教育委員会対象セミナー・岡山 ICT機器の整備計画/校務の情報化
教育委員会や学校のICT整備担当者を対象に実施している「教育委員会対象セミナー〜ICT機器の整備と活用・研修」が、3月31日に岡山で開催された。本文中役職・所属は3月31日現在。次回は7月5日に東京で開催される。今年度のセミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
西条市教育委員会 学校教育課学務係 渡部誉氏 |
西条市では、モデル校での検証を踏まえ、全ての教職員に普及する体制作り、デジタルとアナログの効果的な使い分け、校務支援システムの導入に合わせた校務改革によって、校務処理や帳票類の簡素化・全国標準化を行っている。
同市の取組は、平成23年3月、日本経済団体連合会(経団連)が実施する「未来都市モデルプロジェクト」の実証地域の1つとして選定されたことから本格化した。25年度から2年間にわたり市立神戸小学校をモデル校として、(1)電子黒板類の設置、(2)校務支援システムの構築、(3)ICT支援員による支援の3つを核に、先進的なICT化の実証実験を行った。
モデル校でのアンケート調査では、多くの児童がICTを使った授業は良くわかると回答。保護者も子供の学習への関心が高まったと感じており、教員もICTを使った授業は効果的だと答えた。
これを受けて平成27年から、「小中学校ICT教育推進事業」を水平展開。電子黒板類の整備とICT支援員の配備は27年度に小学校、28年度に中学校で実施する。27年度には小学校全普通教室と理科室に電子黒板と実物投影機など、音楽室には加えてネットワークオーディオや高音質スピーカーを配置。室内運動場にプロジェクター、特別支援教室には電子黒板とiPadを全小学校に整備。デジタル教科書やデジタル教材なども全小学校に整備。全教職員を対象としたデスクトップの仮想化(2層化)も導入する予定だ。
事務処理時間短縮は年平均96・2時間
青野勝市長自ら地域の行政説明会に出向き、小中学校ICT教育推進事業の説明を行い、市民に必要性を訴えた。
同市では平成23年度より、学校用グループウェアを導入。24年度から教職員に1人1台PCを配備して校長、教頭、教務主任、学校事務職員が利用していた。
現在、教職員は出勤するとPCでグループウェアにログインして教育委員会と学校間の連絡、学校内での情報共有などを確認している。教育委員会から学校に依頼する調査はすべてグループウェアを利用している。
27年度には、現在活用しているグループウェアを使い続けられる校務支援システムの活用を小中6校のモデル校で開始。28年度から全小中学校での利用を開始した。
青野市長からも活用の成果を問われており、モデル校6校のアンケートからは、1年間で教員1人あたり平均96・2時間事務処理の時間が短縮され、全員が転記ミスや重複作業が減少したと思うと回答。86%が子供と向き合う時間が増えたと感じている。なお、時短を実感できた校務は、成績処理、通知表、回覧・調査、指導要録、保健管理、出欠席管理の順番だ。教育委員会も、インフルエンザの欠席者の偏りなど、必要な情報を一元的に管理できる。
同市の取組は22年度に発足した「西条市立小・中学校情報化推進委員会」が中心となって進めており、小学校部会、中学校部会、教育委員会職員数名で構成されている。教育ICTの普及を目的に毎年公募しており、ICTの得意ではない教員も含め例年100名を超える応募がある。
27年度からの新たな取組も始まっている。神戸小学校では「ICTを活用した21世紀型スキル教育実証事業」を2年間の予定で実施。同市で先進的な役割を担ってきた同校で引き続き、電子黒板とタブレットを組み合わせた効果的な学習法、「学びあい学習」時におけるICTの利活用、他校へのアドバイスおよび活用事例の公開など、ICTのより効果的な活用を検証しながら、タブレットの全校展開を目指している。
文部科学省の「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」にも参加。小学校3校が実証校(ほか2つの中学校が連携校)となり、小規模学校の教育上の課題を克服するため学校同士をICTで結び、年間を通じて合同学習等を行う。指導方法の開発や有効性の検証などの実証研究を行う。
さらに4月からは教育の情報化の推進体制を強化。教育長の下に教育CIO(統括責任者)を任命し、校務分野、学校長への指導・助言。授業分野の5名の教育CIO補佐も任命し、小中学校35校での情報化推進を進める体制を構築する。
【講師】愛媛県西条市教育委員会学校教育課学務係・渡部誉氏
【第30回教育委員会対象セミナー・岡山:2016年3月31日】
【2016年5月9日】
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