教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化
7月5日、第31回教育委員会対象セミナーを東京で開催した。タブレットPC等ICT活用については千葉大学の藤川大祐教授、北区教育委員会の岡庭智憲指導主事、杉並区立天沼小学校の福田晴一校長、荒川区立ひぐらし小学校の山本洋校長が報告。校務の情報化については取手市教育委員会の横島信吾係長が報告した。
今年度のセミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
千葉大学教育学部 副学部長 藤川大祐教授 |
千葉大学・藤川教授はICTを活用した新しい授業のあり方を研究しており、ICT活用により実現すべき「夢の授業」について語った。
藤川教授は「夢の授業」を、「子供の集中量が高い授業」と定義する。
集中量とは、集中度×時間である。子供たちの動機を高め、夢中になって取り組める課題を用意し、集中と弛緩の繰り返しを効果的に行って、集中の総量を極大化することを目指す。目指すは、止めても子供が前のめりに学習してしまう「学びこむ授業」だ。
現在、子供の集中量を増やす手法として、ゲーミフィケーションと「協働学習」の要素を盛り込んだ算数教材を大日本印刷と共同で開発中だ。
この教材ではゲーム内のキャラクターを「助ける」という目的を設定。それをクリアするためには算数学習に取り組む必要があるという内容だ。グループで協力して問題を解くなど集中量を高める仕掛けを盛り込んでいる。
集中量を増やすゲーミフィケーションの仕掛けについても解説。ポイントは「ゴール」「ルール」「フィードバック・システム」「自発的な参加」の4点だ。
まず、課題を「やる」か「やらない」を子供に選択させる。「やらない」という選択肢を選んだ場合も、最終的に「やる」を選択せざるを得ないような仕掛けとした。「やる」と自身で選択することにより、自発的に参加する意識が生まれ、課題に取り組む態度を醸成することが目的だ。
教材の中に物語を導入し、物語の進展に学習者が関与するようにして、目指すものが物語の中で自然に示されるようにすることで「ゴール」を明確にし、到達するための役割分担や活動時間などの「ルール」を設定。異質な者どうしが協力して課題を解決しなければ、先に進めないようにして、知恵を出し合いながら課題に取り組んでいく。
取り組む課題には、やり遂げるに値する「困難さ」も必要だ。
さらに、ゴールに向けた到達度を学習者が把握できるようにして集中力の維持を狙っている。
ゲームに協働学習の要素も盛り込んだ理由について藤川教授は「どれだけ教材を作りこんでも、1人でタブレットを使って進める学習には集中できる時間に限界がある。協働学習ならば、集中力が継続しやすい」とその利点を語った。
千葉大学教育学部の授業では、グリーと協力して、学生が小学生の協働学習用ゲームアプリ作成に取り組んでいる。学生はグリーのエンジニア・クリエイターと組んで学習ゲームを制作する。この授業は「ゲームの力を応用した教育」を理解し、その知識を活かせる未来の教員を育てることがねらい。千葉大附属小で行われた模擬授業では、実際に学生が作った「しりとりゲーム」に、2年生の児童がペアになり、辞書を引く係と文字を入力する係に分かれて学習ゲームに取り組んだ。
ゲーミフィケーションに必要とされるのは、学習者を巻き込むための物語性や愛着のあるキャラクター、実社会とつながりのあるテーマなど。ゲーミフィケーションを取り入れることで、児童の学習の動機づけ、集中量の極大化、高度な教育内容への対応、教員の負担減などが得られる。「ICTを活用した『夢の授業』には、高度な知識や技術ではなく、想像力が必要」と語る藤川教授。多くの教員が集中量の高い授業を目指す仕組みづくりに今後も取り組んでいく。
【講師】千葉大学教育学部副学部長・藤川大祐教授
【第31回教育委員会対象セミナー・東京:2016年7月5日】
【2016年8月1日】
1、千葉大学教育学部副学部長・藤川大祐教授/2、東京都教育庁 総務部情報化推進担当・吉井英司課長
3、取手市教育委員会学校給食課管理係・横島信吾係長/4、北区教育委員会・岡庭智憲指導主事
5、杉並区立天沼小学校・福田晴一校長/6、荒川区立ひぐらし小学校・山本洋校長
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