デジタル教材を効果的に活用する研修も行う |
平成22年度のICT絆プロジェクト(総務省)に採択され、先進的なICT環境整備と利活用の牽引役として実証研究を進めてきた佐賀市立若楠小学校(音成隆校長)。成果と課題を整理する中で、これからの教員にとって必要なICTや情報活用能力の研究に着手している。校内研修の様子を取材した。
ICT絆プロジェクトでは、3学年分の学習者用タブレット端末や普通教室の電子黒板、指導者用デジタル教科書などが整備された。当時の研究担当だった内田明教諭は「機器やシステムは十分に整備されたが、教師のICT活用能力の充実を図りながらの研究であった。そのため相応の労力と時間を要した。機器やシステムなどのICT環境は当時としてはベターだったと思うが、現在の活用から考えると改善の余地がある」という。
活用の規準を明確に
過去の実証研究という積み重ねがあっても、人事異動により顔ぶれも変わり、新たにチャレンジする教員は常に存在する。これは公立学校の宿命だ。大切なのは「何のためにICTを活用するのか」という目的を共通認識すること。同校では、授業者が本来目指すべき「授業改善や児童の学びに寄与しているか」を一つの基準としている。
速効性を高める活用法を研修 |
カメラ機能を効果的に活用する |
使わないという選択も
今年度は、教師1人1台のタブレット端末を配備。教員が常時活用できる環境で研究をスタートさせた。絆プロジェクトの端末から機種・OS共に新しくなったため、基本操作から習得する必要がある。
教員全員がまず習得したのは「カメラ機能」だ。撮影した写真や動画を教材として授業中に提示する。写真の活用法も、何枚かを比較して見せる場合と、1枚の写真から多くの気づきを引き出すことで思考を深める場合など、授業場面の意図に沿っているかを重視。その際の即時性や簡便性、確実性を高めるために、電子黒板に接続するHDMIケーブルを常備。体育館に超短焦点タイプのプロジェクターを常設するなど、ICT環境の改善にも着手している。
ネットワークやデジタル教材の活用も、授業の意図と沿わないと考えた場合は使わないという選択もする。
過去の経験があるからこそ自信をもって判断できる部分だ。
教員のICT活用力 情報活用能力を探る
即時性や簡便性、確実性を重視したシンプルな活用も重視しつつ、情報化社会に飛び立つ児童に対して指導する教員に求められるICTや情報活用能力を明らかにしたいと取り組んでいる。
この日の研修会では参考資料として「情報活用能力育成モデルカリキュラム(※)」を配布した。これに例示された段階的な到達基準に照らし合わせて再確認し、教員が体系的に身につけることも必要だと考えている。
音成隆校長は「いつでもすぐに使える環境やスキルも必要だが、教員自身が日々活用することでより高い能力を身につけることにも期待したい。そうした準備が、児童生徒への確かな指導力や、将来的な1人1台の情報端末の効果的な活用につながっていくのではないか」と話す。
先進的な実証研究を経験したからこそ見える教員に必要な能力。その研究成果に期待したい。
(※)JNK4(情報ネットワーク教育活用研究協議会)とICTプロフィシエンシー検定協会により作成・公開
【2015年8月3日】
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