特集:校務の情報化

教育コンピューター等に関するアンケート<校務編>―日本教育情報化振興会

一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)の国内調査部会は、第9回教育用コンピュータ等に関するアンケート(平成25年度)を実施。6月の総会で報告書をまとめた。本調査結果より、学校のネットワーク環境と保守運用、校務支援システムの導入・運用に関する状況と意識をまとめる。調査対象は400教委・2800小学校、1400中学校の抽出。調査によると、校務支援システムに望まれている要件が明確になりつつある。

統合型校務支援システム政令市で導入進む
教育情報のクラウド化ニーズは総じて高い
情報化は学校経営に役立つ・小中連携必要

■中学校で多い自作ソフト活用

学校対象のアンケートからは、校務支援システムの導入は進みつつあり校務支援システムが必要とされているものの、小学校と中学校では活用しているソフトに違いがあり、中学校では自作ソフトの活用と学校での個別ソフトが比較的多いことがわかった。

教育委員会が統一した学校事務・校務支援システムを利用しているのは小学校66・6%、中学校68・4%であり、一定の割合が確保されている。

次いで多かったのが、教員自作の校務ソフトを学校として利用している中学校だ。中学校では30・8%が教員自作のソフトを学校として活用しており(小学校18・7%)、時間割ソフトや保健管理ソフト、成績管理ソフトなどを個別に学校で利用している割合も比較的高い(小学校9・3%、中学校29・9%)。

なお学校独自での校務支援システム導入はそれほど多くはない(小学校13・9%、中学校12・5%)。
一方、小学校においては、学校としての導入はないものの一部の教員が成績処理や時数管理、出欠管理等などのソフトを利用している割合が比較的多い(小学校26・4%、中学校19・1%)。

■自治体規模でニーズが異なる

統合型の校務支援システムを小学校・中学校に導入している割合は、自治体規模によって差がある。

政令市等では43・1%が統合型の校務支援システムを導入しており、現在導入を検討しているのは33・3%。政令市等において統合型システムを導入または検討している割合は76・4%と高い。

市で統合型校務支援システムを導入済みは18・6%だが導入検討中は45・8%。政令市等及び市において、小中学校ともに統合型校務支援システムの導入が今後進んでいきそうだ。

一方、町・村において統合型システムの導入を検討しているのは22・2%、導入予定なしは58・3%と高い。

なお、小・中で異なる統合型校務支援システムの導入は4%以下であり、統合型システム導入の際は小中学校ともに同じものを導入する傾向にある。

■校務用PCの共有は6割以上

校務用PCの導入率については、小学校89・6%、中学校86・3%と高いが、共有して活用する学校も多い(小学校63・0%、中学校63・0%)。この数字から、1人1台の校務用PCが配備されていても、校務支援システムを導入しているわけではないために共有で校務用PCを活用せざるを得ない状況にあることが推測できる。中にはメールアドレスは学校代表のみ、共有PCで受信している学校もあるようだ。

校務用PCの活用そのものは進んでおり、特に成績処理についての活用は浸透(小学校91・9%、中学校98・6%)。保健管理での活用(小学校74・4%、中学校77・2%)、図書管理での活用(小学校74・8%、中学校70・1%)も多い。これらに比較すると出欠管理での活用はまだ低い(小学校47・8%、中学校54・1%)ことから、いずれも個別ソフト、自作ソフト活用、エクセル活用などが多い状況のようだ。

■私物PCが増えた理由は

私物PCまたはタブレット端末等を校務で活用している割合は小学校で20・6%、中学校で29・3%と、低くはない割合であった。タブレット端末の個人活用が増えていることがうかがえる。

個人情報の持ち帰りが許されていないのは、小学校39・2%、中学校40・7%。その都度学校長の許可を得る仕組みを取り入れているのが、小学校49・1%、中学校41・0%。公的に支給されたUSBメモリを利用するのが、小学校39・2%、中学校30・8%。自宅から仕事ができる仕組みを利用している学校(小学校3・5%、中学校3・4%)もあり、それぞれの自治体・学校事情に合わせた運用が行われている。

一方、ルールはあるものの厳密には守られていない場合もあるようだ。持ち帰りルールに関しては、常に守っているのが小学校で69・8%、中学校56・4%であり、「大体において守っている」が小学校26・3%、中学校34・2%。「守らない」あるいは「守れない」理由の検証が必要だ。

■望まれている教委・学校連携

統合型の校務支援システム導入・運用に移行するためには、学校と教育委員会が連携して校務の情報化を進める必要がある。

連携して校務の情報化を進める必要があると考えている教育委員会は、政令市等では96・1%、市では95・0%にも上る。町・村も比較的高く、83・3%が同様に考えている。

学校現場でも同様で、小学校では91・3%が、中学校では85・5%が教育委員会と連携して進める必要があると考えている。

では、都道府県教委と市町村教委との連携についてはどうか。

ある自治体では、統合型校務支援システムを県で統一、その導入は市町村に任せているが、都道府県教委・市町村教委が連携して校務の情報化を進めるべきであると考えている割合は、町・村で最も高く(91・7%)、次いで政令市等(78・4%)。市においては71・2%が連携して進めるべきと回答した。

学校現場では、小学校89・2%、中学校85・1%が連携すべきと考えており、市区町村をまたがった異動先でも同様のシステムを活用したいと考えていることがうかがえる。

■小中連携が求められている

小中学校の制度的な連携が検討されているが、現在、小中連携を含めた9年間の見取り機能を導入すべきであると考えている教育委員会は、政令市等で特に高く、92・2%。市教委でも84・7%が、町・村では75・0%が導入すべきであると考えている。一方学校では、小学校で79・1%、中学校で75・8%が導入すべきと考えており、小中学校連携での校務支援システム導入が求められている。

■学外処理はニーズが高い

校務支援システムなどを活用することで、学校には様々な児童生徒情報が蓄積されていく。その情報を教育委員会が直接取り出すことができる校務支援システムの導入ニーズについては、政令市等及び町・村が特に高い。政令市等では94・1%が、町・村では91・7%が導入すべきであると考えている。同様に学校においても比較的高く、小学校88・8%が、中学校84・6%が導入すべきであると考えている。

また、学校外でも校務処理ができるセキュリティを担保した運用体制について、導入している割合はまだ低いが、ニーズは比較的高い。

政令市等62・8%、市64・4%が導入すべきであると考えている。町・村でのニーズは低い(38・9%)が、小中学校では求められている(小学校73・9%、中学校66・4%)ことから、学校外での校務処理ニーズについては全国一律で考えることはできないようだ。

■情報漏えい懸念市町村規模で差も

校務支援システム導入に伴う情報漏えいについて懸念している割合は、教委よりも学校のほうが高い傾向にあり(小学校62・2%、中学校63・3%)、特に町・村で多い。

政令指定都市では9・8%、市では28・8%、町村においては50・0%が懸念しており、自治体規模によって情報漏えいに対する懸念を抱く割合が大きく異なる。

この理由はどこから来るのか。

政令指定都市等のほうが、校務支援システムの導入に積極的なこと、それにより知識の蓄積があり、何をどうすれば情報漏えいリスクを低減できるかについて理解している割合が高いことがうかがえる。

■国主導でシステム標準化を

校務支援システムの標準化については一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)が積極的に行っている(関連4面)が、これを国が積極的に行うべきであると考えている割合は全体で8割を超えている。町・村では86・1%が、政令市等82・4%が、市では79・7%がそのように考えており、総じて高い。

■校務システム導入のメリット

校務支援システムを導入することで、どのようなメリットがあると考えられているのか。各地区における市教委独自調査などによると「児童生徒と向き合う時間が増えた」という回答が多い印象だが、本調査では「データが蓄積され、学校経営に活用できる」と考えている割合が高く(小学校77・9%、中学校70・4%)、小学校のほうがより高い。中学校では個別ソフトや自作ソフトなどの校務活用が既に進んでいたことから、導入後の変化は小学校のほうが大きかったことがうかがえる。

児童・生徒と向き合う時間が増えたと感じている割合は、小学校で34・8%、中学校で25・9%と、それほど高くはない。導入後何年経過しているのか、どのようなシステムを導入し、どう運用しているかによってこの数値は変わることが予想される。

緊急連絡メールの導入で保護者への連絡・報告が容易となったと考えている割合も高い(小学校76・5%、中学校60・7%)。

導入済みの校務支援システムが学外では活用できない場合が多いことから、持ち帰り仕事ができず、結果学校での仕事時間が増える場合もある。小学校60・1%、中学校では59・0%の教員が、残業などが増えたと回答している。PC操作の時間が増えることで本来の仕事時間が減ったと感じている教員は、小学校で33・5%、中学校で44・2%。中学校では、校務支援システムの導入による負担感を感じる割合が多いようだ。中学校では自作ソフト活用の割合が小学校よりも高く、これまでと異なるシステムに慣れるために時間を要していることがうかがえる。

■ニーズが高い教育のクラウド化

クラウドを利用する際には、校務情報と教材利用は別に考える必要があるが、教育のクラウド化ニーズは小中学校ともに総じて高い。

校務情報のクラウド化を進めるべきであると考えている割合は、政令市等で90・2%、市で86・4%。小中学校も同様で、小学校では81・3%、中学校では76・1%が、クラウド化が必要であると考えている。

教材系のクラウド化ニーズも同様で、特に政令市等で高く(政令市等94・1%、市83・0%)、学校教員においては、特に小学校で高い(小学校87・7%、中学校80・1%)。校務のクラウド化とともに教材のクラウド化が求められている。

校務支援システム

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【2014年7月7日】

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