1月25日に第37回教育委員会対象セミナーを福岡・天神クリスタルビルで、2月8日に第38回教育委員会対象セミナーを名古屋・名古屋国際センターで開催した。次回、第39回教育委員会対象セミナーは、3月29日に岡山・岡山コンベンションセンターで開催する。セミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
福岡市立東光中学校 元主浩一校長 |
元主浩一校長(福岡市立東光中学校)は『学び合い』によるアクティブ・ラーニング(A・L)とICT活用を通して学力向上、不登校ゼロ・いじめゼロを実現した取組について報告した。
6年前、当時教育困難校とされていた同校に赴任。生徒指導面が落ち着いた4年前から学力向上に取り組んだ。授業中に寝ている、教室から出て行く生徒もおり、打開策を模索する中、3年前から一部の教科で『学び合い』に着手。翌年から全校・全教育活動で開始した。
同校の『学び合い』の目標は「1人も見捨てないことで全員が分かる」こと。授業中も立ち歩いて友達に聞くことを奨励し、グループ作りは生徒に一任。生徒会活動、縦割り清掃、部活動などを通じて『学び合い』を重視しながらリーダーの育成、意見を言える力の育成などを目指した。合唱コンクール、体育大会なども学年を超えた『学び合い』として取り組んだ。
昨年から、生徒の意欲・関心の拡充、知識・理解の補完、技能の習得、思考の深化・拡大の4視点からICT機器の積極的な活用を進めている。
PC教室更新時に情報端末(Windows)を整備。
教員用の情報端末(iPad)整備と各教室の短焦点プロジェクター・スクリーンの常設は、PTAや同窓会の協力で実現。中学校では提示内容が細かい場合が多いため、大きく見せることを重視してプロジェクターとした。
「教員が情報端末を使うことで、情報量が飛躍的に増え、授業展開がより迅速になり、授業改善のための新たな挑戦ができるようになった。学校改革のためには、まずは教員用情報端末の整備が急務だ」と話す。
特別支援教育の視覚化の手法を取り入れ、この時間の授業では何をどのような順序で学習するのかをプロジェクターや黒板に提示。始業式、卒業式などの行事では、校長自ら情報端末を使って生徒に講話を行っており、朝のH・Rでも連絡事項の提示に活用している。
取組の成果は、数値としても表れた。全国学力・学習状況調査では、平成25・26年はすべての調査項目で全国平均を下回っていたが、27・28年は国語Bが全国平均を上回り、国語A、数学A、数学Bも、全国平均と同程度まで上がった。
学校生活が楽しいと感じる生徒の割合も、2年生は90・7%、3年生は98・6%と全国平均や福岡市平均の約2倍だ。生徒の故意・過失による破損件数は、25年度46件から27年度は3件と激減。遅刻者ゼロの日数も24年の年間9日から27年度は73日と増えた。『学び合い』やICT活用による授業改善で、生徒が落ち着いた環境で学ぶことができるようになったことが大きい。
元主校長は「ICT活用で、『学び合い』によるA・Lを、さらに深化、補充することができた。両者はこれからの社会に必要とされる人間作りには必須事項である」と語った。
【講師】福岡市立東光中学校・元主浩一校長
【第37回教育委員会対象セミナー・福岡:2017年1月25日】
【2017年3月6日】