連載 教育ICTデザインに想いを込める

【第2回】すべての教師が毎日活用するために <千葉県柏市立柏第二小学校>

”ICT活用基礎体力”を向上

平成26年度に普通教室のICT環境整備を終えた千葉県柏市立柏第二小学校。すべての教師が毎日活用するために、どのようなICT環境を求めたのか。またICT環境に加え、管理職としてどのようなマネジメントを心がけているのか。教頭の佐和伸明氏に聞いた。

千葉県柏市立柏第二小学校

ICTは本当に普及したのか?

柏第二小学校に赴任する前は研究校や教育委員会でICT活用の普及・活用を推進する立場にいた佐和氏。ある時「本当に普及し、活用されているのか?」という疑問が湧いてきたという。文部科学省が毎年調査している「学校における教育の情報化の事態等に関する調査結果」によると、教員が授業中にICTを活用して指導する能力の全国平均は70%未満にとどまっている。十分に普及・活用したと言い切れない状況が続いていると捉え、その原因を考えるようになったそうだ。

 

欠けていたものは?

プロジェクター
プロジェクターを常設
スクリーンの取り付け金具
スライドレール型の取付金具
千葉県柏市立柏第二小学校
日常的な活用へ

柏市は、ミレニアムプロジェクト(※1)における平成17年度の目標を全て達成するなど、以前からICT環境を整備してきた地域だ。その後10年が経過し、どう変わったのか。

普通教室にPCが整備され、インターネットが利用できるにもかかわらず、前出の調査において柏市の結果は80%にとどまっている。100%に近づけたいが近づかない。そこで数のみではなく「使いやすい環境」を主眼とした整備に着手した。

3分30秒を消す

平成24年度当時、教育委員会に在籍し整備を担当していた佐和氏は「普通教室で使いやすいICT環境」として、プロジェクターの常設整備に着手。最もこだわったのは「教室のどこにプロジェクターを常設すればよいか」という点だ。

教師はそれぞれ授業スタイルが違う。教科や授業内容によって板書の位置や流れも異なる。それらを尊重するために、黒板の上部をスライド移動ができる設置方法(※2)と「湾曲黒板への投影面補正機能」を実装した機器を採用した。(※3)このことで、教室に機器を持参していた時代に事前準備に要していた約3分30秒が不要となり、誰もがすぐに、自分のスタイルで活用できるICT環境へと進化した。

マネジメントで授業改善へつなげる

柏第二小学校が目指すICT活用は「すべての教師が使う」「毎日ちょこちょこ使う」ということ。そのためには教師が必要感や納得感を感じることが重要。触れながら試行錯誤する校内実技研修を行い「思ったより簡単」「自分にもできる」といった実感を持つことから始めている。

その他、指導者用デジタル教科書等コンテンツの充実や、きめ細い研修や支援もあり、導入後3か月後の調査では9割超の教師が「ほぼ毎日活用する」状況になった。

佐和氏は「指導案を用いた校内研修や、授業を公開し他者に見られる機会を設定している。それは、授業をより良いものへ進化させて欲しいという想いから。そのことが、タブレット端末の活用など次のステップに対応できる、ICT活用基礎体力のある教師の育成につながると考えている。管理職としてマネジメント視点をもって関わっていきたい」と話す。

(※1)平成17年度目標としてPC室42台、普通教室に各2台、特別教室等に6台を整備し、児童生徒数5・4人に1台を目指した。また、全ての小中高等学校等からのインターネット接続、校内LANの整備も目標として掲げられた。(※2)青井黒板製作所のプロジェクター取付け金具(壁面スライドレール型)を採用。(※3)日立の超短焦点プロジェクター(CP‐AW3019WNJ)を採用。

 

【2015年5月4日】

 

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