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教育ICT

BYOD体制の成功体験を積む<寄稿 和歌山大学教育学部 教職大学院 豊田充崇教授>

2018年9月3日
特集:教員養成とICT活用

小学校プログラミング教育や「主体的・対話的で深い学び」の協働的な実施、ファシリテータとしての役割の重要性が指摘される中、「課題は教員の意識改革」であると多方面から指摘されている。文部科学省は5月、「平成30年度教員の養成・採用・研修の一体的改革推進事業」の公募を開始。昨年度の本事業の成果報告も行った(5面)。教職大学院と教育委員会が連携した研修や、学部生を対象にした新しいプログラミング教育実践のためのメニューなど新しい動きが始まっている。

教材提示の“次のステップ”へ

現在、ほとんどの大学生・院生は、小・中学生の時期に電子黒板・デジタル教科書等を活用した授業を受けてきた経験がある。それらを用いた授業の「学習効果」を実感している一方で、「映像コンテンツを視聴して終わりという授業も多かった」「スライドを延々と見せられた上、それをノートに写させるというのはすぐに飽きる」といった、ICT活用のマイナス面・弊害も自覚している学生も多い。

そこで、和歌山大学教職大学院の全コース共通履修科目「ICT活用と指導技術」においては、どのように児童生徒に提示すれば教科の目標達成に寄与するかという視点を絶えず持たせて演習を行っている。

普通教室を模した「授業シミュレーション室」にて、各種情報機器・デジタル教材等を実際の授業形式で実演しながら、教員役からはICT活用の意図、児童生徒役からはそれを受けてみての実感等を語り合う場を設け、双方の立場から検討することで、ICTの「活用」が「誤用・乱用」に陥らないようにした。

また、当教職大学院では、教員によるデジタル教材提示ツールとしてのICT活用の次の段階として、児童生徒1人1台モバイル端末体制やBYOD体制における授業実践力を獲得することを目指している。

教職大学院でのモバイル端末1人1台体制は、モバイル端末を持った児童生徒役が即できることにつながっており、「一定の授業規律と操作スキルを獲得した児童生徒役」を院生が担うことで、模擬授業者は、その体制での成功体験をおさめることができる。

教育現場においてモバイル端末1人1台体制およびその授業実践を日常化することのハードルは高いといえるが、教員養成において、その成功体験を事前に手にすることは、今後の教育現場における授業設計上大きな糧になるはずである。

さらに、小規模校が多く複式学級率も高いという和歌山県の地域特性に対応するため、ICTの「C」つまりコミュニケーションツールとしての活用の認識を深める取組も、共通科目「小規模校研究」において設定している。

模擬授業教室にて実施されるテレビ会議・SNS仮想体験の様子

模擬授業教室にて実施されるテレビ会議・SNS仮想体験の様子

例えば、「テレビ会議システムを用いた遠隔授業」や「SNSを利用した学校間交流の事例」を取り上げ、それらを仮想的に体験することで、小規模校における有効性や、実現するための設備環境・手立て等を学ぶ機会としている。

テレビ会議システムによって遠隔地と結ぶ授業、オンラインによる共同作業、SNSを利用した学校間交流の演習を取り入れ、テレビ会議システムでは、何ができて何が伝わりづらいのか、それを補完する役目として学校間交流のツール(SNSやブログ等)をどのように活用すればいいのか等も併せて実施している。

当講義では、小規模校の抱える課題を解決し、学校間交流を活性化させるツールとしてICTを位置付けているが、積極的に導入したい学部進学の院生(ストレートマスター)と、慎重論を唱える現職教員との“せめぎあい”も多く見られるのが特徴的である。テレビ電話やSNS等、もはや児童生徒の家庭内では日常化したツールではあるが、「それを使いこなせる教員が小規模校ではいない場合もある」(=セキュリティ面での不安につながる)、「学校の統廃合を促進するのではないか」、「SNS依存になる可能性も高い」等の懸念も出される一方で、児童生徒が「SNS等で地域の特色を発信し自信につながる」「意見の多様性が得られる」「近隣学校の集合学習や協同学習が活性化できる」などメリットが上回ることも多い。

全体を通じて、ストレートマスターと現職教員との合同講義として実施している利点が顕著に表れている。

ストレートマスターは、モバイル端末の扱いに長けており、クラウドやSNSの利用に対しての抵抗感がなく、もはや日常化したツールとして使いこなす。しかし、教育現場ではまだまだクラウド・SNS等への抵抗感が強く、むしろそれらが各種トラブルを生じさせる「諸悪の根源」としてのイメージが強いといえる。

ICTの活用全般において、その「目新しさ」や「楽しさ」だけが先行してしまうことがないように、一定のストイックな面が必要であるが、一方で、新しい情報技術への貪欲さもまた必要であろう。その点で、ストレートマスターと現職教員とがICT活用について活発に議論する場となる教職大学院の講義はそれ自体がICTの「有効活用」につながる要素が詰まった時間である。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載

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