教育委員会対象セミナー・岡山 ICT機器の整備計画/校務の情報化
教育委員会や学校のICT整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー〜ICT機器の整備と活用・研修」が、3月31日に岡山で開催された。本文中役職・所属は3月31日現在。次回は7月5日に東京で開催される。今年度のセミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
県立岡山芳泉 高等学校 小野政博指導教諭 |
岡山県立岡山芳泉高等学校は、平成26年度の国立教育政策研究所の教育課程研究指定校事業で、数学科が「思考力・判断力・表現力を育成する指導方法の研究」に着手。それを機に、全校で言語活動の強化を目標に掲げ、主体的、協働的な学習の研究に取り組み始めた。27年度は、生徒の主体的な学びがさらに広がり、思考が深まるよう、アクティブ・ラーニングとICT機器の活用を合言葉に授業改善を進めた。
ICT環境の整備ではまず、26年度から2年かけてすべての普通教室30教室に短焦点プロジェクターを設置した。あわせて、AppleTVも整備し、机間指導中に生徒のノートなどを、画面を切り替えて映せる環境とした。
同校のコンピュータ教室は2教室あり、そのうち1教室がWindows40台。もう1教室がWindowsとMac各20台。動画作成など、授業の目的に応じて使い分けている。図書館にはiPadが20台整備され、27年度は各教科や総合的な学習の時間で合計186回、図書館を活用。情報収集や内容をまとめる際には、iPadを2人に1台で活用している。
小野指導教諭は「各教科でICT機器の活用が進み、それが生徒の主体的な学びにつながっている」と語る。
保健体育の表現ダンスでは演技をiPadで撮影して皆で視聴し、動きをチェックしている。マット運動やハードル走でもフォームのチェックに活用している。化学では探究活動で、生徒が興味・関心を持った内容について調べたり、実験したことをまとめ、iPadを用いて発表。探究心を育むとともに、表現力、プレゼンテーション力も高めている。国語では複数の文学作品の読解をグループごとに分担して、その文学作品の魅力についてiPadを用いてプレゼンテーションした。古文を英語に翻訳し、そのプレゼンテーションにも取り組んだ。生物の教員は反転授業にも取り組んでいる。教員が顕微鏡で微生物を撮影して、自作の動画教材「ムービー『血液の循環』〜メダカとミジンコの心臓〜」をインターネット上に投稿し、生徒はそれを家で視聴して、次の授業に臨む。このことにより、学習効果が高まったという。
地域貢献にも取り組んでいる。学校近隣の幼稚園児が描いた絵を元にして、生徒がセリフやナレーションを入れて約10分間のデジタル紙芝居を作成。幼稚園の雛祭りイベントで披露した。
アンケート調査によると、教員の自己評価では、「アクティブ・ラーニングや言語活動を取り入れて授業が深まる取組を心がけている」「ICTを効果的に活用できている」教員の割合は学期が進むごとに増加。生徒も「授業に意欲的に取り組んでいる」、「教科・科目に対する興味・関心が高まった」割合が増加した。
「従来の一斉授業では生徒が受け身になりがちで、これが本校の課題の1つであった。しかし、アクティブ・ラーニングとICTを授業の中に積極的に取り入れることで、生徒に学びに向かう力が身につき始めた。ICTをどの場面でどのように活用すればアクティブな学びが実現できるのかについて考えることで、教員の授業構成力が向上し、教材研究が深まった。このような研究を学校全体として取り組むことでさらに効果を高めていく。ICT機器は、非常に可能性のあるツールである。今年度の取組をさらに充実・発展させ、授業改善を進めていきたい」と語った。
現在、教員用のノートPCは有線接続で1人1台配備されているが、iPadは各教科に1台の割り当てで、今後の整備が課題と語った。
【講師】岡山県立岡山芳泉高等学校・小野政博指導教諭
【第30回教育委員会対象セミナー・岡山:2016年3月31日】
【2016年5月9日】
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