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教育ICT

教育ビックデータ(学習履歴)活用の準備を進める<文部科学省 初等中等教育局 初頭中等教育企画課 学びの先端技術活用推進室室長・桐生崇氏>

2021年2月1日
第73回教育委員会対象セミナー・東京

 

文部科学省 初等中等教育局 初頭中等教育企画課 学びの先端技術活用推進室室長・桐生崇氏

文部科学省 初等中等教育局 初頭中等教育企画課 学びの先端技術活用推進室室長・桐生崇氏

GIGAスクール構想により、学校のICT化が急激に進んだことで、今後は教育ビックデータを活用することで、個別に最適で効果的な学びや支援が可能となる。今後、教育ビッグデータやCBTシステムを、どのように活用していくことになるのか。文部科学省・学びの先端技術活用推進室長の桐生氏が語った。

――――――◇――――――

児童生徒の学習履歴などを蓄積した、教育ビッグデータを利活用するには「データの標準化」を行う必要がある。データの様式が学校や自治体により異なると、データが統一されないので使い道が限定される。データを相互に活用するため、データ内の言葉や単位などを揃えていく。

また「スタディログ(学習履歴)利活用環境の整備」も求められる。個人ごとの学習履歴のデータを継続的に蓄積していくことで、教育ビッグデータとして活用される。

さらに「データによる学習分析(ラーニングアナリティクス)」を行っていく。ラーニングアナリティクスは学習データや学習記録をもとに、どのような学習が効果的であるかなど要因分析を行うこと。こうして標準化・蓄積・学習分析を行うことで、教育ビッグデータを活用した個別最適な学びが実現する。

学校ICT環境の整備を進めないと、先端技術や教育ビッグデータが活用できないと「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」で文部科学省が投げかけたのが20196月のこと。その後、201912月にGIGAスクール構想の予算が閣議決定され動き出した。さらに数年かけて進めるという当初のプランがコロナ禍の影響により1年で完結するなど、学校のICT化が急激に進んでいる。それに合わせて教育ビッグデータの活用も、かなり早い対応が求められる。

GIGAスクール構想は11台端末や高速ネットワークの実現などハード面が取り上げられることが多いが、ハード、ソフト、人材の一体的な環境整備が大事。ソフト面の整備でもデータ標準化やオンライン学習システム(CBTシステム)の活用などを文部科学省は取り組んでいく。

日々の学習などにより生じる教育データは、「個人の活用により学習等のサポート」、「学校教員等の指導改善」、「新たな知見の創出・政策への反映」の3つの目的に沿って利活用が図られる。

「個人の活用による学習等のサポート」では、蓄積された個人ごとの学習データを、児童生徒が自らの学習をふり返る時などに活用する。従来は紙に残していた学習記録が音声データや映像として簡単に残せるようになった。

「学校教員等の指導改善」では、蓄積された学習等のデータを用いて、個々の児童生徒の学習状況などを把握。これまでの記録などを活用することで、個別最適な学習指導や生徒指導を実現する。

「新たな知見の創出・政策への反映」は、大学や研究機関が教育データを活用するもの。教授法・学習法などの新たな知見の創出や政策への反映を行う。例えば、蓄積されたデータから「Aという分野でつまずく子供は、Bという分野でもつまずきやすい」などの傾向も見えてくる。

初等中等教育における教育データの標準化は、現時点では自治体や学校が教育データの調査研究を行っている段階で、個々のデータの統一は図られていない。今後、教育ビッグデータとして活用するためにも、データの収集や活用に関して一定のルールが求められる。その場合、すべての教育データを標準化するわけではなく、全国の学校、児童生徒の属性、学習内容など共通化できるものが対象となる。

標準化の仕組みとして教育データを、①主体情報、②内容情報、③活動情報の3区分とすることが発表された。主体情報は、児童生徒、教職員、学校、自治体など、情報の発信が「誰か」により定義する。内容情報は学習内容など、「何を」行ったかという点で定義。日本では学習指導要領をもとに学校教育が展開されているため、それに紐づけた形で、データを蓄積するのがベストとなる。活動情報は生活に関する行動の記録や学習に関する行動の記録など具体的に何を行ったのかで定義する。

文部科学省は2020年夏から有識者会議を立ち上げ、議論を進め、20201016日に枠組みとなる「教育データ標準」(第1版)を発表。そこでは「学習指導要領コード」が公表された。今後、学習指導要領の各項目について一定のルールに基づいてコードを振り当てていく。

現状は教科書や教材によりコードが異なるため、体系的にデータ化ができない状況にある。データ化向けては、教材・サービスに関わらず共通のコードを使用することが必要。そこで、学習指導要領の内容・単元等に共通のコードを設定する。

例えば、小学校6年社会で織田信長について学習した場合、デジタル教科書の織田信長の該当ページを開くと、学習指導要領コードにより、デジタル教材やデジタル問題集から関連する教材・問題が自動的に表示される。博物館のデジタルアーカイブからも関連する資料が表示される。

また、文部科学省では「オンライン学習システム(CBTシステム)の全国展開、先端技術・教育データの利活用推進」に2021年度予算として36億円を要望した。

CBTシステムは、11台端末を活用したデジタルならではの学びを実現。従来のアナログではデータとして蓄積されなかったのが、デジタルデータにより、個々の解答にどう答えたか、どこで迷ったかなど、すべて記録として残される。そうした記録から子供の特性を見出していく。2020年度はプロトタイプの開発に向けて実証校200校を公募。2021年度は全国の希望する小中高等学校で活用できるよう、機能改善やサーバー強化を図っていく。【講師】文部科学省 初等中等教育局 初頭中等教育企画課 学びの先端技術活用推進室室長・桐生崇氏

【第73回教育委員会対象セミナー・東京:2020年12月2日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年2月1日号掲載

  1. 文部科学省 初等中等教育局 初頭中等教育企画課 学びの先端技術活用推進室室長・桐生崇氏
  2. 戸田市教育委員会教育総務課主幹・榎本好伸氏
  3. 渋谷区立笹塚中学校校長・駒崎彰一氏
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