1月25日に第37回教育委員会対象セミナーを福岡・天神クリスタルビルで、2月8日に第38回教育委員会対象セミナーを名古屋・名古屋国際センターで開催した。次回、第39回教育委員会対象セミナーは、3月29日に岡山・岡山コンベンションセンターで開催する。セミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
福岡県立糸島高等学校井上功一指導教諭 |
創立114年、校舎の博物館指定60周年という糸島高等学校。出席率99%、部活動加入率86%と意欲的な生徒が多い。井上教諭は、同校のアクティブ・ラーニング(A・L)や21世紀型学力の育成について報告した。
「A・Lとは何かを知らない」「A・Lを導入した授業設計を行うことに対する不安を抱えている」「A・Lを導入した授業設計の必要性をあまり感じられていない」などの問題点を解決するため、九州大学の山田政寛教授に助言を受け、プロジェクトチーム「ITOK」を結成。メンバーは国語、地歴、数学、理科、保体、英語、情報の各教科の教員1名ずつで、ITOKが核となり授業改善を目標に研修や研究授業などに取り組んだ。
授業設計で求めたポイントは「ICT活用」「A・L」「協働・協調の学び」「反転学習」のうちの1つまたは複数要素を取り入れること。職員室にA・Lを中心とした関連図書も常設して参考となる本も紹介。その結果、新たな学びに対する興味・関心が高まり、 授業への導入頻度が高まった。
「ITOK」では、九州大学の大学院生と共同で設計した独自の授業モデル「インフェクション・バトル」(ジグソー法+ゲーミフィケーション)を実践。健康リテラシーをテーマに取り組んだ。
生徒は反転学習で「感染症」について学んだ後、その特徴、症状、予防法についてジグソー法でより深く協働・協調的に学ぶ。班ごとのプレゼンテーション後、相互投票により糸島高校での脅威となる感染症第1位を決めた。総合評価では、発症すると100%死亡するという狂犬病が1位。スピーチ部門1位は感染率の高さを強調したデング熱、スライド部門1位は、デザインで危険性などがよく伝わったとの評価からインフルエンザが選ばれた。井上教諭は「感染症という身近なテーマを扱ったことで、生物の授業に苦手意識を持つ生徒もポジティブな関心を持った。自分が説明しなければ発表できないという状況が学習意欲を高め、対話的な学びに繋がった」と語る。
糸島高等学校では、平成27年パナソニック教育財団の助成等により情報端末(クロームブック等)45台、アクセスポイント1台、持ち運び用Wi―Fiルータ4台などを整備。反転学習では、NHKの高校講座や自作教材を活用。自宅に情報端末やネット環境がない生徒が放課後などに利用できるように、反転学習用の教室も設置。授業では、冒頭で反転学習の内容をプリントや小テストなどで振り返り、話し合いなどを通して応用的な学びや深い理解を促す授業を実施する教員が増えている。井上教諭は授業改革を進めるためのポイントとして「新しい授業方法に対する不安を取り除くための理解促進と環境の整備」「教員の興味・関心が高く、取り組みやすい授業手法を一部の授業から始める」「現在の環境でできる手法から始める」「教材設計、授業準備を丁寧に行う」を挙げ、「A・Lの評価観点が明確になれば安心して取り組む教員が増える」と話した。
【講師】福岡県立糸島高等学校・井上功一指導教諭
【第37回教育委員会対象セミナー・福岡:2017年1月25日】