7月28日、教育家庭新聞社主催で第3回私立公立高等学校IT活用セミナー(東京開催)が開催され、多数の教育関係者が参集し、ICTを活用した教育事例を共有。積極的な情報交換が行われた。
東北学院中学校・高等学校・新田晴之教諭 |
新田教諭は、東北学院中学校・高等学校のICT環境整備について報告した。
まず文部科学省「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会最終まとめ」における普通教室ICT環境整備のステップ「ステージ1~4」までの図を示し「多くの学校はステージ1も到達できていない。逆に本校は、ステージ4の達成から始めた」と語る。
ステージ4とは、アクティブ・ラーニングを実現する「1人1台の学習者用端末活用環境+電子黒板、無線LAN、個人フォルダの整備」である。「ステップを上げながら整備を進めるほうがさらに難しい」と考えたのが大きな理由だ。
さらに「アクティブ・ラーニング実現のビジョンと校務支援システムがなければステージ2どころか1の達成も難しい」と、総合的な体制整備の重要性を指摘した。
同校では教員用端末はWindowsだが、生徒には1人1台のChromebookを保護者負担により導入。学校活用、家庭活用を視野に「特定のOSやアプリに頼らない」ことを目指した。保険を入れて5万円程度の負担だが、その有用性や活用について説明するのは学級担任であり、きちんと説明できる状況を作らなければならないと語る。
活用しているのはGoogleのクラウド「G Suite」と授業支援システム「Classi」。総合的な学習の時間ではGoogleスライドを活用して「調べる・共有してまとめる・発表する・他者その意見の違いを知る」ことに活用。まとめる、共有する活動のためにはキーボード付きが良いと話す。
無線式のキーボードも検討したが、ネットワークに負荷がかかると考え、やめた。
普通授業では、Web上で小テストや反転授業を行う。小テストはClassiを使って問題を作成、成績集計もできる。Googleフォームでも簡単なテスト作成はできるが、アンケート機能の派生形のため問題形式が限られる。反転授業はClassiの学習動画を配信して予習を促す。英語では、スピーチ課題を自撮りして課題を提出、授業では生徒同士で撮影し合って相互評価を実施、物理では、動画を視聴しながらノートをまとめ、自分の理解に応じて動画を視聴していくという授業を実施。
今後、数学では、自分の解き方の説明を動画で撮影、生徒同士で見合って確認するという活動を想定している。
「授業のみではなく、朝から放課後、家庭学習までトータルで考えた活用を模索すること、大学入試改革を念頭にポートフォリオとしてICT活用を模索することがポイント。授業設計を念入りにしながら振り返って改善していくことも重要である」と語った。
同校は、本年10月27・28日に実施される放送教育研究会全国大会・視聴覚教育総合全国大会の会場の1つ。当日は一人1台環境を活用した授業が公開される予定だ。
【講師】東北学院中学校・高等学校・新田晴之教諭
【第3回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2017年7月28日】