「未来輝く人成教育」を目標に掲げ、「30歳を見越したキャリアデザイン」を第一に「社会を生き抜く力」「夢を叶える力」「成功する力」などを育む私立博多高校。iPadが国内で発売されると同時に整備へ踏み出した。先例がない中でどのように環境構築に取り組み、どう活用していったのか。導入当初から担当している村上道彦氏に聞いた。
寺子屋を目指して
出席簿システムを独自に開発 |
教員間の連絡にiPadを活用 |
以前より、教師1人に生徒40人の授業ではフォローできない部分を、江戸時代の寺子屋のような教師1人が少人数に対応することを模索していた博多高校。平成22年1月にアメリカで発表されたiPadを知り、これならば映像や音声などをインタラクティブに活用してきめ細やかな指導に活かせるのではと考え、導入を決定。「今でこそiPadの導入学校は増えているが、当時はiPadが何かもわからない状況。双方向の授業を活性化するためのツールとして効果を期待し導入を決定した校長の先見の明を感じる。実業界出身だからこその感覚だと思っている」と話す。
iPad100台で教師の負担を軽減
iPadが国内で発売されると同時に100台を導入。右も左もわからない状況だったが、とにかくやってみようという姿勢でスタートした。
先ずは教員の負担軽減を1つの柱とし、出席簿システムの開発に着手。一度の入力で集計や教務システムへの反映を実現し、手間や誤記を削減。同時に、朝礼などの連絡業務に必要な情報をiPad上でファイル共有できるシステムを整備。今では職員会議の資料はすべてiPadで閲覧できる。
その他、職員間の連絡にFaceTime(iPadやiPhoneで利用できるTV電話機能)を利用するなど、教師の負担を軽減する環境と日常的な利用を促す雰囲気が作られていったそうだ。
1000台を繋げる
教材研究でもiPadを活用 |
充電保管庫 |
無線LAN環境の構築が一番の課題だった。職員会議で教師が一斉にファイルサーバにアクセスした際にスムーズに利用できること、将来的に生徒1人1台となった場合に約1000台が常時接続できることを想定し、ネットワーク環構を設計した。
整備当時は先例がほとんどない状況。提案を諦める業者もあったそうだ。信頼できる業者を選定することにも苦労したという。
セキュリティ面の対策や、授業中の障害にも素早く対応するために集中管理方式の環境を構築。周辺の住宅から飛来する電波の影響も考慮した無線LANの管理など、一つひとつ課題を解決しながらネットワークインフラの構築を進め、現在は全く問題なく稼働しているという。
ハードルを下げる
様々な課題を解決した結果、多くの教師が普段の授業でiPadを活用している。
自作の教材をAppleTV経由でプロジェクターから黒板に投影したり、受験対策アプリを活用したり、それぞれの学習に応じて使い分けているそうだ。
これまでは教科書中心の内容だったが、時事情報などを活用するなどリアルタイムな情報も取り入れやすくなり、教師の意識も変わってきていると感じている。
教師の負担にならないよう「便利で活用しやすい」「ストレスが生じにくい」環境を実現し、乗り越えるハードルを下げたことが、活用を促進させている。
教師の経験を活かす 生徒1人1台へ
今後は、全生徒へのiPad導入を計画している。村上氏は「先ずは学級連絡などで活用しホームルームの時間を短縮するなど、生徒自身が無理なく活用できる部分から取り組みたい。iPad導入後に教師が経験したことをベースにすることで、より良い授業、より良い活用の実現を期待している」と話す。
先例に頼らず自ら道を切り拓く。これからの生徒に必要とされる力を体現している事例だ。
【2015年6月1日】
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