特集:21世紀型学力とICT活用 ICTを活用した小中一貫教育研究大会<つくば市>

グループ発表
クラゲチャートでグループのまとめを発表
PMIチャート
発表を聞くときはPMIチャートで整理しながらメモ
アクティブラーニング教室で協働学習
アクティブ・ラーニング教室で協働学習
賞味期限などを調べる
お菓子の外袋の写真を拡大して成分や賞味期限などを調べる

つくば市では学校ICT教育を推進してから40周年を迎えることを記念し、11月10日、11日の2日間にわたり、「21世紀の学びを変えるICTを活用した小中一貫教育研究大会」を開催した。つくば市では、客観的思考力、想像力、協働力など今後の社会を生きていくのに欠かせない、つくば次世代型スキル(6種12の力)の育成を目指し、つくばスタイル科など独自の教科を設定している。

つくば次世代型スキルの育成は、15中学校を核とした15学園(小中一貫校)がそれぞれ独自の方法でアプローチしている。

隣接型小中一貫校・つくば竹園学園(つくば竹園東中学校と2小学校)は思考力や読解力、表現力、コミュニケーション力など、発達段階に応じて身につけるべきスキルを教科ごとに示した、教師用「学びのスキル系統表」、児童生徒用「学びのスキル系統表」、「学びのヒントシート」を作成。児童・生徒には毎時間その時間で身につけるスキルを意識させて取り組み、9年間連続した学びを保障・発展。

つくばAZUMA学園(吾妻中学校と吾妻小学校)は、「次世代型AZUMAプラン」を作成。

施設一体型小中一貫教育校・春日学園(つくば市立春日中学校・小学校)では、「つくばスタイル科」や「考える時間」など独自教科を含む授業で、ピラミッド・チャートやPMIチャートなどの思考ツールと電子黒板やタブレットPCを連携。協働学習支援ツールやデジタル教科書・教材も活用する。

こうした各学園独自の取組をICTにより教科、校務の両面で結び、能力・スキル育成を図っている。

たとえば、協働学習ツール「スタディノート」で作ったデジタルノートや児童生徒の作品は、学園内の児童生徒だけでなく、全市の児童・生徒が閲覧できる。全市に設定された学習課題について、メールや掲示板機能で、意見交換・思考共有もできる。教員は全市で取り組む行事などを、校務システムを通じて意見交換・事務連絡できる。さらに、表現力やICT活用力などプレゼン力を測るつくば市プレゼンテーションコンテストや茨城県全域で行われる英語インタラクティブフォーラムが各学園のスキル育成に寄与。いい意味での競い合いで、つくば市全体の能力・スキルの向上につながっている。

筑波大学の樋口直宏教授は「学園という呼称により、学園を構成する学校としての意識が強まり、相乗効果を上げている」と指摘している。

公開授業

春日学園

情報整理で意思決定

家族だんらんのときのお菓子選びについて考える。タブレットPCは4人グループに1台ずつ。教員は、10種類以上のクッキーやビスケットなどの外袋の写真を、児童のタブレットPCに配信した。写真を拡大すると、外袋には、成分表示や賞味期限など様々な情報があることがわかる。そこから各自が比べたいお菓子6種類を選び、ワークシートのマトリクス・チャートで値段、好み、硬さ、栄養、味など自分なりの基準を4つ決めて分類・整理。その情報から「自分が家族だんらんのときに選ぶお菓子」を決め、その根拠を文章化してまとめた。

8年つくスタ
 災害対策会議

つくばスタイル科「災害時に私たちができることは!」では、災害時の避難行動における問題行動について、災害対策会議を展開。2つの課題について4班ずつで話し合う。各班はタブレットPC上にまとめた提言を電子黒板で表示・説明し、それを書記役はホワイトボードにまとめている。発表を聞く生徒は各自、PMIチャートで、それぞれの発表についてのプラス面、マイナス面、改善のアイディアなどを記入。地域の大学生が各2人アドバイザー役として参加して生徒の話し合いを活性化させていた。

9年数学
 相似な図形と比

授業者は、正方形から長方形にパーツを並び替えた課題を電子黒板に提示。この並び替えが起こり得るかどうかを考えるのが課題だ。

まずキャンディー・チャートで、「仮説」を個人で整理。次に、グループに1台配備したタブレットPCに先の図形を配信し、グループ内で考えを共有。各自の考えを班で一本化してタブレットPC上にまとめる。教員は生徒の解答を教員用PCで一覧。2つの図形の「相似比が異なる」ことに気づいた2グループのまとめを提示して、その班の生徒に説明させていった。

9年国語
 知の在り方を考察

生徒は前時までに、テクノロジーを題材に立場の違う2つの文章を比べる読み物教材「テクノロジーと人間らしさ」(黒崎政男)の筆者の主張について、ピラミッド・チャートで根拠(事実)、理由、主張を整理している。

そこから「テクノロジーとの付き合い方」についてボーン・チャートを使って自分の考えをまとめ、その説得力を高めるための表現・要素を意識しながら「21世紀の人類が獲得すべき真の英知」について、電子黒板を使って発表した。

7年学級活動
 話し方を練習

「トラブルにならない話し方」を考えて練習する。教員の提示した会話例から「トラブルになりそうな話し方」「よいと思った表現」についてグループ内で、ピラミッド・チャートで整理。「疑問形を使って優しい言い方をする」「気を使う」など各グループの意見をタブレット上に記入して他の班の内容を共有。学級全体の意見をまとめた。

2年・4年つくスタ
 交流学習・環境学習

小学2年と4年が共同で「みんなにエコ活動を広めよう」をキーワードに「エコ共同宣言」をまとめ、地域の人や家庭に発信する。タブレットPCまたはノートPCは各班に1台。
児童は円状のテーブルを5人で囲み、1台のPCを前に活発に意見を交換。2年と4年という協働授業について聞くと「知らなかったことを学べ、自分の考えに自信がついた」「自分だけでは考えつかないアイディアを共有することができた」という声が聞かれた。

TV会議で話し合い
多久市とつくば市の商業施設についてTV会議で報告し合う
カデンスキーの絵
カデンスキーの絵の一部を拡大して絵の解釈を発表

3年社会科
テレビ会議で学び合い

オープンスペースでは佐賀県の多久市立東部小学校とスカイプを用いたテレビ会議システムでお互いの町の様子や大型商業施設について、調べ、まとめたことを発表し合っている。

その後、多久市との比較を通じてつくばの大型商業施設の特徴や工夫について討論。自分たちの生活との関わりについてタブレット上のクラゲチャートに1人ひとりが意見を書き込み、共有して全体で発表した。

木原俊行教授は「春日学園は学校と学校外組織との関わりが日本で一番整っている」と評価した。

つくば竹園学園

9年社会
 データを比較検討

単元「わたしたちのくらしと経済」で、コンビニの経営者になったつもりで最適な出店場所を考えた。授業者はまず、デジタル教科書を電子黒板に提示し、5か所の候補地の概要を説明して利用客層などのデータを掲示。生徒用学びのスキル系統表から「統計表などを正しく判断するスキルを身につける」スキルを生徒に意識させる。

生徒は、ワークシートに候補地とその理由を記入。その後、グループで話し合った結果をホワイトボードにまとめた。

タブレットPCで9グループが順番にホワイトボードを撮影。それぞれの候補地を「スタディネットライト版」(無償ライセンス)を活用し、電子黒板に一覧で掲示。各グループの考えを比較検討した。

7年社会
 複数の資料を考察

単元「世界の諸地域」で、社会的事象を多面的に捉え、分析・考察する力をつける。オーストラリアの移民政策やアジア系移民の増加に関する複数の資料から、増加の背景について、生徒に考えさせた。
タブレットPCは3人グループに1台。ホワイトボードにまとめたグループの考えを電子黒板に投影してグループの考えを比較、共有していた。

7年国語
 わかりやすくスピーチ

つくば竹園学園では国語科を、思考を鍛える技能教科と捉え、書くスキル、読むスキル、聞く・話すスキルを育成している。単元「わかりやすく紹介しよう 紹介スピーチ」は、コンピュータ教室で授業。授業者は「全体から部分へ」「伝えたい部分を強調する」など評価のポイントを確認し、代表者4人が「スタディノート」で作ったスライドを電子黒板に提示しながら「昔流行った映画」「昔流行ったテレビ」などについてスピーチ。聞き手は発表者の良い点を指摘する。

スピーチ練習では2人に1台のタブレットPCで互いのスピーチを撮影し合い、その映像を見て声の大きさや表情、身振りなどを評価し合う。

 

全学園でプレゼンテーション<つくば輝翼学園谷田部中学校>

低学年のプレゼン
低学年でも堂々とプレゼンできる
おみやげを熱弁する
つくば市のおみやげを熱弁する

つくば輝翼学園谷田部中学校は「つくばのおもてなし」についてジェスチャーを交えながら発表。道路標識について単にローマ字で表記するのではなく、説明を交えて標記していること、日本文化の体験を行っていることなどを紹介した。

さくら学園はつくば市が行う小中一貫教育について、図や写真を効果的に用いながら自身の学校の様子など交えて発表した。

つくば桜並木学園は「今日から君も『Trip Adviser』inつくば」と題し、アグレッシブなジェスチャーを交えてつくばの産業やお土産を紹介。来場者を引きつけた。

つくば紫峰学園北条小学校は昨年、つくば市を中心として発生した竜巻被害の被害状況を図や写真を交えて紹介した。地域ごとに、全壊、大規模、半壊、一部損壊などに分け、ひと目で分かり易い図を作成。日本の竜巻の発生数について、年毎のグラフ、年平均発生数を太字や赤字などを使って、見やすく工夫した。

春日学園は「地球を守ろう」について、高崎しいの木学園は、職場体験について発表。

AZUMA学園とつくば洞峰学園は英語でプレゼンテーション。自身の学校やつくば市の魅力について発表していた。

 

【2015年12月7日】

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