第86回教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想ICT機器の整備・活用」を2月15日、名古屋会場とオンラインのハイブリッドで開催。
2020年度まで文部科学省初等中等教育局教科調査官を務めていた鹿野利春教授は、現在、文部科学省視学委員(STEAM教育)として、高等学校「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の周知や教材作成に携わっている。
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「情報Ⅰ」は小中学校からの積み上げから
国立大学協会は「情報Ⅰ」は大学教育を受ける上での基礎的能力であり、2022年度中には入学者選抜における「情報Ⅰ」の活用について公表するとしている。大学入試に向けて今後、「情報Ⅰ」の準備をどうするか。発展的な専門科目である「情報Ⅱ」をどのように高等学校で展開するのか。
「情報Ⅰ」は、これまでの教科「情報」と何が変わったのか。
これまで「社会と情報」「情報の科学」であったが、これを両面とも取り入れると共に構造も整理。「情報デザイン」「プログラミング」「データ活用」というツールを使って「問題の発見・解決」を行うこととしている。
小学校では各教科等で、中学校は各教科及び技術・家庭科の中で「情報デザイン」「プログラミング」等を扱うこと。これが「情報Ⅰ」につながる。
さらにこの学びを大学での学びに連携するようにしている。例えば、情報Ⅰ「情報社会の問題解決」では、中学校までの「統計」(ヒストグラムや四分位数、標本調査等)を活用して思考・判断・表現する。
「情報デザイン」は、抽象化、可視化、構造化すること。Webサイトやポスター、プレゼンテーションはすべて「情報デザイン」であり、「情報デザイン」は、PCの理解やプログラミングと組み合わせて取り組むことができる。美術のデザインとは異なり、論理的な思考や構造化がより重視され、ノイズを除いてわかりやすく伝えることであり、コミュニケーションと密接な関係にある。かつ、すべての基礎になるものだ。話をわかりやすく伝える、文章を論理的にまとめるには「構造化」が必要だ。
大学入学共通テストのサンプル問題を見ると、すべての問題が、プログラミングやデータ活用などバランスよい出題で、問題発見解決を問うようになっており、学習指導要領を踏まえた内容であった。
情報Ⅰを他教科と連携するカリキュラム・マネジメントも考える必要がある。
「情報Ⅰ」はデータ活用に関して「数学Ⅰ」と連携でき、法律やモラル等に関して「公共」と連携できる。情報収集やデータ分析等も様々な教科と連携できる。「情報Ⅰ」を学ぶことであらゆる教科の力を伸ばすことができ、受験対策にもなる。学校におけるデジタル関連の活動を活発にすることも重要だ。
なお小中学校における各教科の連携については「解説」に詳細を記している。
「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」を担当する教員については教員を確保しつつ、生徒自ら学ぶことができるようにする体制つくりが重要である。そのためにも管理職教育がポイントになる。これは教育委員会の役割である。
「情報Ⅱ」は発展的な内容でレベルが高いと感じるだろうが、将来的にはすべての国民が学んでほしい内容である。難解すぎるという声もある。そこで現在、「情報Ⅱ」を教える教員に向けて動画教材を制作中だ。
既に「情報Ⅰ」の研修教材は提供済。「情報Ⅰ」の研修教材を学んでおけば「情報Ⅱ」の研修を進めることができるようにする。【講師】京都精華大学教授・鹿野利春氏
【第86回教育委員会対象セミナー・名古屋:2022年2月15日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年3月7日号掲載