教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
 TOP教育マルチメディア記事         
バックナンバー
最新IT教育―実践、成果を報告―ICTフィンランド教育
教育マルチメディア
教育委員会セミナー
スクールニューディールとICT予算

─補正予算 柔軟な対応を─

出口寿久氏
文部科学省生涯学習政策局
出口寿久氏

 学校ICT環境整備事業の目標は、学校で教育活用されている44万台のテレビをデジタルテレビに入れ替えること。デジタルテレビの積算価格は、設置費用込みで25万円程度。50インチ以上が推奨だが、50インチ未満を認めないわけではない。校務用PCは教員1人つき1台、教育用PCは先進国並みに児童生徒3・6人に1台、合計196万台を整備。校内LAN整備率は現在の63%を100%とする。事業費総額は4081億円。原則2分の1の国庫補助となる。整備対象により補助金とその裏負担分の財源となる交付金が違うのが今回の補正予算の特徴だ。

 「学校情報通信技術環境整備事業」が当参事官室が担当する「補助金」だ。建物・耐震化のための「安全・安心な学校づくり交付金」は、文部科学省の施設担当の部局が持つ交付金。

 裏負担分として、今回2つの交付金が創設された。ソフト面に関しては「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」、ハード面に関しては「地域活性化・公共投資臨時交付金」。これらにより、デジタルテレビ、電子黒板、PCの購入については原則100%国費で予算化されたことになる。なおアンテナ工事は「安全・安心な学校づくり交付金」が充てられている。

 校内LAN整備に関しては1校あたりの事業費が400万円未満の場合は、「学校情報通信技術環境整備事業補助金」、400万円以上の場合には「安全・安心な学校づくり交付金」だ。

 裏の交付金「地域活性化・公共投資臨時交付金」は、それぞれの工事、事業に対して予算配分される。それに対し「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」の使途は、それぞれの自治体に任される。地方単独事業に使うこともできるし、今回の「補助金」の裏に充てても良い。交付金は、それぞれの自治体の財政力指数に従い、配分率が異なる。「地域活性化・公共投資臨時交付金」についても同様だ。  

6月12日締め切り分の学校ICT環境整備事業費補助金の内定通知に関しては、7月末付けで送付済。2次募集の提出締め切りは8月21日だが、申請状況によっては3次募集の可能性もある。

電子黒板の効果
実証データから


 デジタルテレビは教育現場で、どのような効果があるのか。  出口氏は、平成18年度に東京三鷹市立第一小学校「4年理科」「5年理科」「5年社会」、さらに平成20年度に豊橋市立小学校「4年道徳」でデジタルテレビを使用した学習効果について調査結果を説明。それによると、問いかけに対する児童の挙手の割合、班活動の発言内容量、作文の記述量も大幅に増加した。

 また、写真資料とデジタルテレビによる説明を比較すると、「変化の原因がわかった」という児童が増えており、わかりやすい授業に効果的、という結果が出ている。

 平成19年度に静岡市、兵庫県、富山県、船橋市の小中学校(9校)の公開授業に参加した教員らからは、「デジタルテレビを活用することで、生徒が熱心にコンテンツを視聴し、授業中メモをするようになる、その結果学習意欲や課題意識の向上につながる」という評価が高い数字で出ている。

 教員の負担軽減についての調査も行っている。  モデル校20校へのアンケート結果から、以下の負担軽減項目5つに対し、そのすべてあるいは4つ当てはまると答えた学校が半数以上を占めた。@授業の中に映像を位置づけることによって、授業の展開効率が良くなる、A黒板に写真やパネルを作成・提示する必要がなくなる、B映像を見せることで、説明する時間が少なくて済む、C校内LANとの連携で映像がサーバに蓄積されると、簡単に活用できて授業準備の負担が減る、Dその他(授業で使用したい資料を図書館やインターネットで探すより簡単に入手できる、公のコンテンツがあれば安心して活用できる、PC、OHC等との組み合わせにより、教材準備の時間が短縮できる)。

 出口氏は今後の課題について「ハード面を充実していくと同時に、ソフトがなければハードも活きてこないという点を考慮に入れたい」と述べた。

◇   ◇

 文部科学省旧庁舎3階「情報ひろば」には電子黒板機能付きデジタルテレビが設置される予定となっており、参事官室にも設置されている。電子黒板を見たことがないある自治体の首長が来省した際、実際に実物に触れ、「これは便利、小学校4年生以上の教室に整備しよう」と即決したという。出口氏は、「ぜひ、積極的に実物を見て試して」と参加者に呼びかけた。

会場からの質問

〈質問〉予算申請したときに、デジカメやプロジェクターはそれほど必要ない、と少し省いたところ、教員らから、明るい性能の良いプロジェクターがたくさん必要、デジカメも生徒1人1台程度用意したい、という声が多かった。内示を受けた金額の中で、最初に申請したものと多少別の物の購入可能か。
〈回答〉補助対象となっている物品であれば、対象として頂いてかまいません。

関連情報リンク
→平成21年度補正予算 スクール・ニューディール構想(ICT編)(0900716)
→スクールニューディール構想(ICT編) 教育委員会の「誤解」「誤認」も明らかに(090703)
→【特集】「教育の情報化の手引」で実現する学校環境(090608)

【2009年09月05日号】

目次ページに戻る


記事のご感想をお寄せください

新聞購読お申し込みはこちら