特集:学校保健・健康教育 感染症・食中毒の対策
冬の感染症対策に「シャボン玉石けん」
1910年の創業から今年で105周年を迎えたシャボン玉石けん(株)(福岡県北九州市)は、1974年に合成洗剤から一転、人と自然にやさしい「無添加」にこだわった石けん、洗剤の販売を開始した。冬は特にノロウイルスをはじめとした感染症への対策が学校、家庭でも重要となるが、手洗いの回数が増え肌への負担も増加する。「無添加でより肌に優しい石けんを」と考える同社のこだわり、無添加の意味を探った。
合成洗剤から無添加へ
無添加石けん発売の翌年1975年から登場したキャラクターの「シャボンちゃん」 |
1960年代、合成洗剤を製造・販売し売上を伸ばし続けてきた同社。だが、先代社長の故森田光コ氏は、自身の肌にできる赤い湿疹に悩まされて様々な療法を試みた。
その頃、旧国鉄(現JR)から機関車洗浄用の無添加粉石けんの注文が入った。高純度の石けんを試作し自分で試したところ、長年悩んでいた湿疹の状態が良くなった。
自分の肌トラブルの原因が自社製品だったとことに衝撃を受け、1974年から無添加石けんの製造・販売に転換。今でこそ「無添加」を謳う商品は多いが、合成洗剤が伸びていた当時に石けんは時代と逆行しており売上は激減し、17年間赤字が続いた。だが、信念を貫き18年目から世に認められ始めた。
「ケン化法」でしっとり
誰にでも優しい石けん
法律的には、添加されていない成分を表示すれば「無添加」と謳うことができる。例えば、合成洗剤であっても、香料が入っていなければ香料「無添加」と謳うことができるのだ。
しかし同社は、合成界面活性剤はもちろん、香料、着色料、酸化防止剤などは使用せず、石けん成分のみのものを無添加石けんと定義。
原材料は商品により牛脂、パーム油、米ぬか油、オリーブオイル、アボカドオイルなどの天然油脂を使い分け、釜炊き職人が1週間から10日ほどかけて製造する「ケン化法」(釜炊き製法)をとっている。一般的な商品は4〜5時間で完成する「中和法」で製造するところが多い。
ロングセラーの 「シャボン玉浴用」 |
病院や幼稚園等で採用 の多い「バブルガード」 |
「ケン化法」は、油脂に含まれるグリセリンと呼ばれる天然の保湿成分が残る製法。肌がつっぱらないのが特徴だ。原材料、製法にこだわっていることから、職人は機械検査の前に、舌で舐めて出来具合いを確認する。安心安全の象徴ともいえるのではないだろうか。
肌ダメージが少なく
ウイルス除去率は高い
主力の化粧石けん「シャボン玉浴用」に加え、近年は泡タイプのハンドソープ「バブルガード」が病院や幼稚園、施設等で採用されている。手肌にやさしく、泡切れが良いと現場では好評だ。
「バブルガード」は、広島大学大学院医歯薬学総合研究科ウイルス学研究室との共同研究で商品化されたハンドソープ。肌へのダメージが少なく、ノロウイルスやインフルエンザなどウイルスを不活性化させ、感染症対策に有効である。
洗濯用の石けんは
日本アトピー協会推薦品
浴用石けんやハンドソープだけでなく台所や洗濯、掃除などあらゆる場面の商品を提供している同社。福岡市内の小学校では、学校給食の食器洗いで採用されている。洗濯用の「シャボン玉スノール」は、日本アトピー協会の推薦品を受けている。アトピーや敏感肌などだけではなく、化学物質過敏症で悩む人の使用も多い。同社は、今後も人と自然にやさしい、安全・安心の商品の製造を貫く。
オープンな工場を目指しており、可能な限りの場所を見学では公開 |
石けんアドバイザーらが要望に応じた指導を実施
工場見学
シャボン玉石けんの製造工程を学ぶことのできる工場見学を実施。多い時は年間2万人が訪れ、同社のこだわり、ものづくりのこだわりを体感している。
学校団体は社会科見学や修学旅行など様々な体験学習で訪問。工場案内40分、会議室での説明・質疑応答30分の計70分の所要時間。同社では学校見学も重視しており、石けんと合成洗剤との見分け方など、要望に応じて実験も取り入れていくという。
見学は月から金曜日の平日(完全予約制)。料金は無料。小学5年生以上を対象としているが、社会科見学の場合は小学3年生以上から可能。個人の見学も受け入れている。
講演・出前授業
また、工場見学だけではなく、無料の講演や出前授業なども行っている。
講演会のイメージ |
無添加石けんについてだけでなく、手洗いの方法や合成洗剤との違いなどについて理解を深められるように、同社では授業や勉強会等への講師派遣を実施している。
同社の経営者や石けんアドバイザーなどの社員が、要望に応じた内容で説明。
児童・生徒の環境学習、学校保健委員会や養護教諭の研究会、PTA単位なども活用できる。
同社の工場見学や出張授業は、小学生の社会科見学や研究授業、環境授業はもちろん、PTAや養護教諭の研修で活用できるだろう。
●工場見学の問合せ=093・588・5489
●講演会の問合せ=093・701・3181
【2015年11月16日号】
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