連載 教育ICTデザインに想いを込める

【第4回】教育センター方式で新たな学びと伝統<同志社中学校>

新しい学びと伝統を両立

同志社中学校 図書・メディアセンター
図書・メディアセンターで英語の授業

岩倉具視の率いる岩倉使節団の通訳としてアメリカ・ヨーロッパ8か国の教育制度の調査や視察を行った新島襄が、帰国後の1875年(明治8年)に同志社英学校を設立。それから135周年の記念事業の一環として移転し、新校舎を建設した同志社中学校。iPadの導入などICT活用に関して注目されている同校の学習環境について図書・情報教育部の反田任教諭に取材した。

新校舎で実現した教科センター方式

2010年夏に国立京都国際会館に隣接する新キャンパスへ移転。新校舎では「教科センター方式」を採用した。「自由・自治・自立」の精神に基づく生徒の「参加型の学び」と「教科の専門的な学び」を一層強化したいという想いからだ。

メイン校舎である「立志館」は、図書メディアセンターを中心に、各教科のゾーンで構成。教科専門教室には電子黒板などのICT環境が常設され、教材の準備などに利用されている。各ゾーンの「メディアスペース(MS)」と呼ばれる空間には、教科に関連する資料や書籍、生徒の研究発表などが掲示されている。MSの近くに配置された「教科ステーション」には、教科担任がおり、生徒は授業時間以外でも気軽に相談できる。

自由・自治・自立のノーチャイム

技術課の旋盤
科学科の旋盤の授業
ラクダのはく製
理科メディアスペースの剥製
数学科 展示物
数学科メディアスペースの展示物

「ホームベース(HB)」は生徒用のスペースで、自由にクラスの雰囲気を創り共有できる場所だ。休み時間、生徒はHBを中心に生き生きと自由闊達に活動している。

校内はノーチャイム。HB内の時計や、校舎内11か所に設置されたモニターに掲示される時間割を見ながら行動する。授業の時間には、ロッカーから教科書などを持って教科専門教室へ移動。建学の精神「自由・自治・自立」が根付いている様子が見られる。

細部から学びへ

iPad等ICTの積極的な導入・活用で知られる同校。1、2年生の全員がiPadを持ち、授業で当たり前に活用しているが、豊かな学習環境はICTだけではない。

4万冊超の蔵書と約50台のPCが用意された図書・MSには「メディア記録用紙」がある。書籍やインターネットを利用して調べた内容を記録するための用紙だ。書籍の場合は、著者名・書名・出版社・発行年月日・参照したページを記入。インターネットの場合は、参照URL、タイトル、アクセス日を記入する。さらに「情報の信頼性」について◎◯△×を選択。研究発表やレポート作成などで情報を引用した場合は、メディア記録用紙も添付し提出する。著作権や情報活用について、生徒自身の活動の中で学ぶ機会を提供するための仕掛けだ。

「ほんもの」に触れる

理科MSには、長年にわたって収集された剥製や標本が陳列されている。カバやラクダなど博物館並みの教材が手の届く場所に置かれており、好奇心や研究心をくすぐられる。

技術室では、2年生が金属塊を旋盤で削り、ドライバーを製作していた。削った後は夢中になって研磨する。本物の材料や工具を使用することで得られる学びを大切にしていることが伝わってくる。その他、ネイティヴ教師による生きた英語の授業や、京都大学の研究室見学など「ほんもの」に触れ、知的好奇心や探究心を育む環境が数多く用意されている。

より良い環境を追い求める姿勢に同校の伝統が息づいているようだ

 

【2015年7月6日】

 

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