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授業改善八策シートで授業評価<羽生市立須影小学校>

埼玉県羽生市は文科省「ICTを活用した教育推進自治体応援事業」(平成27・28年度)の実証地域だ。市立小学校3校(須影小、岩瀬小、村君小)において情報端末を活用したモデルカリキュラムの作成に取り組んでいる。実証校の1つである須影小学校(小峯由起子校長)で11月18日、研究発表会が開催された。

Tマイスター検定で教員・児童の技能向上

小5体育 自分が跳び箱で跳んだ姿をスロー再生で確認
遅延再生モードで撮影して自分の演技を確認

須影小は平成26年度、羽生市フューチャースクール事業により情報端末(@Pad)20台を導入し、無線LAN環境を整備。授業の必要な場面で学習ツールとして情報端末を活用するための授業改善に着手した。

情報端末の効果的な活用に向けて「須影小授業改善プラン」や「Tマイスター検定」など特色ある取組を展開している。

4年・理科 ジグソー学習で説明

理科「もののあたたまり方」では、グループで1台の情報端末を使用。自分が理解した内容を他者に伝える力の育成に向けて、ジグソー法を用いた協働学習が行われた。

情報端末のカメラ機能を使い、前回の授業で録画した実験映像を再生して振り返る。次に、学習グループとは異なる実験グループを作り、同じ学習グループの児童が水を温める実験グループとインクを温める実験グループに分かれる。実験後に最初の学習グループに戻り、自分が行った実験の結果を他の児童に報告。実験動画を示しながら「どうしてそうなるのか」を分かりやすく伝えた。

5年・体育 遅延再生で見直し

体育「跳び箱運動」では、台上前転を大きくきれいに回るために情報端末を活用していた。

着地に課題のある児童は2台つなげた跳び箱、足を伸ばすことに課題のある児童は上からビニールを吊るした跳び箱など4種類の跳び箱を用意。各自が抱える課題を解決するための跳び箱にチャレンジした。

それぞれの跳び箱の前には、情報端末を1台ずつ設置。常に撮影状態にする。遅延再生できるアプリで、跳び箱を跳んだ児童はすぐに情報端末の前に行き、自分が跳んだ姿を画面で確認。客観的に自分の姿を捉えながら問題点を直していった。

課題を解決できたと自己評価できたら、自分が跳ぶ姿を情報端末のカメラ機能で友達に撮影してもらい、互いに問題点を指摘しながら教え合う姿が見られた。

授業改善八策シートで評価

須影小ではPLAN(計画)→DO(実践)→CHECK(評価)→ACTION(改善)の流れを繰り返す「須影小授業改善プラン」を意識して授業改善に取り組んだ。そこで大きな役割を果たしたのが、CHECKの際に用いられる「授業改善八策評価シート」だ。授業後に「授業のねらいに適したICTの活用がなされたか」、「時間のコントロールをしながら情報端末を活用できたか」など8項目の達成度を担当教員がチェック。このシートを参考にしながらワークショップ研究協議会が授業改善に向けて話し合った。

本シートはかねてより同校で授業改善のために活用されていたもので、その内容をICT活用に向けて改訂したものだ。文科省「ICTを活用した教育推進自治体応援事業」のアドバイザーである文教大学の今田晃一教授は「授業改善八策シートを通じて、すべての教員が協議を深めることができた」と評価した。

Tマイスター検定
"突然のフリーズに対応できる"と上級に認定される

児童と教員が受検

情報端末導入にあたっては教員と児童の技能向上が必要と考え、Tマイスター検定を実施。児童版は初級・中級・上級の3段階、教員版は初級・中級・上級・指導者・マイスターの5段階を設定した。

児童版では「無線機能を活用して大型テレビに映してプレゼンを行うことができる」「突然のフリーズに対応し、状況を解決することができる」の2項目をクリアすると上級に認定される。各自の認定証を教室に掲示することで意欲向上を図った。

平成28年度は3年生が初級、4年生が中級、5・6年生が上級に合格。1・2年生は入門段階として情報端末に親しむことが目標だ。教員版は授業における情報端末の活用能力を図るもの。全教員が上級レベルに合格した。

実証校3校によるモデルカリキュラムは28年度末に完成予定だ。複数の教科における計画的なICTの活用が示され、ICTの活用場面や活用方法などを一覧にまとめる。モデルカリキュラムには教員と児童の授業評価欄を設け、より実践的なものとする。

 

【2016年12月5日】

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