1月25日に第37回教育委員会対象セミナーを福岡・天神クリスタルビルで、2月8日に第38回教育委員会対象セミナーを名古屋・名古屋国際センターで開催した。次回、第39回教育委員会対象セミナーは、3月29日に岡山・岡山コンベンションセンターで開催する。セミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
浜松市立三ヶ日西小学校 菊地寛教諭 |
菊地寛教諭は児童の興味を引き出した上で、学習目標を達成するための情報端末活用を意識して授業デザインをしている。
6年生の学級活動で、児童が協力して作詞・作曲に取り組み、自分たちの「学級歌」を完成させた。国立教育政策研究所は「リズムを作ったり、歌ったりして音楽で表現すること」が音楽の授業の課題と分析している。そこで学級歌を作る中で、音楽で表現する楽しさを知ることを活動のねらいとした。
教員が呼びかけただけでは、子供の気持ちは動かない。そこで、他校の学級歌づくりの事例を紹介して、自分たちも学級歌を作りたいという気持ちが起こるようにした。
歌詞づくりは「クラスの思いを児童が共有する」ことを目的に設定。小学校6年間の思い出、今のクラスの思い出、自分たちの未来の3部構成で歌詞をまとめることに決定。グループごとに、歌詞に入れたい言葉を書き出し、曲のイメージをふくらませた。
作曲では、情報端末と歌声合成ソフト「VOCALOID」を活用。これは歌詞を入力して、それぞれの音の高さや長さを指定できるもの。歌声で再生して気になる音を修正、試行錯誤を繰り返しながら作曲に取り組んだ。菊地教諭は「検証しながらPC上で音を調整する作業は、プログラミング的思考につながる」と語る。
浜松市内で同様に学級歌を作っている学校と、Skypeによる交流も実施。1回目は自己紹介、2回目は歌詞紹介、3回目で完成した学級歌を披露した。学校交流を通して、自分たちのクラスを客観的に見ることができ、制作過程で大いに役立った。学級歌を作るうちに、卒業式で歌いたいとの声が児童から上がった。菊地教諭は「児童が自ら『歌いたい』と言い出すのを待っていた」と話す。こうして完成した学級歌を披露し、思い出に残る卒業式となった。
5年理科では、「卵の変化の様子や水中の小さな生物を調べ、動物の発生や成長について考えを持つことができるようにする」を学習目標にメダカの飼育・観察を行った。
菊地教諭がクラスの水槽でクロメダカの飼育を開始。児童が「メダカに卵を産ませたい」という気持ちが芽生えるようにした。メダカの飼育方法や観察方法を調べるため、デジタル教材「NHK for School」からいくつかの動画を情報端末で視聴できるように用意。顕微鏡の操作方法を視識した児童が、操作している児童にアドバイスする姿も見られた。メダカについての認識が「小さくて川にいる魚」程度だった児童が、授業後は産卵方法を細かく記録するなど記述量が飛躍的に増えた。「グループ1台の情報端末により、児童1人ひとりの学習内容の理解が深まった。ICT活用で重要なのは授業デザインである」と語った。
【講師】浜松市立三ヶ日西小学校・菊地寛教諭
【第38回教育委員会対象セミナー・名古屋:2017年2月8日】