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学校施設

SOSを見逃さない 学校のきょうだい児支援~小児科医 湯浅正太氏に聞く

2021年7月19日

きょうだい児の支援プログラム代表も務める 湯浅正太氏

病気や障害のある子供の、健康な兄弟姉妹は「きょうだい児」と呼ばれる。きょうだい児は、家庭や学校生活の中で悩みや葛藤を抱え、時にはそれが心の不調として現れることがある。彼らやその親への支援として学校に必要なこと・できることは何か…本紙6月21日付に続き、千葉県・亀田総合病院小児科医の湯浅正太氏に聞いた。自らもきょうだい児で『みんなとおなじくできないよ』の著書を持ち、同院でシブショップ(きょうだい児のための支援プログラム)の代表を務めている。

きょうだい児が、病気/障害を持つ兄弟姉妹(同胞)と別々の学校に通っていたり、自ら進んで話をしない場合、その悩みは周囲には分からないかもしれません。

きょうだい児は同胞との生活を通して独特の悩みやストレスを抱えており、それを学校生活への不適応といった形にしてSOSのサインを出すことがあります。

例えば感情のコントロールが上手くいかず、不安になったり周りに当たり散らす、物事に集中できず学業成績が悪化する、といった具合です。

学校では何ができるでしょうか。

まずはきょうだい児特有の悩みを理解し、SOSのサインを見逃さないようにします。

きょうだい児自身は、どうして自分が上手く生活できないのか理解できません。それを叱責されてしまうと、自己肯定感が低下し、事態はさらに悪化する。叱責ではなく、子供の行動や変化をSOSとして受け止めて欲しいのです。

また、きょうだい児自身があるがままを受け入れられるように導くことも重要です。さまざまな悩みや、同胞を愛する気持ちと不満が混ざった「グチャグチャな気持ち」になるのが当たり前である、と肯定するのです。現状をありのままに受け入れられるようになることで、きょうだい児自身に将来へ向けた視点が生まれます。

絵本『みんなとおなじくできないよ』(=写真)が、親や友達にきょうだい児への理解をうながすだけでなく、学校の先生が彼らの気持ちを引き出しやすくしたり、気持ちを受け止めてくれる身近な存在として先生を感じられるようになる、そのための一助にして頂ければと思います。

親に対して学校でできることはありますか。

病気/障害のある子供の親は、心の余裕が奪われてしまうケースがあります。しかしそうした状況であっても「親がきょうだい児に愛を注ぐ」ことが実践できるように協力してあげて下さい。これが最も大事なことで、必ず有効な「きょうだい児支援」に結びつきます。「親が愛を注ぐ」ことは彼らの人生すべてに影響を及ぼすからです。

具体的には、きょうだい児という視点で普段から注目し、何か変わったことがあれば、学校での様子を親に伝えます。それをきっかけに同胞ときょうだい児への支援を調整する機会につながるかもしれません。時には自治体や病院へ相談するよう促して頂くことも大切です。

友達との関係についてはいかがでしょう。

『みんなとおなじくできないよ』
湯浅正太/作 石井聖岳/絵 日本図書センター/刊

クラスの友達が同胞やきょうだい児について理解し、自分とは違う境遇を受け入れられる心を持つことで、きょうだい児が生きやすくなり、彼らが社会に対する希望も持てるようになります。先生方にも、クラスの友達をそうした方向に導いて頂きたい。

私自身は、身近な友達が皆、私の味方でした。同胞と一緒に遊んだり、優しい声をかけてくれました。親も傍にいてくれました。そうした中で私は次第に、弟は皆と同じようにできないことがあるけれども、人として大事な、純粋なものをしっかり持ち続けていると気付けたのです。

きょうだい児は成人すると、家庭と社会で大きな役割を果たします。家庭では親亡き後の同胞を支え、社会ではその発展に貢献する貴重な人材として活躍します。彼らが健全に育つことは、大きな意味を持つのです。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年7月19日号掲載

悩む「きょうだい児」を絵本で支援  “ひとりじゃないよ”と伝える~小児科医・湯浅正太氏に聞く

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