特集:学校保健・健康教育 保健室で守る"心"と"身体"
総合対策で改善のきざし
文部科学省では不登校児童生徒に対する支援の拡充として、不登校に関する調査研究協力者会議で「児童生徒理解・教育支援シート」による支援を議論している。10月28日に行われた同会議では、参考として東京都福生市が平成26年度9月から開始している「福生市不登校児童・生徒月別報告書」及び「個別支援カルテ」について、同市教育委員会教育部参事兼教育指導課長の石田周氏から取組事例が紹介された。
福生市の不登校対策 |
学校が取り組む10の行動 1.不登校を生まないための5つの予防 (1)魅力ある学級づくり (2)欠席する旨、保護者から電話が入ったときの対応の徹底 (3)欠席当日の対応 (4)連続欠席3日の対応、連続欠席7日の対応 (5)臨床心理士による個別面接 2.学校復帰を目指す5つの支援策 (1)福生市不登校個別支援カルテの活用 (2)不登校児童・生徒連絡会議の設置と活用 (3)保護者との連携、児童・生徒へのメッセージ (4)スクールカウンセラー、教育相談室との連携 (5)学校適応支援室「そよかぜ教室」との連携 |
教育委員会が展開する6つの対応策 1.スクールカウンセラーの活用 2.教育相談室の活用 3.スクールソーシャルワーカーの活用 4.家庭と子どもの支援員の活用 5.学校適応支援室「そよかぜ教室」の活用 6.「福生市子ども家庭支援センター」等、関係機関との連携 |
東京都福生市教育委員会
文科省が現在導入を検討している支援シートは、不登校の継続理由を適切に把握し、児童生徒にあった支援策を担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーが協働して作成し、それを基に当該児童生徒や保護者と話し合いの上で支援を講じていこうとするものだ。
H26年9月より開始
不登校への対応策
福生市では不登校出現率が全国平均よりも高いという状況があり、平成22年度は中学校の全国平均が2・73%、東京都3・07%であるのに対し福生市は5・13%、以降その傾向が続いていた。
そこで同市教育委員会は、「ふっさっ子未来会議の提言6『不登校児童・生徒の未然防止と、学校復帰への取組の推進』」の実現を図るために、昨年9月1日に同市小中学校長宛に「福生市不登校児童・生徒月別報告書」(以下、月別報告書)及び「個別支援カルテ」(以下、支援カルテ)の提出について通知。
不登校対策のキーワードを「個別対応」と掲げ、児童・生徒一人ひとりの詳細な指導記録を支援カルテに取りまとめ、学校、教育委員会指導室、教育相談室が連携して不登校対策に取り組んでいる。
対応にあたり福生市は「学校が取り組む10の行動」と「教育委員会が展開する6つの対応策」も掲げている(図参照)。
担任→副校長等→校長
指導主事へ紙で持参
月別報告書は、欠席日数が30日以上(4月のみ7日以上)の児童・生徒について学級担任が記入し、翌月5日まで副校長・生活指導主任等担当者に提出、その後校長の確認・指導・押印を経て、翌月10日まで教委の生活指導担当指導主事へ紙ベースで直接届ける。
支援カルテは、欠席日数が30日以上の児童・生徒について記入し、副校長・生活指導主任等担当者を経て校長の確認・指導・押印を受け、学期末の月末まで月別報告書同様に教委担当者へ届ける。
対応者・内容を記入
一目瞭然で把握
月別報告書は日付ごとに指導・対応等に当たった担当者と、その内容を記入。保護者との連携状況、市内関係機関との連携状況、関係諸機関との連携状況を記入していく。1枚の紙に「誰」が「どのように」指導・対応等を施したのかが一目でわかる。
石田氏は「月別報告書の重要ポイントは『保護者との連携の状況』を記入する欄」だと話す。
支援カルテは、より詳細に「直接のきっかけ及び背景」「家庭状況・保護者の対応」「不登校状態が継続している理由」と、学期ごとの学校の対応と不登校の状況A〜D(※1)を記入する。「直接のきっかけ及び背景」と「不登校状態が継続している理由」については、不登校の要因・状況表が(1)〜(12)(※2)で一覧化されており、記入しやすい。
月別報告書及び支援カルテの活用等、福生市不登校総合対策により、平成26年度の不登校状況は中学校4・40%と改善が見られている。
教育委員会は「カルテを使うことで実効性があり、対応が見えた」と評価しつつ、今後も連携強化を図っていく。
※1=A:著しく好転し、通常登校になったもの B:好転傾向にあるもの C:特に変化がなく、不登校が続いているものD:次第に不登校傾向が深まっているもの
※2=(1)いじめ(2)いじめを除く友人関係をめぐる問題(3)教職員との関係をめぐる問題(4)学業の不振(5)進路にかかる不安(6)家庭の生活環境の急激な変化(7)親子関係をめぐる問題(8)家庭内の不和(9)あそび・非行(10)無気力(11)不安など情緒的混乱(12)意図的な拒否
ワーキングチームが
シートの内容を検討
文科省
文科省が導入を検討している「児童生徒理解・教育支援シート」は、これまでの討議を踏まえ、今後、ワーキングチームにより内容を検討していく。文科省は、今後の重点施策として、同シートの他、教育相談体制の充実、教育支援センター(適応指導教室)の整備促進などを強化していきたいとしている。
平成28年度の概算要求には、いじめ対策等総合推進事業として12・5億円増の62億円を計上。教育支援センターの機能強化のためのスクールカウンセラーの配置、アウトリーチ型教育支援センターの整備促進などが新規事業だ。
【2015年11月16日号】
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