グローバル社会に向け、児童生徒のプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力の育成が急務とされている。学校図書館は、「読書センター」「学習・情報センター」として位置付けられており、それら課題の解決場所として果たす役割は大きい。また、小中高と幅広い年代で読書習慣をつけるためには、学校だけでなく公共図書館も巻き込み地域全体でその力を育むことも重要だ。昨今注目され始めた「ビブリオバトル」や従来から活用されている手法を通じて、その具体的な方策について、本特集では考えていく。
グループに分かれて実際に体験する ことで他社の意見に関心が湧く (全国SLA講習会) |
近年、複数で読み合って互いに感想や意見を述べ合うことで、その本をより深く読み取ったり、異なる視点・思考を受け入れ読む世界を広げるといった「読書会」に注目が集まっている。
(公社)全国学校図書館協議会(全国SLA)が実施する読書会コーディネーター養成講習会では、広島大学大学院教育学研究科の山元隆春教授が、ブックトークやブッククラブ、リテラチャー・サークル(以下:LC)など、幅広い「読書会」の手法を紹介した。
読書教育の4領域
山元教授は、読書教育について確固たる決まりはないと前置きをした上で、(1)「本との出会いを促す」ものとしてブックトーク、読書へのアニマシオン、(2)「本に対する抵抗感を弱める」ための読み語り・読み聞かせ、(3)「読書体験にひたらせる」朝の読書等の黙読の時間、(4)「本への反応や感想を交わす」ための読書感想文、ブッククラブ、LCの4領域を紹介する。
ここでは領域(1)の「ブックトーク」と、領域(4)のブッククラブ、LCについてその手法や注意点を考える。
関心のあるテーマで ブックトークを実施
ブックトークは、テーマを決めて何冊かの本を順序立てて主に教員が紹介するもの。可能であればシナリオを描いておくと、やりやすい。
「子どもたちの関心のある題材を選ぶことや、みんなで考えていくことが大事」
例えば、数字の「3」「三」を使って絵本を見ていくと、『三びきのこぶた』など『三匹の〜』シリーズを追うだけでも様々な種類の絵本がある。そこを導入にして他の「3」「三」が出てくる話を探していき、最終的には「作者」の心理などにも話を向かわせることもできる。
"理解"する方法を育てる ブッククラブ
ブッククラブ用の11冊の本から、 気になる1冊を表紙だけで決める |
ブッククラブは特定の本を事前に読み、グループで話し合うこと。これは「『"優れた読者"の素養とも言える質の高い理解力』を育てる」ことが目標だ。
ここでの注意点は「"読むこと"に必ずしも"正解"はないという視点を持つこと」。自分が思っていた解釈に固執するのではなく、様々な解釈を受け入れる姿勢が重要なのだ。
講習会では山元教授が11冊の本を用意し、参加者が表紙だけを見て感覚的に本を選ぶ。同じ本を選んだグループに分かれ、最初は自分だけで読む(メモをとりながら)。
全員が読み終わったら、司会は立てずに疑問に思ったことを話す。意見をグループで「シェア」することが重要だ。山元教授によると、アメリカでは小学生と高校生が同じグループで実施するケースもあるという。
最後に、グループの意見を他のグループと共有することも重要。所要時間は、本を選び、読むことを含めて約45分から1時間程度で、3名以上で1グループを組むことが好ましい。
話題を決めて話し合う リテラチャー・サークル
現在用いられているLCは、「役割」を決めるパターンと決めないパターンの2種類がある(3面「みんなで使う学びの場 学校図書館なるほどQ&A」を参照)。山元教授は役割を決めない方法で、講習会を進めた。
LCは、一人ひとりが考えたことを共有するという意味ではブッククラブと似ているが、文学作品を扱うことが多く、また、事前にグループで話題にする事項を決めておくことが特徴。
流れとしては、個人個人が読書ノートに意見を記入し、教員が方向付けや注意点などを10分程度でレクチャー、その後グループで20分程度話し合い、その内容を読書ノートに記入、最後に全体での報告会を行う。
講習会では、教科書に取り上げられている4つの詩を使った。全体報告では「自分の関心がなかったことに他の人が関心をもっていた」「全員まったく意見が違うことに驚いた」などがあがった。
「LCには、教科書にある教材を使って話し合える特性があります。今回は詩を用いましたが、意図的に"探求型"の詩を選びました。小中高どの校種でも取り上げられるでしょう」
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山元教授の翻訳書「本を読んで語り合う リテラチャー・サークル実践入門」が渓水社より今秋刊行された。
【2013年11月18日号】