(1面より)SSSの事例発表では4つの事業の発表が行われ、最後に文科省スポーツ・青少年局学校健康教育課の三谷卓也・健康教育企画室長から「発表の中には、"予算"がなくても"意識"があればできる事例がたくさんあった。SSSをどう活用できるかについて学校関係者には考えてほしいし、実践校は失敗も含めて情報をHPで発信してほしい」とまとめた。
学校・家庭における和食推進に取り組み、家庭と連携し、和食朝食50%、和食夕食60%を共通の目標値とした。同校なりの和食の定義を「ごはん+おかず1品+汁物」または「ごはん+おかず2品以上」と決め、1学期は「ごはんを食べよう」、2学期は「みそ汁を飲もう」というシンプルな目標を提案。
生活科・総合的な学習の時間では、食材・生産者・作る人など全てに「感謝」の気持ちを養うため、本物の魚に触れる機会を設けた。「食事の態度が一段と前向きになり、社会性が養われた」と山岸一良校長は述べる。
2学期は「みそ汁を飲もう」をテーマにし、11月には「みそ汁週間」を設け、赤みそ、白みそ、合わせみそ、米みそなどの味を体感。冬休みには具だくさんみそ汁を募集し、230家庭(全396家庭中)が参加するなど、確実に家庭との連携が図られている。
その成果は児童の社会性に表れ、昨年6月の実態調査で「いただきますの意味」を「わかっている」と回答した児童は86・7%であったが、11月には95・8%に上昇。「いただきますは誰にいいますか」との設問では「全て(食材、生産者、作ってくれた人など)」との回答が67・1%から80・6%へと上昇した。
幼稚園から高校まで校種を越えた活動を行ってきたのが東伊豆町内の活動の特長。稲取中では12月のマラソン大会に向けた弁当づくり、エコクッキングなどの取り組みから「食事の質の向上」「実践力の定着」「幼・小へのプレゼンテーション」などを行ってきた。
マラソン大会へ向けて、栄養教諭とスポーツ栄養士こばたてるみ氏のプログラムを受け、当初は「面倒だ」と話していた生徒らも「また弁当を作りたい」と思うまでに意識が変容したという。
稲取高は2年次にコースに分かれた教育課程がとられ、キャリアデザインコースのフードデザイン系とスポーツ科学系の生徒が事業に大きく関わってきた。
フードデザイン系は、レシピ集の作成や情報発信の活動が中心。日本大学の神戸絹代教授の指導を受けたレシピ開発に取り組み、同町で水揚げが日本一の金目鯛の生態について県の水産技術研究所による講義を受講。オリジナルレシピや地元食材のPRに一役かった。
また、情報発信の手段として「えがお食育ブログ」を立ち上げた。IDとパスワードを担当者が共有し、その場で活動をアップしている(blog.goo.ne.jp/sssinatori)。
「地域がつながることで、食育以外の交流も生まれたことが成果の一つ」と戸塚裕之教諭は述べた。
とやまゲンキッズ作戦による全県小中学生対象とした調査では、生活習慣に関するアンケートで県全体の結果よりも良好であったが、高岡市内の小4、中1を対象とした「たかおかキッズ健診(血圧、肥満度、血液検査)」で小4での「異常なし」の割合が全体より低いことが課題となり(平成25年/市全体68・8%、二塚小53・8%)、その割合を60%以上にすることを課題解決の評価指標とした。
その検証をSSS事業で行うため、小児生活習慣病予防健診を4〜6年生で2回実施。食に関する指導に関しては「知識の習得」「豊かな体験活動」「啓発活動の充実」「学んだことを実践する取組の充実」を柱とした。
まず、食に関する指導の全体計画と指導計画の見直しを行い、栄養教諭や養護教諭とのTT指導の充実、社会科、理科、国語科などの各教科と関連付けた指導など、教科・領域内での指導を明確化。PTAや児童会活動などによる幅広い食育活動を実践し、PTAが企画・実施する親子ふれあい活動は、平成26年度すべての学年で「食」をテーマとした。
6・12月に実施した小児生活習慣病予防健診で「異常あり」と診断された児童の保護者に対して昨年7月、12月に個別指導を行い、6月に66・7%であった「異常なし」の割合が12月の健診では70・8%に上昇した。
「次年度以降も食に関する指導の継続及び定着を目指し、家庭・地域との連携の一層の推進、教材の充実、栄養教諭の配置拡充などが課題」と本田智教頭は語った。
課題は「朝食」と「自己管理能力」。9割が朝食を摂取している一方で、栄養バランスの偏りや一人で食べる児童の増加傾向などが危惧されていた。
そこで、「心身共に健康な児童を育む食育の授業」「元気もりもり体すくすく大作戦(学習カード)」「くらしき市版ヘルスジャッジの活用」の3つについて具体的に取り組んだ。
食育授業と学習カードは全学年で実施し、学習カードには児童自らが記入し今日の元気レベルを3段階で評価、家庭の意識向上を目指した。
ヘルスジャッジは、もともと市内90校で活用していたウェブコンテンツ。児童が食事内容を入力し出力データを保護者と共有し食事内容を見直すもの。授業に家庭科がある5・6年生が対象で、家庭科以外にも9、12月に実施。保護者も味付けや品ヨえ、バランスの振り返りとして活用した。
これらの活動により、朝食内容は「定食型」が19・9%(6月)から25%(11月)へ上昇。「主食・主菜・副菜・汁物等のそろった食事は大切」だと思う保護者が89・6%から90・3%となり、目標値の92%に近づいた。
「元気もりもり体すくすく大作戦」の合計点が徐々に増加し、発表者の大塚愛子教諭(写真)は、「食への意識の高まりが継続している」と実感しているという。
【2015年2月16日号】
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