【拡がるタブレット端末活用の試み】岡山県・新見市立哲西中学校

“深く考える力”鍛える 協働学習の礎は思考の深化

岡山県・新見市立哲西中学校

考えをシートにまとめる

岡山県・新見市立哲西中学校

デジタル教科書を読み合わせる

岡山県・新見市立哲西中学校

授業支援システムを活用し、皆の意見を紹介

 10月31日、新見市立哲西中学校(岡山県)で「哲西中学校ICT教育公開授業研究会」が行われた。研究主題は「コミュニケーション能力の育成」とし、「ICTを活用した協働的な学習の実践」と「その中で伝え合う力の育成」を中心的な課題としている。

学習者用端末を校内で持ち歩き

  同校の取り組みの特徴は、学校にいる間生徒は、常に端末を持ち歩くように指導している点だ。休み時間の使用も許可し、操作に慣れるようにした。フィルタリングをかけていること、駆動時間の長いiPadが採用されていることから安心して生徒に使用させているという。また、休み時間に自由に使えることから授業中に勝手な使用をすることもほとんどない。

持ち帰りは週2回

  同校では、端末活用から1か月後、家庭への持ち帰りを行った。保護者理解の一助となること、電波状況の確認、家庭での使用の様子を知ることなどが目的だ。

  さらに平成24年度からは定期的な持ち帰りの回数を徐々に増やし、今年度は2・3学年で週2回の持ち帰り日を設けている。持ち帰り日の課題は、授業時間で完了しなかったレポート作成や言語活動など。

長時間使用で成果

  できるだけ生徒が長い時間端末を利用できるようにした結果、操作スキルが向上し、シートに学習をまとめる際などにも工夫が見られるようになった。また、まとめをすることを想定して自主的にメモを取ったり、色ペンで教科書にチェックを入れるなど授業に向かう姿勢も変わり始めている。

  上級生による新入生オリエンテーションや生徒会でも自然と使われているようだ。

電子黒板とiPad 全授業で活用する

  教職員にも変化が見られた。端末を使う授業実践を行っていくという意識を高めること、操作に慣れることを目的に、教職員で「全ての授業で電子黒板・iPadを使う」ことを申し合わせて活用してきた。

  その結果、操作に慣れてくるに従い、授業で活用する手法がパターン化され、ICTの有用性を感じるとともに、新しい使用法や機能を研究、利活用が進んだ。

思考を深化する

  同校ではこれまでもグループ学習に取り組んでいたが、学び合いに辿りつかないこともしばしばであったという。そこで協働的な学習を目指すにあたり、まず個人の考えを持つことに重点を置いた。

  課題を提示し、それに対する答えを短文やキーワードのみで短時間で表現したところ、徐々に全員の意見が出揃うようになった。間違えた問題については、学習のポイントをまとめることで、苦手な生徒が積極的に取り組むきっかけにもなっている。

  グループ内では全員が発表を行う。ほぼ同じ答えや間違いに気づいた生徒も自分の作成したシートで発表を行う。作ったシートが全く同じことはないので、「同じです」との一言では終わらせない。シートでは短文で表しているため、補足説明が必要となり、他の生徒に言葉で説明する場面も多くなる。これらの積み重ねから、発表することへの抵抗感が薄れ、お互いの意見を聞こうとする態度も養われてきたという。

協働的な学習 進める上で効果的

  学習者用端末の効果として(1)いつでもすぐに使用できる、(2)シート作成などレイアウトが自由で簡単、(3)修正が簡単、が挙げられた。また、端末と電子黒板がつながることの効果として(1)全体発表の準備時間が短縮できる、(2)他の生徒の考えやまとめ方を参考にできる、(3)教師用端末で生徒端末の画面が確認できる、が挙げられ、これらのことは「協働的な学習」を進める上で効果的に感じたと発表した。

■授業を公開

  1学年国語科の授業「蓬莱の玉の枝〜『竹取物語』から」は仮名遣いに注意し、古語の意味を考えて音読する授業だ。

  学習者用端末の学習者用デジタル教科書やワークシートを活用し、グループ単位で作品内容を理解、様子が伝わるような音読の工夫について話し合った後、全体発表を行った。

*…*…*

  2学年理科「電流の性質」は、並列回路の各点を流れる電流を調べる授業。初めに電子黒板を活用し、学習の流れを説明した後に、端末の共有アプリから学習シートを取り出し、自分の予想を記入。グループで実験についての予想をたてた。

  実験中は各グループの記録係が結果を書きとる。実験後には結果を確認してレポートにまとめ、グループごとの考察を発表した。

*…*…*

  3学年社会科「国の政治のしくみ‐死刑制度について考える」は、初めに双方向授業支援システムのアンケート機能を使って、死刑制度の是非について、クラス全体の傾向を確認。その後、各自の最初の考えをシートにまとめさせた。

  グループ毎に、廃止の立場と存置の立場を決め、端末でネットなどを活用して調べながらグループの意見をまとめる。

  教員は授業支援システムの生徒画面モニタリング機能で、端末に書き込まれている生徒の様々な意見を確認。任意の生徒を指名し発言させながら生徒の考えを深めさせていった。

  さらに犯罪被害者の遺族の方の心情を記した資料などを提示、単純に是非を問うことができない問題であり、背景には基本的人権があることを示す。授業の最後にはアンケート機能を使って、再度死刑制度の是非について問い、授業の始めとの変化を確認した。

【2013年12月2日】

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