創立36年目を迎える常総学院高等学校(茨城県土浦市・櫻井富夫理事長、玉井尚良校長)では、教員の採点業務を、ICTを活用して効率化することで「働き方改革」を進めたところ、大幅に時間の短縮が図られ、授業やテストの質の向上にも役立っているという。同校教育学会会長の青栁隆雄教諭に導入前の課題と成果を聞いた。
同校は生徒数1893人・全54クラスの大規模校だ。進学校かつ野球部や吹奏楽部を始め部活動も盛んで全国大会等出場も多く、教員は年々多忙化していた。
ある年の高校2年の担任時は部活も担当、校務分掌は進路指導と特別活動、さらに中堅教員として教育実習や授業参観担当など様々な業務に加え、長男が誕生したことか多忙を極めるなど、教員の「働き方改革」が喫緊の課題となった。
青栁教諭によると、以前は18時から21時まで、一部持ち帰り仕事として保護者対応や教材研究を行っていた。採点業務については、5クラス約200人を担当する教員の場合、定期テスト1回につき25時間を費やしていた。定期テスト年5回とすると計125時間、日数にして約15・6日間にもなる。
そこで生徒・保護者の満足度を保ちつつ持ち帰り仕事を少なくするため、可能な限りICT化を検討。定期試験を含むテスト作問・採点業務のICT化を進めた。なおその他の主な校務の保護者連絡などはすべてICT化済。
テスト作問・採点業務のICT化で採用したのは「デジらく採点2」(スキャネット)だ。
同校の理科教員が同社の「スキャネットシート」(マークシートを自動採点・集計できるシート)をセンター試験模試などに活用しており、その使い勝手の良さから複数教科で活用していたこともあり、同社の記述式問題にも対応できる「デジらく採点2」導入に至った。
「デジらく採点2」は記述式テストを一般のスキャナーで読み取り、自動で採点・集計・分析ができる。手書き文字も自動で認識。部分点にも対応する。通常の試験・定期テストだけでなく入試でも活用可能だ。
本システム導入後は、採点業務が大幅に短縮。採点時間は25時間から7・5時間に減少。テスト作成時間などを含めるとトータルで1回の定期試験につき約21時間の短縮を図ることができた。午前中のテストはその日のうちに採点を終了。短時間で採点できるため、採点基準がぶれないというメリットも生まれた。
持ち帰り仕事がほぼなくなり、分析・フィードバックにも時間をかけられるようになった。
クラス別大問別得点率やその過回比較など、平均点のみではわからない部分も分析。得点が下がった場合、努力不足なのか問題の難易度によるものかなどもわかり、テスト作問や授業改善につながった。青栁教諭は「本システム導入により、教員のテスト作問に対する意識が変化し、それに伴い授業内容の構成も変わった。時間の改革には、教員の意識改革が求められる。すると教員自身の生き方も変わる。これが成功すると、生徒のやる気の向上や保護者の満足度も高まる。それが真の働き方改革である」と語った。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載