにした。児童生徒の体温カードもGoogleフォームでデジタル化。集約作業が不要になった。このほか各種申請書類や配付文書もポータルサイト上で行い、印刷業務・配布がなくなり、教員の働き方改革にもつながった。
市内各校ではWeb授業参観も日時限定で行った。
Googleグループでは、1万人以上の保護者に一斉にメール配信を行うことができる。
これまでは、台風等による休校判断は「朝6時に教育委員会が判断」「学校長に電話連絡・教頭にメール配信依頼」という流れで、メールを送り終わると7時を過ぎることもあり、判断が遅いという苦情が届いていた。Googleグループのメール配信では、教育委員会が判断した時点で学校と家庭に一斉に配信することができる。
情報伝達を迅速に行うことで、子供の安心や安全を、より確実に守ることができると考えて構築。
これらの取組で、保護者からの学校への信用度も増した。
教育委員会もDX化が求められている。学校への各種調査はGoogleフォーム上で行い、集計作業を短縮。調査分析に時間を割くことができるようになった。
例えば本市の黒内小学校は児童生徒数の多い大規模校でありながら学校施設が小さく、900人以上の児童が全校集会を行うこと、職員室も職員全員が集まることが難しい。施設が小さいため、3密対策も簡単ではなく、分散登校も難しい。朝の遅刻欠席等の連絡は、多いときには30件以上届く。早朝からの教育相談も多く、配布物の量も莫大だ。
これら諸問題の解決にGIGAスクール構想環境が、大きく貢献した。
GoogleWorkspaceはアプリが豊富でカスタマイズしやすく、強い味方である。これを学校でうまく活用するためのポイントの1つが学校長だ。教員が動くためには、学校長のビジョンが必要になる。また、主幹教諭と教務主任にもICTスキルが求められる。「わからない」「できない」ではなく、できることから始め、できることを増やしていくことが求められる。【講師】守谷市教育委員会教育指導課指導主事・嶋田知成氏
【第78回教育委員会対象セミナー・東京:2021年7月5日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年8月2日号掲載