司書教諭と学校司書の「立ち位置」を明確にする―全国学校図書館研究大会 甲府<前編>

”豊かな育ち”支える

8月6日から8日まで「第39回全国学校図書館研究大会甲府大会」が開催され、「学びを深め 知を活かす 学校図書館〜豊かな育ちを支えるために〜」を主題に、全国から司書教諭、学校司書、教育委員会、学校図書館関係者が参加した。

これからの学校図書館には、読書の場としての機能に加え「豊かな育ち」を保障する「学校教育の中核的な役割を担う場」であることが期待される。同研究大会では、子供達の「豊かな育ち」を支える学校図書館の在り方を深く考えようという趣旨のもと、全体会及び分科会で討議が進められた。

主催=山梨県教育委員会、甲府市教育委員会、(公社)全国学校図書館協議会、山梨県高等学校教育研究会学校図書館部会、山梨県学校図書館教育研究会
後援=文部科学省、山梨県、甲府市、山梨県市町村教育委員会連合会

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「第39回全国学校図書館研究大会甲府大会」は、山梨県立図書館、山梨学院大学などを会場に、研究討議・講義・ワークショップなどが行われた。分科会では学校図書館の活用、司書教諭と学校司書の連携といった内容について様々な好事例が紹介され、それについて各分科会による討議がなされた。(特別支援教育については9月1日号で掲載)

■学校司書の活動

横の連携を図りシステムを構築

学校司書の活動
笛吹市の具体的な事例発表に討議も深まる

山梨県笛吹市御坂西小学校の中村みつ江学校司書からは、「連携」をキーワードに学校司書の活動が報告された。

山梨県は昭和20年代より学校司書を配置し、現在は、ほぼ全ての小・中・高校に専任の学校司書が勤務。同市では1校1名を配置しており(小規模校1校を除く18小・中学校に配置)、横の連携に力を入れている。

具体的な取り組みとしては、「笛吹市学校図書館司書研究会」が挙げられる。司書教諭、学校司書、校長・教頭各1名で構成され、司書の力量を高めることをテーマに、年6回研究会を実施。

平成22年には「笛吹市新図書館情報システム構築事業」の打合せ会が発足。市立図書館職員らと共に学校司書もメンバーに加わり、システム導入やカスタマイズの際は学校司書の意見も反映された。その結果、市立図書館と学校図書館が共通図書館システムを導入。自校の端末で市立図書館6館、学校図書館18校の全資料が検索できる。

また、同市では1校に1つのメールアドレスが原則だが、図書館PCは専用アドレスが許可されている。市のサーバーに「市内司書連絡用フォルダ」も設置され、情報の共有を図っている。

校内での活動は、司書教諭との役割を明確に分けている。例えば、調べ学習時には授業者の意図の妨げとならないよう配慮し、児童にも授業者や担任への質問と、学校司書への質問を区別するように伝えている。

発表後は、笛吹市の図書館システムやメールについての質問が数多く寄せられた。司書教諭と学校司書との仕事の役割分担にも関心が高く、参加者からは各自治体の状況も語られた。「学校司書が何校もかけもちしている」「勤務時間が短く本の整理や修理をするので精一杯」という厳しい状況報告が挙げられる一方で、「学校司書がいると学校図書館が充実してくる、といった声も聞く」「教員側から学校司書がいればもっとこんなことができる、といった声をあげて欲しい」といった意見も寄せられた。

今年6月に学校司書が法制化され、来年度から施行される。先行する自治体の取り組みに関心を寄せ、今後の学校司書の活躍と連携が深まることが期待される。

■学校図書館を活用する総合的な学習

調べ・伝える“道徳”「START」が誕生

茨城県立水戸第二高校は、東日本大震災によって校舎数棟が全壊するなどの被害を受け、図書館を教室として使用することになった。新入生は、生きることや進路に大きな不安を抱えて入学したものの、図書館の本に救いを求めることはなく、震災の翌月に赴任した学校司書の勝山万里子氏は、その状況に疑問を持った。

そこで、図書館を活用した授業に取り組むことを考えた。同校は県内屈指の進学校でスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校だ。

そのため、5教科で図書館を使った時間を確保するのは難しく、「総合的な学習の時間」で行っている道徳の課題「学び方やものの考え方」に着目。「生き方在り方を調べよう」をテーマに、8時間構成のプログラムを実施した。

必ず図書館の資料を活用すること、調べたことを発表する観点でまとめることなどを事前に決め、初年度は1〜3時間目までにオリエンテーション・資料探し・原稿作成、4時間目以降を発表にあてた。

生徒からは「職業について考える時間が持てた」「中学まではインターネットだけで調べていたが、NDCを知り、図書館で本を使って調べる方法がわかった」といった感想が得られた。

一方で、図書館活用能力に差があること、「話す」指導がもっと必要といった課題も残り、成果と課題をより発展させ、"テーマに基づいて、調べ、伝える"学びとして「START(Students talk about readingtheme)」プログラムを誕生させた。

希望する担任のクラスのみが実施した年度もあったが、平成26年度からは時数を14時間とし、1年生全クラスが実施。SSHとの連携が深まってきた上に、「人物」を調べることがキャリア教育にも繋がっている。

さらには発表時の服装や態度、質問の仕方なども指導していることから、進路指導や生活指導としても他教員から支持されている。

勝山氏の発表後、会場からは「評価」についての質問があがり討議を深めた。

「『評価』という新たな視点も頂いた。このSTARTプログラムは、人の基礎をつくるプログラムとして伝えていきたい。他校でも応用できるものと考えているので、さらに発展させていきたい」と勝山氏は話す。

【2014年8月18日号】

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