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教育ICT

【リーディングDXスクール】吉田町立住吉小学校「自ら進める学びは楽しい」

2023年11月8日
リーディングDXスクールで「学びの質」を高める
1人1台端末は整備した。日々活用も進んでいる。しかし、学びの質が高まっている実感がない――今まさにこの段階にいる学校も多いのではないだろうか。ここをどう解決していけばよいのか。リーディングDXスクールである吉田町立住吉小学校(岩本幸子校長・静岡県)と座間市立中原小学校(田中恵子校長・神奈川県)では、探究のサイクルで教科学習を進めることで学びの質を高めている。

 

リーディングDXスクールとして町内全校を指定して進めている静岡県吉田町教育委員会(小学校3校・中学校1校)では、児童生徒の学びの姿や教員の課題提示の方法が初年度と大きく変わりつつあるという。10月11日、吉田町立住吉小学校(岩本幸子校長)の様子を取材した。同校は学校情報化優良校に認定されている。

 

授業では、どのクラスも単元やその日の計画をGoogleClassroomで児童の端末に配信しており、その日のポイントを板書しているクラスも多かった。

■文章題作成に挑戦

1年算数では「5+2-3」の式になる問題作りに挑戦。+(プラス)を表す言葉、(マイナス)を表す言葉を共有してから各自で問題を作成した。児童は端末を持ち寄って嬉しそうに自分で作成した問題を見せ合っており、自ら創造することの充実感を感じているようだ。

■「やることリスト」で安心して学習を進める

たんぽぽ3組算数でもその日の「やることリスト」をClassroomに配信。児童はそれに沿ってドリルやプリントに落ち着いた様子で取り組んでいた。

■共有課題に迫る個人課題を作成

5年国語「たずねびと」では、共有課題を「どうして夢にポスターが出てきたのだろう」と設定。個人課題は各自が作成している。個人課題作成のポイントを「共有課題を達成するためのもの」と位置付け、情報収集の場として、教科書本文やチャット、共有ドライブに上げた教材などを提示。共有課題を思考ツールで整理している児童、他の児童の進捗を確認しながら進めている児童などそれぞれだが集中して取り組んでいた。

6年算数「いろいろな箱の体積」でも「どうして公式が成り立つのかを説明する」「四角柱と三角柱を求めてスライドにまとめる」「問題を解く」等、個人の学習課題を考えていた。各自の学習課題を考える際には、途中で友達の課題や進捗状況を確認している児童もいた。

■教科書をもとに学習内容をまとめる

6年社会「武士の政治が始まる」では全体課題を「『元との戦い』は幕府にどのような影響を与えたのか」に設定。単元の目標や「貴族や暮らしの変化を比較する」「武士と政治を関連付ける」「資料から問いをみつけよう」等のポイント、情報収集や整理・分析の方法や今後の流れをClassroomに提示。児童は関連動画や教科書を見たり、「元軍と日本軍の戦い方」を比較してまとめたり、日本と元とのつながりを考えたり、元との戦いの流れを考えるなど様々な切り口で理解を深めていた。

この1年で大きく変わった
岩本幸子校長

岩本幸子校長

岩本幸子校長

教員はこの1年で大きく変わりました。
1人1台端末導入当初は、授業改善のためにと伝えても「何をどうすれば良いのかわからない」という雰囲気で、前向きとはいえないものでした。ところが指導助言や提案授業などをきっかけに、ほんの少し「授業改善の視点」を取り入れることで子供の様子が変わったのです。「授業中の活動が増えてつまらなそうな顔をしている子がいなくなる」ことで授業変革への意欲が高まり、端末を活用した日々のチャレンジを共有しながら切磋琢磨しているところです。日々、学校目標「自ら考え、やり抜く子」に迫っていると感じています。学習観を変える必要性に納得できればその後は早いと感じています。タイピング練習は2年からですが、自主的に行っている1年生もいます。

全教職員研修会を年4回実施
吉田町教育委員会 平井奉子指導主事

吉田町教育委員会平井奉子指導主事

吉田町教育委員会
平井奉子指導主事

PCPC室のみで端末も電子黒板もWi―Fiもなかった本町ですが、GIGAスクール構想を契機に、一気に環境が整いました。

最初の成果は「どのクラスも端末を使った授業を行うようになった」ことでした。

しかし、ペア活動もグループ活動も、自ら行うものではなく、教員の指示があって行っており、一番忙しいのが教員でした。

端末を使うだけでは学びに変化は起こらない。そこで「1人で学ぶ力を鍛える」ことにスポットを当て、子供に委ね、自己決定の場を増やすことを今年度の目標として全校で取り組み始めました。

■過渡期は短いほど良い

授業改善にたどりつくには過渡期がありますが、過渡期は苦しいもので、短いほど良いと考えています。そこでなるべく一気に進めたいと日々学校訪問をしたり、全教職員が参加するChatで発信したりしています。

中でも大きな柱となっているのが、昨年度からスタートした「全教職員研修会」です。

1校が全クラスの授業を公開し、他校の教員は全員参加。クラウド上で共有している授業案には学びの過程や子供のふり返りなどを全て投稿し、これまでの流れを理解して本時を見ることができます。事後研修では、授業見学中にChat上に書き込んだ意見や質問について意見交換をし、アドバイザーである佐藤和紀先生(信州大学准教授)の講評を得るという研修会を年4回行っています。

校務でクラウド活用を日常的に行っていることでその良さを実感でき、授業研究にもつながっています。職員用学校サイトには部会資料などすべてオンラインで共有し、非同期で討議しています。

中学校はまだまだこれからのところもありますが、小中のつながりを意識し、吉田町全体で授業改善の輪を広げ、今の小学生が中学生になるまでには「自ら問いを持ち解決する学び」「子供1人ひとりが忙しくなる授業」等を実現したいと考えています。

Chat活用で学びが活性化
研究主任 杉田直隆教諭

研究主任杉田直隆教諭

研究主任
杉田直隆教諭

昨年度は取組にバラつきがあったことから、今年度は3つのテーマ「個別最適・協働的な学び」「自ら問いを持ち解決する学び」「子供1人ひとりが忙しくなる授業」について全教職員でチャレンジするため、5月にGoogleChat活用を中心に提案授業を行ったところ、高学年からChatをうまく使った授業ができ始めています。Chatによりこれまで心に留めていた疑問や感想を発信できるようになり、互いの意見を大事にする雰囲気が生まれています。現在はどの教科でも探究のサイクルを意識して全教職員が同じ方向を向いて取り組んでいると感じています。

「整理・分析」の方法については課題を感じていました。そこで学習指導要領に記載されている「比較して考える」「分類して考える」「序列化して考える」「関連付けして考える」を意識するようにしています。次の段階として、学びの本質に迫る課題やサポートを強化したいと考えています。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年11月6日号掲載

 

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