私立公立高等学校IT活用セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化
豊島岡女子学園 中学校・高等学校 中嶋淳教諭 |
豊島岡女子学園中学校・高等学校には、中学校約810名、高等学校約1080名が在籍しており、その全生徒の成績などの個人情報を管理する校務システムを活用している。中嶋教諭は、本システム整備の経緯と活用について報告した。
チェックミスを防止
同校の成績処理は独特だ。例えば国語にはA、B2つがあり、それぞれで定期試験を実施。2つの定期試験の成績を合算して、国語の成績を算出する。その他の教科も同様だが、各分野の配点比は、教科によって変わる。
高校ではこの計算方法がさらに複雑化するため、誤記入などのミスを発見することが難しい面がある。
そこで同校では、ミスや誤記入が起きにくい仕組みを考案。「各教科担当の教員は数字を入力するだけ」で自動的に評価されるという仕組みを構築した。
現在のシステム開発の端緒は、平成5年度だ。当時は汎用機を用いた成績処理を行っていたが、企業仕様で学校ニーズに対応していなかった。カスタマイズはしたものの、スキルが高い教員しか使うことができず、皆で活用するには困難な面があった。
そこで平成16年度の入れ替え時に、成績や順位表と連動した生徒名簿データ、学納金などを一元管理ができるシステムとして大学向けシステムを導入。しかし機能が多様で複雑なため、カスタマイズや保守費用が高額であるという課題があった。
現在のシステムに移行したのは、システム入れ替え時の平成23年度だ。
同校仕様に柔軟にカスタマイズ対応した校務支援システム「スクールマスター」(ウェルダンシステム)を導入した。
特殊な成績算出を柔軟にカスタマイズ
中嶋教諭は「学校の成績算出方法は特殊なため、こういうものが欲しいと要望しても、伝わりにくい面があったが、柔軟なカスタマイズが可能な点が良かった」と語る。
アフターフォローもリモート接続による迅速な対応で、活用もスムーズに移行。
現在、教員は評価対象となる素点を「入力するだけ」で成績処理には一切関与しない仕組みだ。
複雑な成績換算処理は自動化され、最終的な成績算出は、専任の教職員が「情報作業室」で行っている。
中学・高校の入試時から卒業までの成績の変遷を追うことも容易にできるようになり、データの一括管理が可能になった。
平成25年度からはこれに加えて、各帳票の電子化も推進。データの改ざん防止と真実性の保持のため電子署名機能などを導入した。
なお指導要録・調査書はPDF保存とともに、年度末には紙にプリントアウトして保存している。
課題もある。システムのバージョンアップ時のデータ移行、タブレット端末との連携、セキュリティの確保、データ数の肥大化による処理速度の低下だ。教員の校務処理負担は減ったものの、運用のさらなる効率化が求められていると語った。
【講師】豊島岡女子学園中学校・高等学校 中嶋淳教諭
【私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2016年7月25日】
【2016年9月5日】
1、神奈川県立横須賀大津高等学校・島武彦総括教諭/2、桜丘中学・高等学校 本田和義教諭
3、豊島岡女子学園中学校・高等学校 中嶋淳教諭/4、東京都立町田高等学校・小原格指導教諭
5、和光中学高等学校・小池則行教諭
関連記事