教育委員会対象セミナー福岡 ICT機器の整備計画/校務の情報化

マルチベンダー保守方式で 着実にICT活用が日常化 校務改善の効果を実感―西宮市教育委員会 星川雅俊氏

市内共通の校務支援システム構築と安定運用 成果と課題

  西宮市では年々人口も子どもも増えており、現在児童生徒数は約4万人、教員数は約2500人。平成15年の地域イントラ基盤整備から始まり、市内全校の校内LANが完成した平成21年度には「学校情報化推進グループ」も新設され、教育の情報化に注力できる部署ができた。

  学校情報化推進事業は平成21年度から。校内LAN整備やデジタルテレビ等提示機器の配備などICT活用によってわかりやすい授業の展開を目指し、丸4年が経過した。教育用PCの稼働時間は導入当初と比較して約3倍に伸びており、着実にICT活用の日常化が進んでいる。

通知表作成時間が平均4時間45分間短縮

  校務の情報化については、教員1人あたりの通知表作成時間が平均4時間45分間短縮、指導要録システムでは平均4時間51分短縮しており、校務改善の効果を実感している。情報漏えいについても一定の効果が見られ、平成21年度以降の情報漏えい事件は着実に減少し、本庁からも評価されている。

  教員のICTスキルアップについてはICTサポーターの派遣や研修の実施で、事業開始後着実に上昇し、現在約8割の教員がICTを授業に活用している。教材研究や情報モラルの指導なども全て全国平均を上回った。

  学校のICT環境の下支えになっているのが、マルチベンダー保守方式の導入と、サポートデスクの常設だ。マルチベンダー方式とは、1業者が複数メーカーの機器等をまとめて複数年保守対応する仕組み。5年弱の契約期間でサーバやネットワークを含むトータルな保守を依頼しており、スケールメリットが期待できる。業者による専用窓口を設け、障害時の切り分け作業に対応しており、PC等メンテナンスは遠隔操作で実施。これにより複数個所での障害発生時も複数のエンジニアが同時に対応できるようになった。

  ネットワークやサーバの保守を円滑に進めるため、過去に学校独自で敷設したネットワークは撤去し、全63校と庁内すべてのバックアップを毎日取得、遠隔管理している。 

  校務支援と教育系のサポートデスクはそれぞれで対応。校務支援サポートデスクは9時から19時まで2名が常駐。マルチベンダー保守担当は1名で9時から17時まで常駐している。

  ICTサポーターはモデル校4校に4名、学びの指導員は全校に配置しており、ICT関係の授業支援や放課後学習をサポートしている。

  校務用PCの稼働率は平成23年度以降96%以上を継続している。現在、掲示板や個人連絡、出席簿、指導要録、通知表、成績管理、テスト処理、進路処理、運動能力測定、学校保健管理、給食・徴収金関係など12カテゴリ26サブシステムを稼働。自己開発とパッケージソフト「EDUCOMマネージャC4th」をミックスさせた。整備には苦労も多かったが、アンケートによると、校務支援システムが役立っている、事務時間の削減につながったと感じている教員はそれぞれ8割超で、指導要録システムについては9割を超えている。

  校務支援システムの導入により「評価基準を話し合うきっかけになり、評価観点がより明確になった」「保護者に説明しやすくなった」「時間短縮によって教材研究の時間が増えた」という声が多い。さらに、導入によって教員のICT活用指導力の向上や情報セキュリティに関する教職員の意識向上、職員会議の電子化の増加、自主的に新たな取り組みが始まるなど副次的な成果も大きい。活用が進むにつれて、電子文書量の増加、保存データ量の肥大化など新たに解決すべき課題も出ており、現在解決に向けた対応に取り組んでいる。

  導入当初はこれまでのやり方をそのまま電子化できると考える教職員も多く、導入後3年ほどはその対応に苦慮した。西宮市ではモデル校なしで進めたが、稼働初年度からの完全稼働は簡単なことではなく、1年間はモデル校での実践をお勧めしたい。また、市教委内部や市長部局との連携の構築、導入効果測定のための定点観察を行い、提示手段も準備もしておく必要がある。(講師=西宮市教育委員会学校情報システム課・星川雅俊課長)

【教育委員会対象セミナー・福岡:2014年1月31日】

【2014年3月3日】

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