10月17日に第43回教育委員会対象セミナーを大阪・CIVI研修センターで、11月2日に第44回教育委員会対象セミナーを札幌コンベンションセンターで開催した。大阪で開催された講演内容を紹介する。次回、第45回教育委員会対象セミナーは、12月6日に東京・KFCホールで開催する。
芦屋市教育委員会学校教育部打出教育文化センター・幸谷省吾主査 |
兵庫県芦屋市(小学校8校・中学校3校)は、平成24年度に校務支援システムを導入した。平成23年度末の段階で、全校全教室に校内LAN、教員1人1台の校務用PC、資産管理システム、職員全員の電子メールアドレス、シンクライアントシステム、常駐ヘルプデスク(外部委託2名)等、整備しており、校務に関する学校情報環境の整備は進んでいた。その一方で、成績処理や名簿管理のシステムがなく、自作の帳票の利用や業者テストの付随ソフトの利用など、学校ごとに対応が異なっていた。
そこで、授業準備や子供たちと向き合う時間の創出と小学校のデータを中学校でも有効活用することを目的として、各種帳票類を作成する事務処理を標準化・効率化する市内統一システムの導入を決めた。具体的には、学籍管理、出欠管理、成績管理(通知表、指導要録の電算化)のシステム化を行った。
システム選定の大きな基準として①導入後の変更が容易であること②入力が簡単なこと③ブラウザ利用でPCへのインストールが不要であること④導入時に学校の負担が少ないこと⑤ネットワークブート型シンクライアントシステム内で作動すること、などを評価項目として精査。システムの細かい内容については、現場の教員のヒアリングも行いながら検討し、導入システムを選定した。
校務支援システムが稼働したのは平成24年8月から。夏休み前に管理職研修、夏休み中に市内全小中学校で操作研修を実施。年度末処理については管理職研修を再度実施した。システム保守業務はヘルプデスクが実施(メーカーによる技術支援)。導入当初は問い合わせの電話が殺到し、ヘルプデスクがフル稼働状態で、人的支援がなければ現場の負担増になる可能性もあったと語る。
平成28年度に市が教職員対象に行ったアンケート調査によると、校務支援システム導入の結果、1人当たり平均で年間75時間分の業務削減を実現した。通知表や指導要録作成の時間短縮や、転出入処理や中学校への進学処理の簡略化により、子どもと向き合う時間の確保、教材研究の時間確保、部活指導の時間確保などの効果を生み出すことができた。
システム導入時に入念に検討しておけばよかったこととしては、①利用を想定する機能をすべて盛り込むべきだった②関係課との調整を密に行うべきだった③校務支援システムを用いて成績処理を行うことを徹底すればよかった-の3つを挙げた。中でも①について「導入段階では、より見通しを持ってシステム構成を検討する必要があった」と振り返る。
同市の現在の主な課題としては、年度末・年度当初システム運用上の処理の徹底、利用規則の徹底、学校保健関連等の機能追加整備などがあげられた。幸谷氏は「在宅ワークなど、どこからでも校務支援ソフトを利用できるような環境を実現したい。ただ、業務量そのものが削減されるわけではないため、業務改善の観点からは課題は残る。また、教員1人1台のタブレットPCを配備し、学習指導、評価、校務(出席管理)などと連動させたい。システムを運用しながら業務を見直し、機能の拡充を図るサイクルを確立させることが大切」と語った。
【講師】芦屋市教育委員会学校教育部打出教育文化センター・幸谷省吾主査
【第43回教育委員会対象セミナー・大阪:2017年10月17日】