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教育ICT

【学習用デジタル教科書・小学校算数】「点対称」の理解が深まり実社会とのつながりに発展~富士見町立富士見小学校

2021年11月1日
学習用デジタル教科書特集

教員用端末としてWindowsPCを、児童生徒用端末としてChromebookを配備している長野県富士見町教育委員会では、国の事業に加えて町予算で、全小中学校(小学校3・中学校1)に算数及び数学の学習者用デジタル教科書(+教材)(新興出版社啓林館)と指導者用デジタル教科書を導入している。富士見小学校の松倉利和教諭に、端末やデジタル教科書の活用について聞いた。

実感を伴う理解で話し合いが深まった

■児童自ら動かして格段に理解しやすく

 11台の学習者用端末は202012月から、指導者用デジタル教科書は20214月から、学習者用デジタル教科書(+教材)5月から活用が始まり、学びの環境が一気に変わった。

これまで使ったことがない教員が多かったものの、指導者用デジタル教科書は、主に導入場面でよく活用されている。

学習者デジタル教科書については、6年生の単元「対象な図形」から始めた。

すごい、と思ったのは、これまで十分な理解が難しかった「点対称」について理解が深まったこと。「180度回転して同じ形」であることが点対称の概念だ。正方形や円のほか「N」が点対称の代表だ。これを、1人ひとりが学習者用デジタル教科書で実際に回転して確認できる。これまでは教員が黒板などで実物を使って演示していたが、児童自ら動かして観察する数学的活動ができるようになり、格段に理解しやすくなった。

■確かな理解で話し合いが活性化

図形をゆっくり動かしてもルーローの五角形をはさむ平行線は少しも動かない

興味深かったのが「三つ葉のクローバー」で、これは120度回転すると「同じ形」になる。これについて、「回転してぴったり重なる合同な図形になるので点対称だ」「点対称は180度回転する必要があるので異なる」等、実際にデジタル教科書を子供が使い、図形を操作しながら活発に点対称な図形といえるかどうか議論が進んだことは、これまでに見られない展開であった。

4年「垂直・平行と四角形」の活用問題でも、図形を動かすことで理解の進捗が見られた。

平行線の間にあるルーローの三角形を回転しても、2本の線は、微動だにしない。しかしこれが正三角形だと平行線はガタガタ動く。それを各自のデジタル教科書で操作をしながら体験。児童は、繰り返しじっくりと観察して理解したり、ピンときて発見したことを伝え合ったりすると感動し、それは教員の教材研究の手応えにつながる。

同様に、ルーローの五角形も体験。やはり平行線は動かない。この性質を利用した仕組みについて、すぐに各自の情報端末で検索。自転車や自動車のエンジンの部品、お掃除ロボットなどに利用されていることがわかり、各自の発見を積極的に報告し合っていた。振り返りでは「ルーローの七角形はどうなんだろう?」と問いが生まれた児童がいた。各自が体験によって得た感動が、実感を伴った理解や知的好奇心の高まりにつながり、数学的な見方・考え方の育成や実社会とのつながりによる確かな理解が進んだようだ。算数・数学については、特に図形領域や関数領域で学習者用デジタル教科書の積極的な活用が進みそうだ。

■宿題が変わった

本校では、10月第1週までに情報端末の全学年持ち帰り体験が終わり、端末を持ち帰った学習が始まろうとしているところ。既に一部の学級では先行して行っている。

5年「単位量あたりの大きさ」では自分なりの説明を「デジタル学習カード」に記述する宿題を出し、情報端末でClassroom上の学習カードに記載。ある子は、学習カードに手書きの説明図を撮影してアップする、ある子は、端末内のツールで図表を直接書くなど、デジタルスキル育成のきっかけにもなっている。授業では、スプレッドシートを使って、互いの説明にコメントし合ってからグループで話し合い、ベストアンサーを決めて全体で共有していた。

宿題のもつ価値やねらいが変わり、「問題解決の見通しをもつ」「授業時間内の対話的な学びの時間を十分に確保する」ための予習としての宿題が今後、増えそうだ。

■県の加配教員として全校のICTを推進

松倉利和教諭

松倉教諭は、長野県の加配教員として、町内の全小中学校のICT推進を担当し、授業作りを支援している。低学年の担任から「手書き入力の方法を知りたい」、音楽科の教員から「Googlemeetで音楽鑑賞したい」、養護教諭からは「アンケートでフォームを使いたい」等、様々な質問が届き、各校へ説明に赴いている。

各校の授業にも参観し好事例を町の情報教育委員会・学力向上委員会で積極的に共有している。

富士見小学校の5年生は総合的な学習の時間で「みんなの食育プロジェクト」を立ち上げ、生産者を取材したり、野菜の栄養を調べて発表資料にまとめ、給食の時間などに全校に配信。プレゼンテーションスキルや調べる力が確実に向上しており、それを視聴する他の児童も、こうした学びをしたいと知的好奇心を高めている。松倉教諭は「ICTを楽しんで使うことから始め、11月以降は、授業のねらいを明確にして授業と評価をつなぐ授業改善に取り組みたい」と話した。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年11月1日号掲載

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