1月25日に第37回教育委員会対象セミナーを福岡・天神クリスタルビルで、2月8日に第38回教育委員会対象セミナーを名古屋・名古屋国際センターで開催した。次回、第39回教育委員会対象セミナーは、3月29日に岡山・岡山コンベンションセンターで開催する。セミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
春日井市教育委員会 学校教育課 前川健治指導主事 |
「第2期教育振興基本計画」(文部科学省)における教育用PCの目標値は1台あたり3・6人だが、愛知県は約8人と目標値には遠い。春日井市も同様だ。そこで春日井市では基準を達成するため、情報端末などの追加導入を継続して実施。現在、PC室のPC更新に合わせて各校10台程度の情報端末を整備中で、3年目を迎えた。また、平成28年度に学校統合した、市立藤山台小学校には200台程度の情報端末を整備。高学年で1人1台の環境が実現した。
情報端末を普通教室で活用するための無線LAN環境整備にも着手。市の普通教室LAN整備率は10%程度と、全国平均の26・1%を下回っていたが、情報端末整備に合わせて各学校の教室にアクセスポイントを設置。市がコントローラーで管理している。
情報端末活用に平成23年度から取り組み、先導的な役割を果たしてきたのが出川小学校だ。同校ではすべての教員が一斉授業の中で自然にICTを活用している。同校の成功の要因は、ICT導入前に「学習規律」を整えた点が大きいという。「情報端末などの導入によって授業が変わることを期待するのではなく、普段の授業がしっかりと行われているからこそ、情報端末の特性を活かした授業改善を円滑に進めることができる」と語る。
教育ICTは導入後に教員が負担を感じることなく使えるように、段階的に、そして計画的に整備と準備を進める必要がある。「その要素の1つが情報モラル教育。10年以上前から取り組んでいるが、社会情勢の急速な変化に、指導内容も対応する必要がある。特に近年はSNSに関するトラブルが拡大する傾向だ。こうした子供を取り巻く現在の環境を大人が把握していないと、何が起こっているか、起ころうとしているのかが分からず、適切な指導を行うことができない」
今まさに何が起こっているのかを理解するために、校内研修は本来、随時必要だ。しかし市の調査結果によると、研修を実施している学校は、約半数程度。その理由は「時間の確保が困難」なことにあった。そこで春日井市では8年前から、「事例で学ぶ Netモラル」を全小中学校に配備。「情報モラル教育に自信を持てない教員もいる。そこで、一定レベルの指導を保障するため、事例が豊富で最新情報も随時更新されるような教材で、情報モラル教育を実施できるようにした」
この教材を使った研修やワークショップも実施。教員がワークショップで盛り上がりながら体験することで、学校に実践を広げている。
現在学校でよく使われている教材は、小学校では「ルールやマナー」「メールで伝える」「ネットいじめ」などコミュニケーションの基本が多い。中学校では「著作権」「不適切な書き込み」など、より現実的な内容にシフトしているという。
情報モラル教育には、家庭の協力は欠かせない。しかし同市の調査によると、学年が上がるほど、保護者との間にインターネットを利用する際のルールが決められていない割合が増え、ルールがあっても使用時間のみというケースが多い。親は約束したつもりでも、子供は約束した覚えがないという親子間のズレも見える。
ンテンツの違法ダウンロードや情報漏えいなど、子供は今、罪の意識なく加害者、犯罪者となり得る状況にある。これらについて、学校からの配布資料で知ったという保護者も多い(「青少年のインターネット利用環境実態調査」内閣府)。旬の情報提供が学校に期待されていることがわかる。本教材では保護者配布向けの資料を随時提供しており、学校は「まさに今」の情報を提供しやすいと語った。
【講師】春日井市教育委員会 学校教育課・前川健治指導主事
【第38回教育委員会対象セミナー・名古屋:2017年2月8日】