「第41回 全国学校図書館研究大会 富山・高岡大会」が8月8~10日、富山県民会館とウイング・ウイング高岡で開催された。2年に1回開催される本大会に、司書教諭、学校司書ほか学校図書館関係者、公共図書館司書や学校図書館に関心のある1300人が全国から参加した。大会テーマは「これからの学校図書館をデザインする」。会期中は講演会・シンポジウム・研究討議など、約130の分科会が実施された。その一部を紹介する。
主催=(公社)全国学校図書館協議会、富山県学校図書館協議会
共催=富山県教育委員会、富山市教育委員会、高岡市教育委員会
東京都立鹿本学園は、肢体不自由教育部門・知的障害教育部門併置校として、平成26年4月1日に開校した。学校図書館の蔵書数は約6000冊。図書購入(年間約20万円)と、団体や教員の寄贈等も活用している。絵本が半分以上を占め、準ずる課程の中学・高校生向けの調べ学習をする図書が不十分、という状況ではあるものの、新しい図書が増えてきた。江戸川区立中央図書館からの団体貸出も活用。1回60冊借りることが可能で、年8回利用できる。
学校図書館は、肢体・知的で共通利用する館内のほか、広い廊下を活用したオープンライブラリーもある。オープンライブラリーでは全ての本を面出しし、配架を定期的に変えることで、目新しさを出している。
貸出には、児童生徒の実態に合わせて、バーコードシステムを導入。300円程のバーコードリーダーとフリーソフトを活用。電子化することで貸出カードへの記入が不要で、貸出数や利用統計もとることができる。電子化への移行の際には、作業学習で取り組んだほか、保護者にボランティアを依頼し、図書館の理解啓発にもつなげた。
高澤昇太郎教諭によると「知的障害のある子供は公共図書館に行くことは少ない」という。本を破いてしまうのでは、と心配するからだ。学校図書館は、児童生徒がのびのびと本に触れられる場になっている。肢体不自由教育部門では、家庭への持ち帰りを推進している。
学校経営計画では学校図書館の活用について、全校で取り組むことが明記されており、教職員が積極的に読書活動を推進。読書能力の発達段階と選書を、前読書期・読書入門期・初歩読書期・多読期に分けて明確化。児童生徒は段階的に読書活動を体験することで、読書活動が習慣化した。
読書習慣をつけるための取組の1つに「読書推進月間」がある。読書カードにシールを貼り、読書の成果が目で見てわかるようにし、誰でもチャレンジすれば表彰される機会も設けている。期間中、小学2年生のある児童は、2か月で77冊借りて1位に。海の生物などに興味を持ち、ひらがなが読めるようになった。
貸出数は、平成26年度が年間5270冊だったが、29年度は1万1500冊まで増加した。特に小学校低学年の利用率が高い。オープンライブラリーでは小学校2年生の友達同士で「貸して」「どうぞ」といったやりとりをする事例、小学校3年生が友達と一緒に本を読んだり、好きな本を絵で表現したり、といったようすが見られる。また自閉症スペクトラム障害の男児が学校図書館で電車の本を読むことで落ち着いたり、皆と一緒に本が読めるようになったケースもある。本田桂子教諭は「学校で本を借りるのは“友達”がキーワードになっている」と語る。
情報教育の要として学びの環境を整える<第41回 全国学校図書館研究大会 富山・高岡大会レポート>
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年9月17日号掲載