カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州の学校教育―高等教育

 日本企業における日本人留学生の採用意欲は高いという調査結果も出ている(ディスコ/2013年2月調査)なか、英会話力にとどまらず、多様な人と協働しながら目的を果たす力、就職と収入に直結する技術と人脈を手に入れることができる、人材育成に直結する「海外留学」が求められている。文部科学省は2011年、「グローバル人材育成推進会議」において、今後10年間に18歳人口の約10人に1人を「1年以上の留学や在外経験を持たせることを目指す」指針を出しており、「グローバル人材育成推進事業」などで大学教育のグローバル化を推進している。かねてより多様な留学生が多いカナダだが、ブリティッシュ・コロンビア州(以下BC州)は2012年、以後4年間で留学生50%、約4万7000人増という意欲的な方針を立てた。教育家庭新聞ではBC州における留学・教育環境について州政府の協力を得、初等中等学校、高等学校、カレッジ、大学、専門学校計9校を取材。日本人留学生にも話を聞くことができた。

高等教育

"多様性”尊重した教育を提供

国際教育

ESLでは多様な人が様々な目的で英語を学ぶ

国際教育

大学の施設は高校生も使える
(VlU/マラスピーナ)

国際教育

短期プログラムで午前は学習、午後はス
ポーツ交流も(オカナガンカレッジ)

国際教育

ホールに浮かぶ施設も学生スペース
(オカナガンカレッジ)

国際教育

学内でくつろげるスペースも提供(UBC)

 カナダを留学先に選択する日本人学生は多い。留学を視野に情報収集するなか、教育の質の高さ、学費、生活環境など総合的に判断してカナダを選択する傾向があるようだ。大学レベルの英語は日本人の高校生にとって難しいが、英語力以外の入学条件を満たしているとされる「条件付き入学資格」を得たうえで大学のESLなどで英語を学び、TOEFLやIELTSスコアをクリアしながら大学入学に備えることができる。また、2年制カレッジに入学後、3年次に4年制大学(ユニバーシティ)に編入する「トランスファー」も広く行われている。

■VIU/Vancouver Island University・ナナイモ

  広大な敷地と自然、安全な環境にあるのが州立VIU(バンクーバーアイランド大学)のナナイモキャンパスだ。留学生支援センターも完備されており、現在約300人以上の留学生が学ぶ。

  留学生のためのESLでは、主にオンラインで週3〜4回宿題が出る。例えば英単語の宿題で語彙を増やし、授業はその語彙を使ったやりとりを中心に進行、教師は1つの質問に対して生徒から様々な解答を引き出す。取材時のクラスの学生は既にプレゼンテーションの課題を終えており、現在、最終的な課題であるオーラル(口頭)による「説得力のあるプレゼンテーション」に取り組んでいた。

Vancouver Island University
http://www.viu.ca/

 

■Malaspina High School・ナナイモ

  全体の傾向として、BC州の高校に1、2年留学して大学留学に備える生徒が増えている。

  VIUと同じ敷地内にあり、附属高校の位置づけにもなっている私立マラスピーナ高校は全校生徒80人中約80%が留学生。図書館を始めとする大学施設を共有でき、一定の成績を取得できればVIUに進学できる。札幌静修高等学校や富山高等専門学校とも姉妹校関係にあり、前者は6週間、後者は1年間の留学プログラムを行っている。

  同校で学びVIUに進学した高橋史絵さん、植田陽介さんは、中学校卒業後、2年次より海外の高校に編入できるインターパシフィックハイスクール・ジャパン(西東京市)に通っており、マラスピーナ高2年次(11年生)に編入。植田さんは現在大学2年生としてディプロマ(準学士号)に挑戦中だ。「高校から留学すると英語力を強化でき、双方向な授業の進め方にも慣れることができる」と話す。

 

■Okanagan College

  BC州オカナガン渓谷の中心都市ケロウナにある州立オカナガンカレッジでは各クラスの平均受講生数は20人という少人数制が特徴だ。遠藤みなみさんは現在同カレッジ2年生。カナダ大使館主催「カナダ留学フェア」で情報を収集、日本人が少ない環境で学びたいことから留学先をオカナガンカレッジに決めた。同カレッジのESLプログラムには1年間在籍。現在はスポーツビジネスを学びたいとビジネス科に在籍している。授業は「討論、リサーチ、グループワーク、そしてプレゼン」で進むという。授業は週4日程度だが、宿題が多いのでほぼ毎日学校で勉強している。カナダのカレッジ・大学卒業後3年間はカナダで働く資格が得られるため、卒業後はこちらで経験を積む予定だ。

  ESLプログラムは、カレッジ進学目的のほか、ビジネス英語の習得を目的にしている人もおり、リビアから国費留学しているグループもいた。英語教員のためのプログラムもある。

  同カレッジは福井大学、北星学園大学短期大学部、関西外語大学短期大学部ほか多数の大学と提携しており、取材時は立命館大学の学生が4週間のプログラムで滞在していた。午前は英語学習、午後は自然を活かした交流プログラムで1か月間ホームステイする。

Okanagan College
http://www.okanagan.bc.ca/Page12212.aspx

 

“英語力”補いつつ単位を取得

■UBC/University of British Columbia オカナガンキャンパス

  UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)はカナダでトップ5の州立大学だ。BCキャンパスの学生約4万7000人に対しオカナガンキャンパスは約8300人と、豊かな自然に囲まれたアットホームなキャンパスが特徴。リビング風スペースなどキャンパス内でリラックスできる空間づくりも意識している。学生寮は1900人を収容でき、ほぼ個室タイプ。

  産学連携を意識したビジネスプログラムの質の高さを誇っており、テクノロジーに関するプログラムも充実している。昨年9月からEFP(English Foundation Program/進学準備英語コース)を開設した。ESLとは別に設置した、教育学部が運営するユニークなプログラムで、条件付き入学許可は受けているが英語力が不足している留学生などを対象に学術英語を教え、指定された学部本科の授業への参加も義務づけている。2レベルあり、上級レベルは英語圏の多くの大学学部への入学が可能になるIELTS6・0取得者が受講の目安。担当者は「EFPは高校生活での英語力不足を補うことができるので日本人で学位を取得したい人に役立つ」と話す。

  授業では21世紀型スキルの育成を視野に入れており、マネジメント、教育学部、工学など異分野の立場でグループを構成、討論するなど協働的な学びを実現していくように配慮している。

  留学生支援に必要なサービス一切を担当する部署があり、文化的な多様性に配慮して交流プログラムやピアサポートをマネジメントしている。入学前に留学生どうしが早期に合える機会を提供しており、昨年は240人の留学生中140人がオリエンテーションに参加、交流を深めてから入学に臨んだ。

  夏休みには高校生向けに2週間程度のプログラムなどもある。

University of British Columbia (UBC) Okanagan Campus
http://www.ubc.ca/okanagan/welcome.html

>>BC州の学校教育―専門教育

【2013年4月8日】

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