第71回教育委員会対象セミナーを10月6日札幌市内で、72回教育委員会対象セミナーを10月9日仙台市内で開催し、札幌会場は約200名、仙台会場は約100名の教員と教育委員会担当者が参集した。
北海道教育委員会では「北海道教育委員会ICT活用授業指針~「学びの深化」「学びの転換」へのチャレンジ~」(以下、ICT活用指針)を2020年8月に策定・公表した。GIGAスクール構想担当の泉氏は「1人1台PCにより目指すことやその趣旨・目的を共有した上で各校で取り組むべきことを整理する必要がある」と話した。
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Society5・0に向けて学校のアップグレードが求められている。近未来の学習のイメージを共有しながら、対面のみの授業を超える学習効果を意識したICT活用を目指し、ICT活用指針を策定した。
現在指導主事を担っている教員の多くは一斉指導が得意で、ICTを得意としている教員は多くはない。GIGAスクール構想による整備が前倒しになり、学びの方法の見直しにすぐに対応しなければならなくなった。そこで高等学校の情報担当指導主事と共に急ぎ学んでいるところだ。その中で分かってきたことは、授業作りの上手な教員の助言がICT活用においても大変重要であるということ。ICTに得手不得手があったとしても、若手とベテラン双方の強みを活かして一丸となって推進していかなければならないのがGIGAスクール構想である。
1人1台PC配備の意義は、情報活用能力を最大限に発揮して各教科の学びの目的を達成すること、授業改善に結びつけた主体的対話的で深い学びの実現にある。「誰1人取り残すことなく公正に個別最適化された学び」に向け、先端技術や教育ビッグデータの活用は、大きな可能性を秘めている。
熊本県では、理科の実験や図工を中学校の教員が遠隔で行っていた。統合が難しい小規模校が多い北海道にとって、ICTで時間・距離の制約を取り払うことができることの意義は大きい。
遠隔による教員研修やICTを活用した採点業務の効率化も可能だ。
学習履歴や行動等の継続的な収集と分析により、これまで「経験」に頼っていた知見を明確にできるなど、教育でICTをうまく活用することの意義は大きい。
ICT活用指針では、目指す姿を次の6つに分類した。▽情報や情報手段を主体的に選択し活用できる能力を体系的に育む ▽鉛筆やノートのように目的に合わせて自ら選択して身近なツールとして活用できるようになる ▽主体的・対話的で深い学びの視点による授業改善においてICTも活用できるようにする ▽誰一人取り残されることなく未来の社会で羽ばたく前提となる基礎学力を確実に身に付ける ▽子供の障がいの状態や特性、発達の段階等に応じてICTを適切に活用して困難を改善・克服する ▽適切にICTを活用することで教員の業務負担を軽減して子供に向き合う時間を確保する
学校と家庭での実践イメージも示した。
学校では「主体的・対話的で深い学び」「個別最適化された学び」に向けてデジタル教材による個別学習から始め、情報収集や整理、発表活動、協働的な学びへ進める。
家庭では「児童生徒のニーズに応じた学び」を意識して家庭学習でPCを使う、オンラインで個別面談をする、オンラインで授業配信や双方向コミュニケーションをするなど段階的に取り組んで頂きたい。
道教委ではGoogleアカウントの交付申請を受け付けており、今後、他のクラウドサービスについても、交付に向けて動いている。家庭用WiFiルータやGIGAスクールサポーター、特別支援学校の入出力装置、無線LANについても今年度中に配備する。各学校ではPC配備前に、クラウド上で学習支援ツールが使えるように準備をしてほしい。【講師】北海道教育委員会教育環境支援課情報教育指導係・泉大吾氏
【第71回教育委員会対象セミナー・札幌:2020年10月6日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年11月2日号掲載