初等中等教育から留学生対応にきめこまかい点がカナダの特徴だ。グレータービクトリア学校区とバーナビー学校区を取材したところ、ICT活用にも積極的であることがわかった。
初等中等教育
【ビクトリア学校区】
公立高校では様々なプログラムを提供 |
学習者用PCの充電カート |
PCでエッセイをまとめる。
テーマは |
「中一ギャップ」に似た現象はカナダにもある。州都ビクトリア市をカバーするグレータービクトリア学校区では、BC州で一般的な7‐5年制ではなく5‐3‐4年制を採用している。同学校区にはインターナショナル・ハイスクール・プログラムがあり、BC州教育省(=Ministry of Education)から認可を受けている。
高校生までの学校区内留学生全てをケアする事務局「Uplands Campus」があり、日本人を始めとする留学生に対して、短期ハイスクール体験(1〜3か月)、夏期ESL(7〜8月の8週間、11〜18歳対象)、英語研修ツアー(12〜18歳のグループ対象)など多様なプログラムを用意している。山手学院高等学校など私立学校を中心に数週間単位の留学・交流プログラムとして活用している学校も多い。教員用の英語プログラムもある。
留学生支援の1つが5か月間のアカデミック移行プログラム(ATP)。新学期を迎える準備期間として英語、数学、科学、社会科等を教えるプログラムで、現在80人が学んでおり、近年は韓国や中国の留学生が増えている。日本からは4月から入学して9月に備える場合が多い。同伴の保護者向けクラスもあり、その参加費はプログラムに含まれている。
■Victoria High School(ビクトリア市)
生徒数約800人のうち留学生は約100。日本人は10人というビクトリア・ハイスクール。自動車整備などのメタルワーク、ダンスやボーカル、写真、舞台美術や照明なども学べるファインアート、コンピュータラボなど多様なニーズに対応。それぞれの設備も本格的だ。同校に通う日本人留学生・清水ありすさんは、「英語が好きで、高校時代を海外で過ごしたかった」と話す。こちらの1学期に合わせ、日本の中学校3年秋から同校へ9年生として入学。現在12年生で、大学進学先を日本にするか、カナダにするか考慮中だ。
■Gordon Head Middle School(ビクトリア市)
ゴードン・ヘッド・ミドルスクールではダンスやドラマ、木材加工など多様な特別授業があり、選択して学ぶことができる。全般的に一斉指導の場面は少なく、インタラクティブなやりとりを中心に授業を進められる。
各教室にはプロジェクターとPC、書画カメラなどがセットになったカートが設置されている。国語のクラスでは、「人生における困難は、人をどう強くするか」というテーマでPCを使って各自がエッセイをまとめていた。エッセイの書き方を学んだ様子が板書に残っている様子は、日本の学校の授業と同様だ。
PCを使ってエッセイをまとめることのメリットについて聞くと、先生はその質問を生徒に投げかけた。生徒はすぐに「考えたことを次々に書いていくことができる、整理や校正がしやすい。スペルチェック機能が便利」などと答えていった。
図書室でもPCを使ってレポートをまとめていた。課題は「もし私が先生だったら」。図書室ではインターネットから課題に関する調べものをしたり、PCで文章をまとめたりしている生徒の姿が見られた。iPadは6台導入したばかりだそうで、今後増やす予定だという。
【バーナビー学校区】
iPadを導入したばかりで使い方を学習中 |
化学の宿題では「マシュマロで分子モ |
壁にプロジェクターを設置した教室も多い |
バンクーバー郊外にあるバーナビー学校区はエレメンタリースクール(幼稚園と1〜7年生)41校、セカンダリースクール(8〜12年生)8校で、全49校にESLがある。現在29か国の留学生が在籍。韓国、台湾、香港が多く、日本人は学区内に4〜5人程度。留学生は学区として受け入れ、期間は約5か月間(1学期)または10か月間(2学期)単位だ。留学生の割合が各校8〜10%以下になるよう調整しており、英語に関するサポートを受けながら授業に参加できる。留学生どうしの交流プログラムも盛んだ。
カナダでは英語とフランス語が公用語であることから、地元の保護者に人気なのが「フランス語のイマージョンクラス」だ。ほぼ全ての教科をフランス語で行うコースで、抽選で選抜される。1年生からの「アーリーコース」と4年生からの「レイトコース」があり、いずれも人気。
同学校区の小学校に子どもを通わせている春本修二さんは「読み書きが苦手な子へのフォローが手厚い。宿題は15分読書や週末のスペリングテストに向けた週末の準備程度だが、4年生からは課題が増えると聞いている」。カナダについては「様々な人種や言葉が当たり前に周囲にあるという環境は人間形成上重要」と話す。
英語、数学、体育、科学、社会学のほか、ダンス、演劇、音楽、ビジュアル・アートや技術教育、リーダーシップ、キャリア教育など幅広い科目がある。取材した2校ともICTを活用した授業も展開していた。
■Seaforth Elementary School/シーフォース・エレメンタリースクール
図書館ではプロジェクターを使ってiPadの使い方を説明していた。全校に無線LANを敷設しており、どこからでもアクセスできる。
iPadはまだ導入したばかりで、充電カートにiPadが30台保管されている様子は日本と似ている。
既に調べ学習や課題のまとめなどでPCを使っていることから、iPadも当初は調べ学習を中心に使い始め、今後は「生徒の創造性に寄与する使い方を考えていく」と話す。6〜7年生のクラスでは、物語の続きを2人1組で考え、映像で発表する授業を行っていた。
■Burnaby Mountain Secondary School/バーナビーマウンテン・セカンダリースクール
校舎は広々としており新しく、何教室かにはプロジェクターが壁に設置され、いくつかの教科で資料を提示しながらの授業が展開されていた。iPadを45台購入したばかりで、移動式の充電カート2台が図書館に保管されている。図書館のスペースはマルチメディアスペースにもなっており、広い。PC室ではコンポジションの授業で、英作文に取り組んでいた。
Webサイトで生徒の提出作品を確認している化学担当のカレン・ウー先生に話を聞くと、「マシュマロで分子モデルを作成し、iPadで写真を撮影して学校の生徒専用サイトにアップする、というのが宿題」だそう。
当日は甲南高等学校(芦屋市)からの短期留学生・池田さん、木下さんに話を聞くことができた。
甲南高校の「グローバル・スタディ・プログラム」では1、2学期間を日本で過ごし、3学期にはカナダ、ニュージーランド、英国いずれかの高等学校(10年生)で過ごす。授業の流れについては「日本では50分間で密度が濃い一斉授業。こちらは120分かけ、生徒とやり取りしながら進んでいく」と話す。
Burnaby School District
http://www.studyinburnaby.ca/?lang=ja
【2013年4月8日】
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