全国の小中学校では1人1台のPC配備が進んでおり、今後一層、情報活用能力の育成が求められていく。そんな小中学生の学びを高等学校はどう引き継いでいくのか――教育家庭新聞では12月19日と1月16日、高等学校IT活用セミナーをオンラインで開催した。
西武台新座中学校・高等学校(埼玉県新座市)の中学校は開校当初から全員がiPadを活用。「できることを増やす」方針で9年間継続して授業・校務活用を進めた。対して40年間の歴史がある高等学校は4年前の1年生からChromebookの活用を開始。生徒数も導入年度も異なり、機種も異なる中学校と高等学校の活用について河野教諭が報告した。
第一段階は、できることを1つずつ増やすスタンスで、担任と共に総合的な学習の時間でアクティブラーニング型のチャレンジ学習に3人1組を基本に取り組んだ。3年間の取組で生徒、教員共にICTリテラシーが向上した。第二段階は教科での授業活用だ。生徒による教え合いや自ら生徒が授業を行う活動を中心に進めた。ディベート型の授業では、スライド資料3枚まで使用可とした。生徒は自発的にオンライン上で話し合いながら様々な角度で資料を分析してプレゼンを制作しており、多様なアウトプットが見られた。
授業前アンケートも行った。授業に関する単純な質問で、短時間で答えられるものだ。生徒には予想以上に好評で、以後、継続している。
2020年度の研修テーマは「ふり返り」。生徒は、毎時間のふり返りをオンラインで記入。毎日繰り返すことで率直な意見や質問が書き込まれるようになった。第二段階の取組により考える機会や発表する機会、活躍する場面が増え、生徒の満足度や授業に対する肯定的な意識が向上し、教員同士の話し合いも活性化した。Classiを導入したのもこの時期で、保護者との連絡ツールとして活用した。
当初は充電保管庫に鍵をかけて保管。第二段階の後半からは、自己責任で常に生徒の手元で活用できるようにした。不適切な活用や振舞いは、指導のチャンスと考えた。
蓄積したポートフォリオを活用する機会である「三者面談自分プレゼン」は大変好評で、本校の特徴的な活動として位置づいている。自分がどう成長し、今度何を目標とするのかについてこれまでのふり返りや作品等の蓄積をもとに保護者と教員にプレゼンテーションする。コミュニケーションの機会になると共に成長を自ら実感できる場になっている。
反対意見もあったが、中学校での活用を高等学校でも継続するため、4年前から1年生にPC(Chromebook)の購入を必須とし、現在全学年約1300台が稼働している。中学校と異なりスピード感が求められ、GSuiteのほか、Classiやすららなど各種ツールも同時に導入。朝活動で英検対策学習を行う、各種連絡に使うなどに取り組んだ。中学校で経験を積んだ教員が高等学校で実践を展開し、全教員対象の研修も行っており、皆が使うコンテンツを意識して増やすことで年配の教員の活用も進んだ。中学校から進学した生徒は生き生きとアウトプットに取り組んでおり、中学校3年間の成果を感じる。今後は学年を超えて学ぶクエスト型のオンライン教室の開設を検討中。中高大接続にも広げる。
【講師】西武台新座中学校教諭・河野芳人氏
【高等学校IT活用セミナー:2021年1月16日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年2月1日号掲載