GIGAスクール構想による配備でみどりの学園に導入した情報端末は1600台以上あり、設定には多くの時間が必要でした。しかし、子供はすぐに使いたいのです。少しでも手伝おうということで、設定用の紙を1台ずつ端末に挟み込む準備までは子供が行ったのですが、高学年の児童がその内容を見て、「自分たちでも設定がしたい、できると思う」と言うのです。
そこで、トライすることにし、子供はわくわくしながらやっていました。失敗してもやり直せば良いと考えました。経験は自信につながり、6年生は自分たちの設定が終わった後、他の学年の分も設定していました。困っている人がいれば助けるという考えからです。このようにフレキシブルに対応していかないとこれからの時代は乗り切っていけません。
最近の新しい概念「Web3.0(ウェブスリー)」は、集約されたインターネット環境から分散型の環境に切り替えることを意味しています。組織のリーダーがプロジェクトの方向性を決め、引っ張るという従来の組織体系ではなく、アメーバ型組織でメンバーの1人ひとりが、それぞれの役割の中で、この時はこの人がリードする、このテーマではこの人が引っ張っていく等の役割分担を前提とすることを意味します。ここでは、自分で動くことができる人間、自分の言葉で発言できる人間が必要です。そういった経験を子供たちも積むことが重要です。
端末活用で進む双方向性の授業はその機会の1つになります。
つくば市では心の問題を大事にしたいという思いがあり、朝の会で今日の調子をニコニコボタンやイライラボタンを押すことができるようにしました。すると心の中では悩んでいることも把握できます。「先生あのね」という仕組みで、Microsoft Formsで作りました。
先行して端末が配備されたみどりの学園の教員から、こんな仕組みがあったら良いという声を反映して作成したもので、教育委員会が他校に広げていきました。
他国では、授業時間や教室内での利用以外にも、例えば自宅でどのような時間に学習しているのか、子供が保健室を利用している際にどんな授業が平行して行われているのかなどを分析して心の問題に迫っている例もあります。
マイクロソフトでも自分の気持ちをスタンプや言葉で表現・投稿する仕組み「リフレクト(Reflect)」の提供を開始しており、国内で好事例も出てきています。Microsoft Teams上で使用することができ、気になる子供にメッセージを送ることもできます。
学習面でのデータ活用についてはいかがでしょうか。
つくば市では2003年に初めてCAI型PCを導入して理解度に応じた学習内容を提供する仕組みを検証していました。データを見ると、理解の早い子と遅い子では、解く問題の順番が異なることがわかりました。
これを分析できれば効率良く進めることができるのではないかと考えていました。それが今、AIによりデジタルドリル等に実装されています。今後は、問題が解けたか否かではなく、どのような解き方をしたかによって出題内容が変わるという仕組みも実現すると良いですね。
つくば市の取組には歴史がありますね。
GIGAスクール構想ではデータ活用が重要な目標の1つとされており、マイクロソフトもここを積極的に支援したいと考えています。
教育委員会の方とお話しする時、端末を導入する際に、蓄積したデータをどのように蓄えて、見える化し、活用するかについてご相談をいただきます。当社が提供しているDynamics(ダイナミクス)365教育版では、出席情報や成績・行動・成果等のデータの見える化ができます。
GIGAで大きく変わった点は、生徒が授業の中で端末を使った活動内容がすべてデータ化され、ビックデータとしてクラウド上に蓄積される点です。これらの膨大なデータを解析して一定の傾向を見つけるには、人間の力以外のツールが必要です。今後はデータに基づいた教育方法のサポートをしていきたいと考えています。
その一方で、データ活用には、危険もあります。子供たちがやったことは意識していてもいなくても、デジタルデータとして残ります。それを意識できるようにすること、見るべき人だけが見ることができるということが可能な環境としていかなくてはなりません。データの置き場所、データの管理の仕方というものに注意を払って最も安全なソリューションを選んでいただきたいと考えています。
デジタルデータの特性を学び、どう活用していけば良いのか。それを子供自らが学べる仕組みは今後、一層重要になりそうです。
次のページへ