3月29日に第39回教育委員会対象セミナーを岡山・岡山コンベンションセンターで開催した。当日は約80名の参加者が、ICTの整備や活用方法の講演に熱心に耳を傾けた。29年度の教育委員会対象セミナーは、7月4日の東京・KFCホールから、京都、岡山、大阪、札幌、岡山、名古屋、金沢で開催する。セミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
岡山市立旭竜小学校 延堂雅弘校長 |
岡山市立旭竜小学校の延堂雅弘校長は、校務支援システムの導入と活用を円滑に行うための工夫を報告した。
延堂校長が新見市立高尾小学校在任時、同校が平成22年度「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」事業に採択され、各教室に1台の電子黒板と、児童1人1台の情報端末が導入された。当時、機器の導入に教員が戸惑っていたのを目の当たりにしており、同じことが校務支援システムの導入にあたっても起こると想定していたと語る。
「今まで教員は、成績処理などの校務を、自分たちで工夫したり業者のソフトなどを使って自分たちなりのシステムを作って、それなりに何とかしていた。そんな彼らが校務支援システムを活用するためには、導入時の工夫が必要だ、と感じた」
そこでシステムの導入に当たり、学校が現在抱えているリスクや課題を明らかにした。たとえば教員の勤務時間は、諸外国と比較して長い。ストレスによる教員のパフォーマンスの低下、教員を志望する学生の減少、教員の自己肯定感の低下などもある。したがって教員の働き方を変え、ワークライフバランス(WLB)を見直すために、校務のあり方を変える必要があることを明確にした。これにより、教員がシステムの必要性に納得。スムーズな利用につながった。
職分明確化で責任感
リーダーとなる教員の存在も大切だ。指名だけして後はお任せ、ではうまくいかない。学校CIOなどのステイタスを持たせることで、責任感が生じる。
導入初期には、新しいシステムの構築作業、初期データの処理などの作業が発生するが、ここをクリアすれば業務が軽減され、システムもうまく稼働していくというビジョンを示し、未来がイメージできる様にすることで、乗り越えることができる。
教員が校務支援システムを使うにあたっての不安を軽減するには、簡単なものや効果がすぐにあがるもの、さらに教員の得意な分野から利用する「つまみ食い」を勧めている。
システムでできることから始める「つまみ食い」
学校毎に利用法をカスタマイズする中で、その利便性に教員が気付くこともある。本校では、職員室に大型テレビを設置し、校務支援システムのスケジュール管理画面を投映している。これにより、毎朝、スケジュールを黒板に記入する必要がなくなった。
研修などの機会を捉えて、書類のフォーマットを統一するなど、他の校務についても見直すきっかけになる、というような利点を広く訴えることも大切だ。
管理職の意識改革も重要。校務支援システム導入の有無は、情報を保守する等の管理者の危機意識の有無を表していると言える。
校務支援システムにより、教員1人ひとりが守られた環境の中でより高いパフォーマンスを発揮できるようになった。さらに、校務の見直しをすることによって、改めて教員自身の生活やキャリアを見直すきっかけになった。
【講師】岡山市立旭竜小学校・延堂雅弘校長(現・岡山市教育研究研修センター指導員)
【第39回教育委員会対象セミナー・岡山:2017年3月29日】