牧野百男鯖江市長 |
子どもたちが読書を通じて豊かな心を育むためは、各自治体の財政による支援、人的支援が必要だ。「図書館総合展」(横浜で開催)で行われたセミナーの一つ「首長が語る地方行政の現状と図書館への期待2」では、福井県鯖江市、島根県海士町、沖縄県恩納村の図書館運営について各首長が語った。その中から、鯖江市の事業を紹介する。
鯖江市は、眼鏡・繊維・漆器の三大地場産業があり、ものづくりが盛ん。それぞれの産業や事業の活性化を図るのと同様に、図書館事業も推進するため、予算面など随所に工夫を凝らした行政に注目が集まる。
子どもの読書支援事業をスタートした当初は、司書教諭はどのような本を購入したら良いのか悩み、さらに購入予算が不十分で、学校図書館の整備が行き届いているとは言えなかった。
■「ちかもん文庫」創設
そこで、まず平成18年に朝読用の本を充実させる目的で、「ちかもん文庫」(近松門左衛門縁の地であることから命名)を設立。申込みのあった学校に1学期に1セットの本を貸し出すシステムだ。選書・装備・運用・管理は、鯖江市図書館が担った。
セット内容は、小学校低学年用100冊、中学年用80冊、高学年用100冊、中学校用200冊。「ちかもん文庫」で一括購入し、各校が持ち回りで使用することで、購入費を抑えながらも多種類の本を効率的に読めるようになった。
また、平成21年には「図書館司書の日」を開始し、鯖江市図書館の職員が定期的に学校を訪問。小学校1校あたり年間16回訪問し、調べ学習の資料提供や低学年向けの読み聞かせなどを行った。
■H23年に学校図書館 支援センターを設立
平成23年には「住民生活に光をふりそそぐ交付金」を財源に、学校図書館支援センターを設立。学校図書館の読書・学習・情報センターとしての機能を高めるための支援や、学校からの依頼に応じて本を選び、貸し出す「団体貸出配送」も実施した。
支援センターの効果は高く、小学校の図書の貸し出し数は8万7278冊(21年度)から、18万3855冊(23年度)と飛躍的に伸びた。これには、22・23年度に緊急雇用創出事業を活用し、学校図書館支援員が2校につき1人の割合で配置されたことも大きい。だが緊急雇用創出事業が終了し、支援員の配置も終了した後は貸出数が減少し、今後の課題となっている。
また、市民との協働事業も盛んで、昭和63年に発足した市民ボランティア組織「さばえ図書館友の会」は、会員数200人を超えている。財源は会費のみで運営し、情報発信、本拭きや本の返却ボランティア、イベントの企画などを行う。
【2013年11月18日号】