教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化

教育委員会や学校の整備担当者を対象にした教育委員会対象セミナーが12月7日、東京都内で開催された。主催は教育家庭新聞社。今回で第27回となる本セミナーは、総合教育会議の影響か、首都圏を中心に全国の教育委員会からこれまで以上に多彩な部署の参加があった。2月は名古屋、3月は岡山で開催する。詳細日程は教育家庭新聞Webへ
詳細=www.kknews.co.jp/semireport

情報モラル教育はアクティブ・ラーニングで 都立江北高等学校・稲垣俊介教諭

都立江北高等学校・稲垣俊介教諭
都立江北高等学校
稲垣俊介教諭

正論では解決しない課題に対応

「以前の情報モラル教育の多くは、何をしては駄目なのか、について考えるケースがほとんど。しかし、スマートフォンが普及し、コミュニケーションが多様化している今、問題が複雑化しており、やってはいけないことを把握するだけ、正論をそのまま伝えるだけでは、現実に起こっている生徒の問題を解決することはできない」と語る都立江北高校の稲垣俊介教諭。人はモラルに反することだ、やってはいけないことだ、と分かっていながらも、つい問題となる行動を取ってしまう場合がよくあるからだ。

そこで社会や他者への影響を考慮して道徳的判断ができるよう、高次の道徳性を目指した情報モラル教育を目指した実践を心がけ、生徒が抱えている身近な課題をテーマに設定して情報モラル教育に取り組んでいる。

事前に生徒にアンケートを取り、LINEの使い方について調査。友人から届いたLINEに返信しないと相手が傷つくかもしれないと悩んでいる生徒がいたら「アプリでのコミュニケーション」をテーマにして、「届いたメッセージに、すぐに返信すべきか」「LINEの既読機能に対しどのように考えればよいか」について各自で考えさせてから、グループで話し合い、他者の意見を聞いた上で、まとめた考えをプレゼンで発表するというアクティブ・ラーニングの手法を活用している。

「終わらない会話を続けるよりは、既読となったことで、メールを返信したことにして会話を終えても良いのではないか」と、正解を示すのではなく一つの意見として教員の考えも伝える。

「授業を通じて何が正しいか答えを出すのではなく、LINEのメッセージをすぐに返信をする人も、しない人もいるということなど、自分とは違う考えの人がいることに気づき、それで生徒が安心できれば良い」と語る。

こうした情報モラル教育を行うためには、授業のひな型を決めておくことも必要だ。高校では情報科の教員が情報モラル教育を担当することが多いが、小中学校では情報モラルの知識がある教員が必ずしもいるとは限らない。それでもひな型があれば、授業の計画を立てやすくなるという。稲垣教諭は1時間の授業の流れとして、(1)生徒の足並みをヨえるため基本的な知識を伝えて問題を理解する、(2)事前アンケートなどを参考に作成した問題を提示して自分の意見を持つために思考させる、(3)班での話し合いなどを通じて他者の意見と比較して判断する、(4)まとめた考えを発表して表現する、(5)他グループの考えや教員の意見などから改めて再思考し再表現をする、(6)アンケートなどにより生徒の実態を知る。

授業の最後に行ったアンケートから次の授業へとつなげる。稲垣教諭はこのひな型に沿って情報モラルの授業を行っており、生徒が抱えている身近な課題を探りながら、提示する問題を設定している。

「インターネットが抱える問題に対して様々な資料や調査結果が出ているが、実際に生徒が抱えている課題を知るためには目の前の生徒から聞くしかない。生徒と共に悩みながら学ぶ情報モラル教育であってほしい」と語る。(講師=東京都立江北高等学校・稲垣俊介教諭)

【第26回教育委員会対象セミナー・東京:2015年12月7日】

【2016年1月1日】

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