特集:特別支援教育と障害支援
第53回全国特別支援学校長研究大会が6月23・24日の2日間、東京都内で開催され、特別支援教育に係る教育関係者が多数参集した。当日は特別支援に関わる行政説明や学習指導要領との関わりに関する講演、実践事例が報告された。
特別支援の教育行政
丸山洋司文部科学省特別支援教育課長は特別支援行政の現状と課題について、宍戸和成国立特別支援教育総合研究所理事長が学習指導要領の改訂の動向について講演をした。
校内支援体制の整備を早急に
文科省特別支援教育課 丸山洋司課長
丸山課長は特別支援教育の課題について以下7点を挙げて解説をした。▼校内支援体制の整備▼教員の専門性の向上、▼発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援、▼次期学習指導要領に向けた対応、▼高等学校における特別支援教育の推進、▼特別支援学校の教室不足の解消、▼障害者理解・心のバリアフリーの推進、▼障害者差別解消法への対応
インクルーシブ教育システム構築に向けた多様な学びの場を構築するためには校内支援体制の整備が必要だ。そこで、通級指導等の教員加配、特別支援教育支援員、医療的ケアのための看護師配置等の充実や、インクルーシブ教育システム構築事業ほか各種事業の実施を行っていく。現状特別支援学校で72・7%、特別支援学級で30・5%の特別支援学校教諭免許保有率を上げ、すべての教員の専門性の向上を進める。
発達障害の可能性のある児童生徒等の学校生活不適応、二次障害を防ぐ観点を含めた早期からの継続支援や、授業のユニバーサルデザイン化も進める。
高校では通級モデル事業を実施しており、平成30年度には高校における通級指導の制度化が予定されている。
また、自立と社会参加に向けた高校段階のキャリア教育・就労支援充実事業などを進めている。
特別支援学校の教室不足の解消のためには、廃校や余裕教室等を活用した特別支援学校の建物整備に係る補助制度の創設などを行っている。
教育課程を一本化一体化を目指す
国立特別支援教育総研 宍戸和成理事長
中央教育審議会の初等中等教育分科会教育課程部会特別支援教育部会委員でもある宍戸氏は、学習指導要領改訂の方向性について講演した。
特別支援学校では、特に知的障害教育に関わる教科の見直しが中心論題となっている。通級先と在籍級での指導の連続性などをどう担保するかが課題だ。
宍戸氏は、小学校における教科と知的障害の子供のための教科の類似性を指摘。
これを将来的には同じものとして捉えてそれぞれの学習指導要領の中に位置付けて指導することが望ましく、指導方法には知的障害教育の専門性を取り入れた工夫が必要であると話した。
学習指導要領の改訂モデルは、特別支援学校の教育課程に知的障害の場合の教科をケースに応じて加える「改善モデル」、特別支援学校の指導要領に知的障害の場合の教科などを組み入れておく「特別支援学校の教育課程の一本化モデル」、幼小中高の学習指導要領に障害への配慮を組み入れた「学習指導要領の一体化モデル」が考えられる。
「今後は、学習指導要領の一体化モデルへと移行することが望ましい。そのためには、小中学校等における教科指導上の配慮事項の例を困難さごとに明記し、知的障害に関わる教科と小中学校等の教科の連続性への配慮、知的障害に関わる教科の段階ごとの目標の明記の必要性が求められる」と話した。
【2016年8月1日】
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