連載 教育ICTデザインに想いを込める

【第1回】書くことを進化させるICT環境 <京都光華中学校・高等学校>

電子黒板を中心としたICTを活用した授業実践に取り組んでいる京都光華中学・高等学校。同一校舎にある小・中・高校の各教室には黒板がなく、中央に大型の電子黒板が設置され、その左右をホワイトボードが挟み込んでいる。細部を見ると随所に利用者への配慮が見られ、日常の活用を第一に考えられていることが分かる。この環境をデザイン(設計)した竹中章勝教諭に、その意図やこめられた想いについて聞いた。

京都光華中学校・高等学校

リスクを排除する

黒板を撤去して中央へ電子黒板を設置し、左側のホワイトボードは固定設置にした。右側に設置したホワイトボードは上下にレールを取り付けている。電子黒板を覆うようにスライドさせることで、一面のホワイトボードの様に利用することもできる。その際、左右のホワイトボードに3センチメートル程度の隙間が出来るように、レール内にストッパーが取り付けられている。ホワイトボードで子供たちが指を挟まないための配慮だ。また、不意なスライドを防止するために鍵もかけられる。利用者に不要なリスクを負わせないように、危険性を取り除いている。

環境のアフォーダンス

電子黒板は、87インチのアクティブボード(英国Promethean社製)を採用。この大きさにしたのは、小柄な教師が立ち位置を変えずにメニュー操作や書き込みを行うためだ。一歩踏み出したり背伸びが必要だと、日々の利用にストレスを感じ、活用が低下する原因に繋がる場合もある。いつでも、だれでも、気軽に活用するための配慮だ。

隙間で指をはさみにくく
隙間で指を挟みにくく
スライド防止のカギ
スライド防止の鍵
構造化されたノート
構造化されたノート

アクティブボードを採用した一番の理由は「書きやすさと追随性の高さ。黒板の板書並みの書き心地は、アクティブボードの特徴」と話す。

電子黒板のツール操作や電子ペンでの書き込みなど、利用者のストレスが少ない環境では、自然と機能を生かした活用が進む。このように環境が行為を促すことを「環境のアフォーダンスが優れている」という。

なぜ電子黒板なのか?

学習のめあてなど、授業の中で常に見せたい情報はホワイトボードへ、その時々で見せたい情報は電子黒板に表示する。板書との併用は電子黒板を活用する上で大切なポイントだ。場合によっては提示するだけ=プロジェクターなどでも良いだろう。

では「電子黒板でなければならない」というのは、どういう場面か。

竹中教諭が担当する高校の情報科の授業では、電子黒板上に電子ペンで書くことで進んで行く。電子黒板に書いた文字をオブジェクト化して縮小・移動させ、空いたスペースに新たな文字を書き込んでいく。書かれた文字を電子情報として操作できる電子黒板にしかできない活用法だ。

オブジェクト化された文字情報はブロックを積み上げるように整理され、生徒は授業内容の「構造」に気がつく。ノートには、学習内容が構造化されて描かれるようになる。竹中教諭は、そこへ積極的にイラストや注釈を書き込むように指導。このような授業を繰り返してくうちに、生徒のノートは学習内容を構造的に整理し、情報の関連性を視覚的に表現したものに変わっていくという。

生徒のノートが進化

紙のノート上で視覚的に構造化し関連付けられていく情報。それはまるで美しく整理されたサマリー(要約資料)のように見える。

竹中教諭は「このノートテイキングは、ある生徒のノートから着想し洗練させ、今に至っている。自分に教えるためのノートテイキングを意識させたい。教えることができる=学んだ知識を理解しているということ。4月当初はワークシートを使ってノートテイキングの内容を意識させる。慣れてくると、白紙の方が自分なりの整理がしやすいという生徒も出てくる。こういうノートの書き方は初めてだった、こういう考え方を知らなかった、という生徒が多い」と話す。

子供たちの安全性への配慮、利用者の効果的な活用を促す環境のアフォーダンス、情報を構造化し関連づけて理解していくノートテイキングを促す電子黒板の活用。この他にも、トラブルを極力減らすメンテナンス上の工夫など、この事例から学ぶことはとても多い。

 

【2015年4月6日】

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