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「教育委員会は、商工部や土木部、その他部署と競争して予算を獲得しなければならない。予算取り成功のためには、説得材料を集める必要がある」と大久保氏は述べる。
財務担当者が「教育委員会は予算を要求してこない」と言う一方で教育委員会は、「お金がないと財務から言われた」と言うなど、両者の感覚に食い違いが見られる。これについては、「他部署に比べて簡単にひき下がっている場合が多いのでは。この予算は無理、と財務に言われたが、1校だけ導入が決まり、首長に説明したところ、良い計画だ、なぜ一気にやらないのかと言われた例もある。予算の必要性について効果的な『説明』が重要」と述べた。
財務担当者は、すべての予算要求にイエスは言えない。まずはノーと言うものだ。それを乗り越えたところに予算がまわるのは、国も企業も自治体も同じだ。
「説明」「執行」の
「責任」果たす
では、「簡単に引き下がらない」ための「効果的な説明」には何が必要なのか。
補正予算は15兆円、その中で今回多額の予算を獲得した文部科学省では、地デジやICTを使った教育効果について、多くの資料で説明した。調査や実証実験に基づいた具体的な資料で、普通教室にLAN整備されている学校群は、未整備の学校群と明らかに学力テストの成績に差があることが明白になった。
「アメリカやイギリスでは教育予算を取る際、必ずこのような資料が出る。これが『説明責任』を果たすということ。予算は有効に使われるべきであり、各教育委員会は、この予算を、責任をもって取りにいかなければならない。それが『執行責任』を果たすことになる」
導入すれば
必ず使える
各地区の議会では、必ず「実際に使えるのか」、「使えないのに高価なものを入れたら無駄」というやりとりがあるという。一方現場では、「入らないから使えない」、この繰り返しを多く耳にする。これについては「教室に入っていなければ使えないのは当然。入れば、先生方は間違いなく使える」と、それを実証するデータを紹介した。
文部科学省は「教員のICT活用指導力チェックリスト」で、「授業中にICTを活用して、指導する能力」について測定している。それによると「授業前にICTを使って調べることができる」は70・4%と最も高い。一番低いのは、「生徒の関心・意欲を引き出すために、PCを使って資材等を効果的に見せることができる」で、55・2%だ。
「先生方の大半が自分のPCを持っているから、調べることができる。しかし教室には環境がない。だから使うことができない。それはこの数字が表している」
他地区と比較
効果的に提示を
これらに加えて出してこそ効果があるのは、他地区との比較だ。「都道府県の分布図を見ると、校内LANの整備率は明らかに違いがある。この格差を保護者はほとんど知らない。知ったらどうなるのか。知られないまま、今回、補正で全自治体に配布された1兆円の経済対策が別に使われるのであれば、大問題」と述べる。「ある市の方の言葉に感銘を受けた。ICTや英語は、家に余裕のある子はPCもある、英語の塾にも通わせてもらえる。そうではない子にとっては、学校での整備がどうしても必要。だから予算を勝ち取った、と。このようなことを、胸をはってぜひ、自治体の中でお話し下さい」と呼びかけた。
予算獲得は
連携して
今回の補正予算は、いくつかに分かれている。
デジタルテレビ、教育用PCが教室に2台、校務用PCにはセキュリティシステム。デジタルテレビの整備でデジタルコンテンツの活用が多くなることが予想され、校内LANでデータを配信する仕組みも必要だ。デジタルテレビに後付けして電子黒板になるシステムもある。先生方の負担を軽減するために、ヘルプデスクや支援体制も必要だ。ICT活用支援員は、今回、別途補正予算のなかでの緊急雇用対策費が使える。環境整備の効果を出すためにはその全てを連携させる必要がある。大久保氏は最後に「財務関係部署は教育委員会のことを理解していることが少ない面がある。財務の方と日々接触し、日頃から理解していただくことが必要。また、財務でノーと言われても首長が良いと思えば、予算が通ることも多い。首長には種々のチャンスの中で事例を説明、機器を実際に使い理解してもらうことが大事。将来の税金を使う貴重な4100億円。子どもたちの将来のためと考え、強気に説明を」と述べた。
【2009年09月05日号】