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教育ICT

個別最適な学びには学習目標の個別化が必要<東京学芸大学・高橋純准教授>

2021年7月6日
オンラインセミナー・GIGAスクール構想 1人1台端末の活用と管理

5月20日、教育家庭新聞社主催オンラインセミナー「GIGAスクール構想1人1台端末の活用と管理」を開催した。端末の運用・管理を円滑に進めることで、教員負担を軽減すると共に、個別最適な学びに役立つ活用についても討議。協賛はアイキューブドシステムズ。同社は端末管理システム「CLOMO MDM」を提供している。


■最初に何から着手するのか

東京学芸大学・高橋純准教授

東京学芸大学・高橋純准教授

全国の小中学校にほぼ一斉に端末が配備された。条件は同じように思えるが、長年にわたりICT活用を継続してきた地域と、これまでまったく行ってきていない地域とでは、児童生徒のスキルや学校の日常的な感覚、学習習慣や規律、自治体の体制等様々な差があり、先進地域の事例をそのまま真似してもうまくいかないことがある。1つひとつ障壁を取り除いていく必要がある。「最初に何に着手すればスキルが育まれ、学びがスムーズになるのか」を考えていかなければならない。

まず、児童生徒の文字入力スキルは重要だ。スキルが低いと操作に時間がとられて学びに取り組むことができない。また、情報を収集して分類、整理する等「考えるスキル」をICTと結び付けるか否かも成果の速度を左右する。

教員研修のオンライン化は、大人にとってもその利便性を実感しやすいものだ。研究授業を動画配信することで、授業についてその場で話し合ったり授業者が解説したりすることができる。連絡のデジタル共有で朝礼に必要な時間や朝、保護者からの電話伝達が不要になった例もある。児童生徒も同様に、委員会活動や係活動でWeb会議システムを使ったりチャットで意見交換をしたりなどの利用から始めてはどうか。スキルが育まれると、対話や協働的な学びがスムーズに進む。

■チェックリストで定期的にスキルを測定

本学の研究室では「情報活用能力チェックリスト」を公開している。

文部科学省「情報活用能力の体系表例(2019)」のステップ13(小学校段階を想定)に基づき、児童生徒が定期的に回答、時間経過による学習経験の向上を把握できるようにした。学期に1回程度のチェックによりレベルアップを測定して可視化できる(jkc-admin.takalab.jp/)。

また、文部科学省「StuDX Style」では、現場教員が中心となって「慣れる」「つながる」等の活動が整理されている。この事例で気づくことは「授業指導案」ではなく、「授業場面」における汎用的な活用が掲載されていることだ。作品を共有してコメントをつける、アンケートを作成してすぐに可視化して授業の導入に利用するなどすべての教科や活動で利用できる。

ICTを何に使うか

ICTを何に使うのか。この時、最初から「授業で効果的にICT活用する」と考えないほうが良い。現在の授業は紙や黒板に最適化されている可能性がある。そこを本質から見直す必要がある。1人ひとりがよりよく学ぶためのICT活用と考えるべきである。それが「個別最適な学び」につながる。

学習場面においてICT活用は「反復・習得」「問題解決学習」「連絡・データ共有・保存・蓄積」に分類される。特に3つめのイメージに対する理解や経験が乏しい傾向がある。「連絡・データ共有・保存・蓄積」については、これまでの校内の共有サーバによるファイル共有ではなく、クラウド前提の活用だ。この経験がないと「クラウド利用禁止」に陥りやすい。だからこそ教員の校務におけるICTを活用した経験が生きてくる。

校務用PCしかない、それが学習指導に活用できない学校の場合、その運用を考え直すこともあり得る。

学習目標が同一の場合、個別最適な学びよりも一斉指導の方が効率的である、という面もある。個別最適な学びには、個別の学習目標が必要なのである。まずは「振り返り」が重要になる。振り返りに慣れ、それぞれ自分の目標を立てられれば、1人ひとりが自分なりの課題意識をもって学ぶことができる。その1人ひとりの学びの見取りを11台端末で支援することができる。

■デジタル化の便利さ 校務や業務で体験する

中教審答申では「新学習指導要領の着実な実施とICTの活用」が強調されており、個別最適な学びや協働的な学びは2020年代を通じて実現すべき姿と示されている。また、校務において、押印の見直しを始めとして連絡手段のデジタル化の確実な実施も文部科学省から通知されており、GoogleフォームやMicrosoftTeamsの利用が増えている。ICTの授業活用をスムーズに進めるためには校務や業務で教員がデジタル化やクラウド共有の便利さを体験することが最初の一歩になる。3月に文部科学省がまとめた「全国の学校における働き方改革事例集」には、PCから直接印刷したり、オンラインで連絡や教材を共有したり、アンケート等日々の連絡や朝礼等日々の会議をオンライン化するなどの例が示されている。

■本質的な学びへ

何を使って学ぶのか、が重要なわけではなく「見方や考え方を働かせる本来の学び」をどう実現するのかが重要。クラウド活用や11台端末は、整理や調べ方、伝え方に選択肢が生まれ、これまでの授業のあり方を見直すきっかけになる。最終的に、子供自身が判断して使い分けができるようになることだ。

【オンラインセミナー・GIGAスクール構想 1人1台端末の活用と管理:2021年5月20日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年7月5日号掲載

 

    1. 東京学芸大学・高橋純准教授
    2. 熊本摂津市教育委員会学校教育課・宗木俊憲氏
    3. 【討議】個別最適な学びも働き方改革もMDMで効率的に運用・実現する
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